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5話

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 食料をとってくる。前世では気軽な行為だったけど今は違った。ここでは死というのはすごく近所に住んでいて、気づいた時にはやあ、と言いながら家の玄関を開けている。だからいつでも辺りに注意しながら行動しないといけない。


 そしてやっぱり、こんな時も死は訊ねてくるみたいで、


 「まずい!!来てるぞ、走れ走れ!!」


 木の実を取って、村に帰ろうとしたその時だった。一匹のゴブリンが森の方を指さしながら、叫ぶ。そのゴブリンが指さす森の奥の草むらがガサガサと揺れている。そのガサガサは高速でこちらに近づいてきていて・・・


 「逃げて!!」


 誰かが叫んだのを合図に私達は一斉に村にむかって走り出した。次の瞬間、草むらから狼が飛び出してくる。シルバーウルフ。銀色の毛並みをした大きな狼。私達の天敵だ。


「ギャ!!」


 視界の端で短い悲鳴が鳴った。シルバーウルフが私の隣を走っていたゴブリンの首にかぶりついたのだ。勢いと体重でその子が押し倒される。首からはたくさん血がでている。


 「はなせ!クソ!やだ、まだ、死にたく」


 たぶん、狼に襲われた彼はもう助からない。シルバーウルフは強くて、私達が複数いても追い払うのがやっとだ。それにケガの治療もできないから、頑張って助けてもあのケガではもう救えない。


 だから目をそらして村に走った。後ろから響く悲鳴を無視して走った。これで仲間が犠牲になるのを見るのは3回目だ。


 はあ、はあ、はあ、はあ。


 なんとか無事に村に着いた。心臓がバクンバクンと音を鳴らす。


 仲間を失った悲しみと、恐怖。そして運が悪ければ犠牲になるのは私のほうだったから、そうでなくて良かったという安堵感。


 もう情緒なんてめちゃくちゃだ。


 こんな生活をいつまですればいい。もうやだよ。誰か、助けて。前世の生活は、どれだけ快適だったのか。お金持ちの生活を見て、私もこんな生活してみたいなと少し思ったこともある。


 だが今思えば風も吹き込んでこない部屋にさまざま家具達にかこまれて、お店で簡単に食料が買える。なんの危険もなかったあの生活は最高に幸せで快適だったのだ。無事帰れたらもう文句なんていいません。もっと感謝しますから、だから、帰して。


 しばらくそこで泣いた。泣いたらだいぶ気分が落ち着いてきて、思考が戻ってくる。さっきから文句をたくさん言っている。でも、文句を言った所で状況が良くなる訳ではない。


 でも、どうする?どうしたら、この状況がよくなるのだろうか?私たちはすごく弱い。状況を覆せるほど強くなることなど容易にできるわけじゃない。


 頭の中で思考をグルグルと巡らせていると、あ!と解決策が急に浮かんできた。そうだ、つくろう、道具を。前世で私達の生活を支えてくれていた道具達を、私の手で。


 人間だって一からつくっていったんだ。こっちの世界でも、できないという訳がない。道具をつくって、この最悪な状況をすこしでも良くしていくのだ。そうだ、そうしよう。誰かにではなく、自分でこの生活を変えるのだ。


 よし、そうとなればさっそくやってみよう。そしてつくるのは、そうだね、うん、あれにしてみよう。さっそく私は道具を作る準備に取りかかった。明日を今日よりもっといい日にするために。
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