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31話

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 シロとの背中に鞍を使って移動した次の日。


 今度はシロにはゆっくり歩いてもらいながら、私は森の探検をしていた。シロは歩るいていたとしてもゴブリンと比べれば十分速い。だからこれだけで、今までいけなかった村から遠いところまで探索範囲を伸ばすことができるわけだ。


 それと、今回、私は弓矢をもってきている。万が一、野生のシルバーウルフに襲われた時の保険だ。鞍があるおかげで、私はある程度のスピードまでならばシロの背中に乗りながら矢を放つことができる。現実世界で言うならば、バイクに乗りながら銃を撃てるようなものだろうか。


 何の武器もない徒歩のゴブリンからすさまじい進歩だと思う。これならそうそう危険にさらされる事もないだろう。ある程度安心しながら森を移動できるというものだ。少し前までの命がけの生活がウソのようだ。いいね、どんどん良くなってきてる。諦めずに頑張ってよかったよ、本当に。


「グルルル!!」


「シロ?どうしたの?」


 シロとゆっくり探索しているとシロが急に動きを止めて、牙をむき出しにして威嚇し始めた。急なことに私はビックリする。温厚なシロには珍しい。急にどうしたのだろうかとシロの見ている方向を見る。するとそこには野生の数匹のシルバーウルフがいた。


 シルバーウルフたちはこちらを見つめてはいるが、様子を見ているだけで襲ってくる気配はない。どうやらシロのことを警戒しているようだ。シロはすでにそこらのシルバーウルフよりも体格が大きいから、怖いのだろう。私も一応シルバーウルフたちに向けていつでも打てるように弓矢を構えておく。


 しばらくそうしてお互い見つめ合っていると、野生のシルバーウルフたちは逃げていった。向こうから逃げてくれるようになったか。戦わずにすむのなら無駄に消耗しなくてすむからそれがいい。私は矢を降ろした。


「ありがとうね、シロ」


「♪」


 守ってくれたシロに感謝を伝えるように首元をなでると、シロは先ほどまでの怖い顔をやめて優しい顔に戻ってくれる。優しい顔に戻ったシロを見て、安心しながら私は、あることを思いついていた。


「・・・狼たちのテリトリー。今ならいけるかも」


 前に村長と話した、シルバーウルフたちがゴブリン達を襲うようになった原因について。以前は、狼たちが脅威だったから、彼らのテリトリーを調べるなんて到底不可能だった。


 でも、今はシロがいてくれる。先ほどの狼たちの反応からするに、テリトリーに入っても、襲われる可能性は低い。うん。そうとなれば早速行ってみるか。



 私はシロにシルバーウルフたちのテリトリーに行くようにお願いする。シロの移動速度のおかげで、狼たちのテリトリーにはすぐにたどり着いた。


 当然、油断はなしだ。

 
 弓矢はいつでも打てるように構えておく。いつ、どこから襲われても、気づけるように最新の注意を払う。


 私達はしばらくの間、狼たちのテリトリーを移動した。


「なに?これ?」


 肝心の狼たちに出会うこともなく、進んでいると途中から森の状況が変わっていた。たくさんの木々が根元からへし折られているのだ。とても大きな木が。割り箸のように。まるで何か巨大な生物が通ったかのように。


「グルルルルルル!!!」


「シロ!?今度はなに!?」


 シロはその木々がへし折られている所に近づくと、再び威嚇を始めた。私はシルバーウルフか!と周囲を警戒するが、なにもいない。シロの方を見てみると、彼は地面の匂いを嗅いでうなっているようだった。



 ・・・そして、ようやく気づいたことがある。地面には、おおきな、それは大きな足跡があった。私とシロが十分余裕をもって入れてしまうサイズの足跡。


 ・・・これ、ヤバいかもしれない。想像以上に。


 足跡から推測するに、この跡をつけた生物はめちゃくちゃ大きいはずだ。まだ、確定はできないけれど、狼たちがゴブリンを襲うようになった理由は、たぶんこいつだ。



 コイツが来たせいで、いつものエサが取れなくなって、ゴブリンを襲い始めたのだろう。


「・・・姿くらいは、見とかないと、まずいよね・・・」


 行きたくない。怖い。でも知らないのはもっと怖い。


 私はシロの首元をなでて、彼を落ち着かせる。そして進んでと、お願いした。
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