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この世界に来てから一ヶ月近くの月日がたった。一ヶ月といっても日が昇って落ちていく回数を数えて30回目というだけなのだが、この際細かいことはどうでもいいだろう。
私はいま、同じゴブリン達が集まり形成している村に身を寄せている。
転生した時はどうなるかと思ったが、幸いすぐ近くにゴブリンの村を見つけることができて無事に生き延びることができている。そして村の一員として溶け込んでいるのだ。この適応力は、ほめてほしい。
最初にゴブリン達と接触する時は非常に緊張した。私は見た目こそゴブリンではあるものの、心はれっきとした人間なのだ。それに言葉が通じるかどうかもわからないため、近づいた途端に襲われる可能性もあったから、ドキドキしながら村に近づいた。
でも、そんな心配など無意味だった。村のゴブリン達はこころよく私を受け入れてくれたのだ。そして言葉も問題なかった。普通にしゃべれば通じるし、向こうの言葉も聞き取れるのだ。さすがに文字はなくて通じなかったけれど。
ちなみにこの村の人口、いやゴブリン口と言った方が良いのだろうか?面倒くさいので人口とするが、は20人くらいの小さな村だ。数を数える時も人よりも匹の方が正確かもだけど、面倒くさいので人にする。
村といっても人間の村のように家や田畑がある訳ではなく、天然の洞窟をそのまま住処にしている。そしてその洞窟の前方を簡易な柵で囲って、小さな安地を作っている程度だ。
当然、明かりのようなものはない。それどころか文明も発展していないらしく、寝床すらそこらの草を敷いたものという有様だ。洞窟の入り口もそのままだから、夜になると結構寒くて困っている。他のゴブリンと抱き合って寝ているから、なんとか凍死はしなくてすみそうだけど、まあつらいよね。
服装もあまり私と代わり映えはしない。草を編んだものであり、現代の快適な暮らしを知っている私からしてみれば非常に不便で不快だ。
起きているときも寝ているときもいつも体が休まった気がしないのだ。あんなにもありふれていた道具達。ベッドに部屋に衣服に明かり。彼らはなんて私の生活を豊かにしていてくれたのだろうか。なくなって、やっとありがたみを理解した。
と、文句ばかりたれてしまったがこの村に来たこと自体は大正解だった。
同僚のゴブリン達と一緒に生活をすることで食べ物の手に入れ方や、食べてはいけないもの、危険な獣など生きるために必要な知識をどんどんと仕入れることができている。
特に毒のある食べ物や、ここら一帯に住んでいるシルバーウルフという狼のような獣はまずい。食べれるかどうかはまだ私では見分けられないし、シルバーウルフにも敵わないから彼らの知識と人手がなければ私は数日ももたないだろう。
生活に不満はあるが、それは生きていられるのが前提での話だ。ここでは明日の保障がない。快適以前に命のことを考えなければいけないのだ。
だからこの村は、とても大切だ。お互いが生き残るために。
「ねえ?そっちはどう?」
「たくさんだよ。急いで持って帰ろう」
今は、同僚のゴブリン達とともに食料を取りにいっている最中だ。村の一員ならば村のために働け、それが村のスローガン。
大変な労働だけれども、働かないとご飯は分けてもらえない。それにケガでもして動けなくなったらそのまま切り捨てられてしまうから手伝わないなんていう選択肢はないわけだ。
採るものは草の根や昆虫、芋虫とか。どうやらゴブリンは雑食のようでなんでも食べることができるようだった。今回はたくさん熟した果実が落ちているのが見つかった。よかった。
あんまりおいしくはないのだが、食べられるだけマシというやつだ。
それに草の根や昆虫はもっとひどい味がする。いまは慣れてきたけれど、最初は口に含んだ瞬間吐いてしまったものだ。せめて火くらいは通してほしい。
カレーライス、牛丼、ハンバーガー。たべたいな、たべたいな。
母の料理も恋しい。もう、食べることはできないかもだけど。
そんなことをしているうちに太陽が沈んできた。暗くなると危険な獣もでてくるので、帰るとしよう。両手一杯に木の実を抱えて、えっちらほっちら帰路についた。
私はいま、同じゴブリン達が集まり形成している村に身を寄せている。
転生した時はどうなるかと思ったが、幸いすぐ近くにゴブリンの村を見つけることができて無事に生き延びることができている。そして村の一員として溶け込んでいるのだ。この適応力は、ほめてほしい。
最初にゴブリン達と接触する時は非常に緊張した。私は見た目こそゴブリンではあるものの、心はれっきとした人間なのだ。それに言葉が通じるかどうかもわからないため、近づいた途端に襲われる可能性もあったから、ドキドキしながら村に近づいた。
でも、そんな心配など無意味だった。村のゴブリン達はこころよく私を受け入れてくれたのだ。そして言葉も問題なかった。普通にしゃべれば通じるし、向こうの言葉も聞き取れるのだ。さすがに文字はなくて通じなかったけれど。
ちなみにこの村の人口、いやゴブリン口と言った方が良いのだろうか?面倒くさいので人口とするが、は20人くらいの小さな村だ。数を数える時も人よりも匹の方が正確かもだけど、面倒くさいので人にする。
村といっても人間の村のように家や田畑がある訳ではなく、天然の洞窟をそのまま住処にしている。そしてその洞窟の前方を簡易な柵で囲って、小さな安地を作っている程度だ。
当然、明かりのようなものはない。それどころか文明も発展していないらしく、寝床すらそこらの草を敷いたものという有様だ。洞窟の入り口もそのままだから、夜になると結構寒くて困っている。他のゴブリンと抱き合って寝ているから、なんとか凍死はしなくてすみそうだけど、まあつらいよね。
服装もあまり私と代わり映えはしない。草を編んだものであり、現代の快適な暮らしを知っている私からしてみれば非常に不便で不快だ。
起きているときも寝ているときもいつも体が休まった気がしないのだ。あんなにもありふれていた道具達。ベッドに部屋に衣服に明かり。彼らはなんて私の生活を豊かにしていてくれたのだろうか。なくなって、やっとありがたみを理解した。
と、文句ばかりたれてしまったがこの村に来たこと自体は大正解だった。
同僚のゴブリン達と一緒に生活をすることで食べ物の手に入れ方や、食べてはいけないもの、危険な獣など生きるために必要な知識をどんどんと仕入れることができている。
特に毒のある食べ物や、ここら一帯に住んでいるシルバーウルフという狼のような獣はまずい。食べれるかどうかはまだ私では見分けられないし、シルバーウルフにも敵わないから彼らの知識と人手がなければ私は数日ももたないだろう。
生活に不満はあるが、それは生きていられるのが前提での話だ。ここでは明日の保障がない。快適以前に命のことを考えなければいけないのだ。
だからこの村は、とても大切だ。お互いが生き残るために。
「ねえ?そっちはどう?」
「たくさんだよ。急いで持って帰ろう」
今は、同僚のゴブリン達とともに食料を取りにいっている最中だ。村の一員ならば村のために働け、それが村のスローガン。
大変な労働だけれども、働かないとご飯は分けてもらえない。それにケガでもして動けなくなったらそのまま切り捨てられてしまうから手伝わないなんていう選択肢はないわけだ。
採るものは草の根や昆虫、芋虫とか。どうやらゴブリンは雑食のようでなんでも食べることができるようだった。今回はたくさん熟した果実が落ちているのが見つかった。よかった。
あんまりおいしくはないのだが、食べられるだけマシというやつだ。
それに草の根や昆虫はもっとひどい味がする。いまは慣れてきたけれど、最初は口に含んだ瞬間吐いてしまったものだ。せめて火くらいは通してほしい。
カレーライス、牛丼、ハンバーガー。たべたいな、たべたいな。
母の料理も恋しい。もう、食べることはできないかもだけど。
そんなことをしているうちに太陽が沈んできた。暗くなると危険な獣もでてくるので、帰るとしよう。両手一杯に木の実を抱えて、えっちらほっちら帰路についた。
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