お嬢様の挑戦

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こんなのあり得ない

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「お嬢、旦那様からの結婚相手が決まったって言ってたぞ。ほれ、見合いの写真」
「見合い…今時面倒くさい…ごほん、そんなことをするなんて嫌です。まぁ、取り敢えず写真を見てあげても良いですけど」

彩菜が見合い写真を開くと、顔色が変わる。真っ青になったのをみて、涼が話しかけた。

「お嬢、どうかしたか?顔色悪いぞ」
「い、いや~~~~~~!!写真みました!?ハゲのポッチャリボディのオールドマンですよ!この男性が私の結婚相手…。嫌ですぜっっったいに嫌!!この結婚、絶対に破棄して見せます!」

彩菜は意気込むと写真は丁寧に置き、急いで父親の元に向かった。


♦︎


お見合い写真事件以来数ヶ月経つが彩菜は権力を駆使して男子校に入学した。なぜそんなことをしたか言うと、父親と男子校で見つからずに一年過ごす事が出来たら結婚は免れると言う約束だった。その約束を果たす為ズルに近いが有名な科学者に頼んで性転換薬を作ってもらった。つまり、今は男なのではある。

「ふん、一年なんて楽勝ですっ、ちょちょいのちょいです」
「お嬢、そんなこと言ってると意外な事でバレたりするかもだぞ」
「涼、貴方はお父様の味方なのデス!?」
「いや、まぁ、あの写真はあんまりだよな。一応お嬢様の味方だぜ」
「でしたら、ズルをしようが手段を選びませんわ。貴方もそのつもりでいなさい」
「はいはい、了解しました」

涼は執事見習いで同じ年。幼馴染でもあり、親友でもある。そんな涼もわざわざ協力する為に学校を変わってついてきてくれた。しかし、流石に同部屋にはなれなかった。

「ふぅ、同部屋の方優しい人だと良いですけど。すーはー」

自室になるドアの前に立ち、深呼吸をすると、ノックをすると、中から声がした。

「はい、開いてるよ」
「はいっ、お邪魔しますっ」

ドアを開けると高身長の茶髪で優しげな男子生徒が立っていた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「ご、ごめんなさい。筋トレしてたら遅くなっちゃって」
「え?」

(何言ってるの私!?いきなり変な人認定されちゃいます。もっと、しっかりしないと)

「い、いや、筋肉ムキムキのドラマをみて遅くなっちゃった、ごめんなさい」
「ぷっ、面白い人だね。一緒に生活するの楽しい日々になりそう」
「あははは、そうです?よろしくお願いします」
「うん、俺の事は浩一って呼んで」
「浩一、よろしくです。えっと、僕は彩と言います」
「彩だね、よろしく」

彩音は握手をすると浩一に部屋の中を案内された。

「ここの右側が俺の部屋で、左側が彩の部屋だよ。俺は三年のサッカー部所属なんだ」
「サッカー!かっこいいです。僕は今年転校してきた三年生で、帰宅部です。よろしくお願いします」
「帰宅部なんだね。今年は受験だし、今から部活に入るのは難しいね」
「そうですね。勉強に勤しみます」
「でもなんでこの時期に転校してきたの?珍しいね」
「えっと、あの、男子校に憧れてまして、親を説得してこの度転校出来るようになりました」
「そっか、じゃあ、男子校を楽しんでね」
「はい、有難うございます」

(浩一めっちゃ良い人です。これなら、一年間楽勝です)

彩菜は不敵に笑いながらガッツポーズを作った。

「そろそろ、夕食になるし食堂に行こうか」
「はい、友人も一緒に行って良いですか?」
「勿論良いよ」

二人は部屋を出るとある部屋に向かう。涼の部屋にたどり着くと、ノックをした。

「涼、きましたよ。ご飯食べましょう」

彩菜が声をかけると、ドアが開きあくびをしながら涼が出てきた。

「おっす、お嬢。お!部屋のやつと仲良くなったのか?」
「浩一君です。中々良い方なのですよ」
「ほ~、初めまして、涼と申します。お嬢の友人です」
「初めまして、浩一です。あの、お嬢って言うのは?」
「あぁ、そいつ女っぽいでしょ。だからお嬢って呼んでます」
「そいつ!?」
「ごめんってお嬢、と言うわけで同室でご迷惑をかけるけど、よろしく」

涼の言葉に浩一が笑いながら頷いた。食堂で三人で行くと、彩菜は大盛りでラーメン、サラダ、シャーハン、餃子、チャーシューご飯、天津飯と頼んでいく。唖然としてる浩一に涼はゲラゲラ笑っていた。

「お嬢食いすぎだろ。ぶっくくっ!どんだけ食うんだよ」
「え~、まだ手加減してますよ」
「ま~、確かに。お嬢めっちゃ食うもんな」
「そうなんだ。彩って、運動している俺より食べるんだね」

浩一に言われてやや恥ずかしくなるが、そこはスルーして、ご飯を受け取っていく。

「よいしょっ。ご飯いっぱいです」
「おぉ、お嬢が喜んでる喜んでる」
「彩、お腹いっぱい食べてね」

二人に声をかけられて椅子に座ると手を合わせて食べ始めた。お嬢様なだけあってご飯の食べ方は上品である。
 
「彩って、綺麗にご飯食べるんだね」
「まぁ、お嬢だしな」
「何かやってるの?」
「今話しかけても無駄だそ浩一。お嬢は食事中は無心になって食うから」
「そんなになんだ」
「そうそう、で浩一は部活してんの?」
「うん、俺はサッカー部の主将をしてるんだ」
「すげ~、ここの学校サッカー部強豪だよな?」
「うん、結構有名みたいだね。いつも、遅くまでしてたらいつの間にか主将になっていたよ」
「才能だよな」
「いやいや、そんな事ないよ」
「すげ~よ。俺は帰宅部だしな。まぁ入る気無いけど」
「そうなの?受験で忙しいから?」
「いや、単に面倒くさいだけ」
「そうなんだ。涼は色々出来そだけど」
「器用貧乏だからな。裁縫もできるぞ」
「裁縫!?」
「編み物もお手のものだ」
「凄っ」

涼と浩一が盛り上がっていると、彩菜が手を合わせて呟く。

「ご馳走様でした」
「彩、もう食べたの?」
「うん、美味しかったですっ」
「あははは、うちのお嬢はいつもこんな感じだぜ」
「お腹いっぱいなのです」

浩一はただただ空になった食事をみて驚いていた。

「俺たちも食おうぜ」
「そうだね。彩はどうする?」
「僕は先に部屋に戻ってます」
「そっか、気をつけて帰ってね」
「はい」

彩菜は部屋へ向かうと、ポケットに入れていた薬を確認する。科学者が作った薬を欠かすと男性に変身が甘くなってしまう。その為薬は欠かせない。

「部屋でゆっくり飲みたいです」

部屋に着くと、薬を飲んでお水を飲み、一息ついた。これから一年間男性として過ごす。無茶でも、やるしか無いのだ。そう気合を入れてベッドに寝転がりうとうとしてした。

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