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「これは、ひどいね」
思わず、言葉がもれてしまう。
私達は現在、シルバーウルフに襲われてしまった隣村に来ている。生存者だったり使える物が残っていないかどうかを確認するためだった。
村からは物音はしていない。何度か石を投げても反応は無し。幸い、シルバーウルフはすでにいないようだ。こちらは5人しかいない。一匹でもいたらひとたまりもなかっただろう。
私達は周囲を警戒しながらゆっくりと村の中に入る。隣村は私達の村と同じような構造をしていた。洞窟をねぐらとして、その洞窟の前方部分を半円を作るように柵で囲って安全な広場をつくっている。
広場には血とゴブリン達の、特に男の遺体が転がっていた。遺体には食べられた跡があり、手には木の棒が握られて目を見開いたまま事切れていた。
・・・またシルバーウルフが帰ってくるかもしれないから、埋葬してやる時間はない。そっと手でまぶたを閉じさせた。これしかできなくてごめんね。
またよく見ると広場にはシルバーウルフの遺体と無数の足跡ものこっていた。特にシルバーウルフの足跡はそのまま洞窟の方に続いていた。
「・・・こっちです」
隣村出身のゴブリンがつばをゴクリと飲み干しながら、ゆっくりと洞窟のほうに案内をしてくれる。
洞窟の中をこっそりと見る。誰もいないみたいだ。洞窟の中は広場よりも、もっとひどかった。壁一面が血で汚れており、遺体とすら呼べない部位があちらことらに飛び散っている。
ちいさな手も落ちている。手首から上だけ。たぶん赤ちゃんのやつ。洞窟の中には戦うことも、逃げることもできないゴブリン達が逃げ込んでいたらしい。彼らの姿はどこにもない。そこから先は想像したくもなかった。
「・・・ごめんね」
なに対しての謝罪だろうか。助けられなかっことか?それとも他のなにかだろうか?私自身もわからなかった。
この世界は弱肉強食。弱い奴は問答無用に食い殺されてしまう。確かにそれが自然の摂理なのか知れないけれど。ああそうですねと納得することなどできなかった。
結局、私達は幾つかの使えそうな石器だけ持ち帰った。村に帰るとケガをしたゴブリン達が駆け寄ってきたが、私達の表情と誰も連れていない状況をみて、うつむき座り込んでしまった。
村にはどんよりと暗い雰囲気が漂っている。それもそうだ。こんな状況を笑えるやつなんていない。
洞窟に戻るとそこには数匹のゴブリンが円を作るように座り込み話し合っていた。こちらを振り向き私達が帰って来たことに気づく。
「・・・ダメだったか」
「はい、生き残りは誰も・・・」
この村のリーダー役のゴブリンが悲しい顔をする。もうすべて理解したようだ。この村には隣村に血縁がいたゴブリンも多い。リーダーもその1人だ。彼もいますぐ家族を探しに行きたいだろうに村のためにいろいろ頑張ってくれている。私もくよくよしている場合ではない。頬を叩いて落ち込みそうになる気持ちをリセットした。
思わず、言葉がもれてしまう。
私達は現在、シルバーウルフに襲われてしまった隣村に来ている。生存者だったり使える物が残っていないかどうかを確認するためだった。
村からは物音はしていない。何度か石を投げても反応は無し。幸い、シルバーウルフはすでにいないようだ。こちらは5人しかいない。一匹でもいたらひとたまりもなかっただろう。
私達は周囲を警戒しながらゆっくりと村の中に入る。隣村は私達の村と同じような構造をしていた。洞窟をねぐらとして、その洞窟の前方部分を半円を作るように柵で囲って安全な広場をつくっている。
広場には血とゴブリン達の、特に男の遺体が転がっていた。遺体には食べられた跡があり、手には木の棒が握られて目を見開いたまま事切れていた。
・・・またシルバーウルフが帰ってくるかもしれないから、埋葬してやる時間はない。そっと手でまぶたを閉じさせた。これしかできなくてごめんね。
またよく見ると広場にはシルバーウルフの遺体と無数の足跡ものこっていた。特にシルバーウルフの足跡はそのまま洞窟の方に続いていた。
「・・・こっちです」
隣村出身のゴブリンがつばをゴクリと飲み干しながら、ゆっくりと洞窟のほうに案内をしてくれる。
洞窟の中をこっそりと見る。誰もいないみたいだ。洞窟の中は広場よりも、もっとひどかった。壁一面が血で汚れており、遺体とすら呼べない部位があちらことらに飛び散っている。
ちいさな手も落ちている。手首から上だけ。たぶん赤ちゃんのやつ。洞窟の中には戦うことも、逃げることもできないゴブリン達が逃げ込んでいたらしい。彼らの姿はどこにもない。そこから先は想像したくもなかった。
「・・・ごめんね」
なに対しての謝罪だろうか。助けられなかっことか?それとも他のなにかだろうか?私自身もわからなかった。
この世界は弱肉強食。弱い奴は問答無用に食い殺されてしまう。確かにそれが自然の摂理なのか知れないけれど。ああそうですねと納得することなどできなかった。
結局、私達は幾つかの使えそうな石器だけ持ち帰った。村に帰るとケガをしたゴブリン達が駆け寄ってきたが、私達の表情と誰も連れていない状況をみて、うつむき座り込んでしまった。
村にはどんよりと暗い雰囲気が漂っている。それもそうだ。こんな状況を笑えるやつなんていない。
洞窟に戻るとそこには数匹のゴブリンが円を作るように座り込み話し合っていた。こちらを振り向き私達が帰って来たことに気づく。
「・・・ダメだったか」
「はい、生き残りは誰も・・・」
この村のリーダー役のゴブリンが悲しい顔をする。もうすべて理解したようだ。この村には隣村に血縁がいたゴブリンも多い。リーダーもその1人だ。彼もいますぐ家族を探しに行きたいだろうに村のためにいろいろ頑張ってくれている。私もくよくよしている場合ではない。頬を叩いて落ち込みそうになる気持ちをリセットした。
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