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10話

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一人で寝ていると考えてしまう。


私は、どこで選択を間違えたのだろうか。


私がポルコの元にいる間に。
両親達は新しい幸せな生活を手に入れていた。
まるで、私のことを覚えていないみたい、普通に暮らしていた。


ずっと彼らは私を救おうとしてくれていると信じていた。
でも、それは私の勝手な思い込みだった。


彼らにとって、私はその程度の存在だったというわけだ。
お金と、1年という歳月があれば、忘れて構わない存在。


(愛されて、なかったんだな、私)


乾いた笑いが出た。
涙があふれ出してきた。


ただ家族を助けたかった。
領民を助けるためにした借金で苦しむ家族の、笑顔が見たかった。


確かに、純粋な善意からではなかった。
心の中に、あなたのおかげで助かったと褒めて貰いたいという願望はあった。


でも、それが悪い事であったのだろうか。


これほどの仕打ちを、受けなければいけないことであったのだろうか。


(自分の性格が悪いってことは、分かっているよ)


このまま私が何もしなければ、一応彼らは幸福に過ごせる。


一人を犠牲にして、他の皆が幸福になるのだ。
きっとそれは正しい犠牲なのだろう。


正しい、犠牲なのだ。


(・・・・・・)


でも、私は許せなかった。
私を犠牲にしておきながら、のうのうと生きているあの両親が。
楽しそうにしている、あの家族が。


壊してやりたい。


人の人生を壊してくれたあの人達の人生を。
そしてそのことに罪悪感も覚えず笑うあの笑みを。


「怖い顔をしないでよ、フレデリカちゃん」


ポルコが私の唇に指を当てた。


私は正式にポルコの妻になる予定だ。
まだ婚姻できる年齢ではないから、しばらく先だけれど。


私は、この豚の女になる。


お金も、権力も、伝も、才能もない私だ。
一人でできることなど少ない。


どれほど頑張ったところで、家族に復讐などしてやれない。


だから、利用してやるのだ。
この男の事を。


ちょうど私を手に入れようと躍起になっていたのだ。
とても都合がいい。


そう。思った。
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