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20話
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戦いが始まってすこしたった。
シルバーウルフたちはどうやら洞窟を攻めあぐねているようだった。攻めてきた狼たちの総数は40頭くらい。我先にと狭い洞窟の入り口に殺到しているためひどく渋滞してしまっている。
自慢のスピードは出せないし、強力な噛みつきも柵が邪魔してとどかない。仲間同士が邪魔だと体をぶつけ合い本来の力を発揮できてもいない。群れとしての強みも今回は裏目にでているようだ。
ここからだとよく見ることはできないが、シルバーウルフたちは柵を壊せないかと齧り付いたり、隙間に顔をいれてなんとか内側にいるゴブリン達を食べようと必死にこころみている。
でもそんなことをしても地面と洞窟の壁で固定され、それ自体も太い木で作られている柵はびくともしない。逆に内側のゴブリン達はシルバーウルフたちが柵に苦戦している隙をついて、必死に毒槍で彼らを突くことができている。毒槍は狼たちを倒すことは出来ていないが、柵への攻撃をかなり邪魔できているようだ。作戦は完全に上手くはまっている。まだ洞窟は耐えられているのだ。簡単に隣村の悲劇は繰り返させはしない。
でも、まだ安心できるわけではない。柵の耐久力も無限ではないからだ。弱くとも何度もシルバーウルフの攻撃を受けていればもろくなっていき、いつかは壊れてしまうかもしれない。
私は洞窟に集まっている狼たちに向けて矢を放った。シルバーウルフたちの意識はすべて洞窟の柵に向いており後ろは全く警戒していない。自分たちが食べる側でやられるなどどは思っていないのだろう。
油断している彼らに矢を当てるのは難しくなかった。一匹、また一匹と矢が狼たちの背中に命中していく。矢を当てられた狼は驚き、大慌てで洞窟からはなれ広場の所をグルグルと回るがだんだんと遅くなっていきバタリと倒れた。
・・・まだ死んではいないと思う。でも今は戦えなくするだけで十分だ。いちいちトドメを刺してやれる余裕もないため放置する。
矢を全部使ってしまう覚悟で放っているとみるみる活発に動いている狼たちの数が減ってきたのが分かる。広場でうずくまり動かないもの。未だに柵へ攻撃を仕掛けているもの。私の弓矢の攻撃に気づき、こちらを凝視しているもの。この場から逃げ出したもの。襲撃された当初にはあった一つの生き物のような連携はすでになくなっている。
もう群れとしての機能は崩壊してしまったみたい。これでシルバーウルフの脅威度はガクンと低下したわけだ。
弓矢の残りは多くはないけれど、柵はまだまだ大丈夫そうだ。今、柵を攻撃している奴らもそのうち諦めるだろうし、残っている奴らが再び集まったとしてもたかが知れている。
これならいける、このまま続ければ私達は勝てるんだ。私が確信した、その時だった。
ワオーンという大きな雄叫びが森に響いた。
森が震えている、そんなふうに錯覚するくらい大きな雄叫びだった。シルバーウルフの雄叫びではある。でも私が知っているよりも何十倍も大きい声だ。
突然の雄叫びに村にいた物すべてが凍り付いた。ゴブリンも狼もどちらも一瞬動きをとめる。増援?だとしたらマズイと思い周囲を警戒する。すると一匹、新たにシルバーウルフがこちらに近づいてきているのがわかった。
ズシンズシンと足音を立てながらゆっくりと近づいてきている。・・・近づいてくるとその大きさがわかった。形こそ他のシルバーウルフと同じだが大きさは三倍はあるだろうか。顔には大きな傷があり、何かの戦闘でなのか右目は潰れている。
でも明らかに他の奴とは違うと、わかった。たぶんあれはボスだ。今、村を攻めているオオカミどものボス。そいつが直々にお出まししたというわけだ。
数秒前までゴブリン側に優性だった戦況がひっくりかえされる。勝ったという確信が揺らいでいき、手が震えていくるのがわかった。本当にこの世界は思い通りにはいかないらしい。
シルバーウルフたちはどうやら洞窟を攻めあぐねているようだった。攻めてきた狼たちの総数は40頭くらい。我先にと狭い洞窟の入り口に殺到しているためひどく渋滞してしまっている。
自慢のスピードは出せないし、強力な噛みつきも柵が邪魔してとどかない。仲間同士が邪魔だと体をぶつけ合い本来の力を発揮できてもいない。群れとしての強みも今回は裏目にでているようだ。
ここからだとよく見ることはできないが、シルバーウルフたちは柵を壊せないかと齧り付いたり、隙間に顔をいれてなんとか内側にいるゴブリン達を食べようと必死にこころみている。
でもそんなことをしても地面と洞窟の壁で固定され、それ自体も太い木で作られている柵はびくともしない。逆に内側のゴブリン達はシルバーウルフたちが柵に苦戦している隙をついて、必死に毒槍で彼らを突くことができている。毒槍は狼たちを倒すことは出来ていないが、柵への攻撃をかなり邪魔できているようだ。作戦は完全に上手くはまっている。まだ洞窟は耐えられているのだ。簡単に隣村の悲劇は繰り返させはしない。
でも、まだ安心できるわけではない。柵の耐久力も無限ではないからだ。弱くとも何度もシルバーウルフの攻撃を受けていればもろくなっていき、いつかは壊れてしまうかもしれない。
私は洞窟に集まっている狼たちに向けて矢を放った。シルバーウルフたちの意識はすべて洞窟の柵に向いており後ろは全く警戒していない。自分たちが食べる側でやられるなどどは思っていないのだろう。
油断している彼らに矢を当てるのは難しくなかった。一匹、また一匹と矢が狼たちの背中に命中していく。矢を当てられた狼は驚き、大慌てで洞窟からはなれ広場の所をグルグルと回るがだんだんと遅くなっていきバタリと倒れた。
・・・まだ死んではいないと思う。でも今は戦えなくするだけで十分だ。いちいちトドメを刺してやれる余裕もないため放置する。
矢を全部使ってしまう覚悟で放っているとみるみる活発に動いている狼たちの数が減ってきたのが分かる。広場でうずくまり動かないもの。未だに柵へ攻撃を仕掛けているもの。私の弓矢の攻撃に気づき、こちらを凝視しているもの。この場から逃げ出したもの。襲撃された当初にはあった一つの生き物のような連携はすでになくなっている。
もう群れとしての機能は崩壊してしまったみたい。これでシルバーウルフの脅威度はガクンと低下したわけだ。
弓矢の残りは多くはないけれど、柵はまだまだ大丈夫そうだ。今、柵を攻撃している奴らもそのうち諦めるだろうし、残っている奴らが再び集まったとしてもたかが知れている。
これならいける、このまま続ければ私達は勝てるんだ。私が確信した、その時だった。
ワオーンという大きな雄叫びが森に響いた。
森が震えている、そんなふうに錯覚するくらい大きな雄叫びだった。シルバーウルフの雄叫びではある。でも私が知っているよりも何十倍も大きい声だ。
突然の雄叫びに村にいた物すべてが凍り付いた。ゴブリンも狼もどちらも一瞬動きをとめる。増援?だとしたらマズイと思い周囲を警戒する。すると一匹、新たにシルバーウルフがこちらに近づいてきているのがわかった。
ズシンズシンと足音を立てながらゆっくりと近づいてきている。・・・近づいてくるとその大きさがわかった。形こそ他のシルバーウルフと同じだが大きさは三倍はあるだろうか。顔には大きな傷があり、何かの戦闘でなのか右目は潰れている。
でも明らかに他の奴とは違うと、わかった。たぶんあれはボスだ。今、村を攻めているオオカミどものボス。そいつが直々にお出まししたというわけだ。
数秒前までゴブリン側に優性だった戦況がひっくりかえされる。勝ったという確信が揺らいでいき、手が震えていくるのがわかった。本当にこの世界は思い通りにはいかないらしい。
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