え!?ゴ、ゴブリンですか、転生先!?最弱種族ゴブリンでも道具と知識を使えば格上の相手も殺せるんです。

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)

文字の大きさ
上 下
4 / 45

4話

しおりを挟む
 この世界に来てから一ヶ月近くの月日がたった。一ヶ月といっても日が昇って落ちていく回数を数えて30回目というだけなのだが、この際細かいことはどうでもいいだろう。


 私はいま、同じゴブリン達が集まり形成している村に身を寄せている。


 転生した時はどうなるかと思ったが、幸いすぐ近くにゴブリンの村を見つけることができて無事に生き延びることができている。そして村の一員として溶け込んでいるのだ。この適応力は、ほめてほしい。


 最初にゴブリン達と接触する時は非常に緊張した。私は見た目こそゴブリンではあるものの、心はれっきとした人間なのだ。それに言葉が通じるかどうかもわからないため、近づいた途端に襲われる可能性もあったから、ドキドキしながら村に近づいた。


 でも、そんな心配など無意味だった。村のゴブリン達はこころよく私を受け入れてくれたのだ。そして言葉も問題なかった。普通にしゃべれば通じるし、向こうの言葉も聞き取れるのだ。さすがに文字はなくて通じなかったけれど。


 ちなみにこの村の人口、いやゴブリン口と言った方が良いのだろうか?面倒くさいので人口とするが、は20人くらいの小さな村だ。数を数える時も人よりも匹の方が正確かもだけど、面倒くさいので人にする。


 村といっても人間の村のように家や田畑がある訳ではなく、天然の洞窟をそのまま住処にしている。そしてその洞窟の前方を簡易な柵で囲って、小さな安地を作っている程度だ。


 当然、明かりのようなものはない。それどころか文明も発展していないらしく、寝床すらそこらの草を敷いたものという有様だ。洞窟の入り口もそのままだから、夜になると結構寒くて困っている。他のゴブリンと抱き合って寝ているから、なんとか凍死はしなくてすみそうだけど、まあつらいよね。


 服装もあまり私と代わり映えはしない。草を編んだものであり、現代の快適な暮らしを知っている私からしてみれば非常に不便で不快だ。


 起きているときも寝ているときもいつも体が休まった気がしないのだ。あんなにもありふれていた道具達。ベッドに部屋に衣服に明かり。彼らはなんて私の生活を豊かにしていてくれたのだろうか。なくなって、やっとありがたみを理解した。



 と、文句ばかりたれてしまったがこの村に来たこと自体は大正解だった。


 同僚のゴブリン達と一緒に生活をすることで食べ物の手に入れ方や、食べてはいけないもの、危険な獣など生きるために必要な知識をどんどんと仕入れることができている。


 特に毒のある食べ物や、ここら一帯に住んでいるシルバーウルフという狼のような獣はまずい。食べれるかどうかはまだ私では見分けられないし、シルバーウルフにも敵わないから彼らの知識と人手がなければ私は数日ももたないだろう。


 生活に不満はあるが、それは生きていられるのが前提での話だ。ここでは明日の保障がない。快適以前に命のことを考えなければいけないのだ。

 
 だからこの村は、とても大切だ。お互いが生き残るために。


 「ねえ?そっちはどう?」


 「たくさんだよ。急いで持って帰ろう」


 今は、同僚のゴブリン達とともに食料を取りにいっている最中だ。村の一員ならば村のために働け、それが村のスローガン。



 大変な労働だけれども、働かないとご飯は分けてもらえない。それにケガでもして動けなくなったらそのまま切り捨てられてしまうから手伝わないなんていう選択肢はないわけだ。


 採るものは草の根や昆虫、芋虫とか。どうやらゴブリンは雑食のようでなんでも食べることができるようだった。今回はたくさん熟した果実が落ちているのが見つかった。よかった。


 あんまりおいしくはないのだが、食べられるだけマシというやつだ。


 それに草の根や昆虫はもっとひどい味がする。いまは慣れてきたけれど、最初は口に含んだ瞬間吐いてしまったものだ。せめて火くらいは通してほしい。


 カレーライス、牛丼、ハンバーガー。たべたいな、たべたいな。


 母の料理も恋しい。もう、食べることはできないかもだけど。


 そんなことをしているうちに太陽が沈んできた。暗くなると危険な獣もでてくるので、帰るとしよう。両手一杯に木の実を抱えて、えっちらほっちら帰路についた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

処理中です...