泣き虫悪女さんの事情

轟ルート2

仕事が終わり給料を貰うと轟は嬉しそうにしていた。
私も嬉しくなり轟に話しかけようとすると彼女はあっという間にその場から離れていってしまった。
「仕方ないのです。今日は用事があるんだから」
自分に言い聞かせてそう言うと、帰る準備をする。轟の事を思いながら家に帰る。
「亜妃！お帰りなさい」
「姉様、ただいまですわ」
「今日も働いていたの？偉いわね。私も働きたいのに皆が許してくれないのよ」
「姉様は働く必要はないのでは無いですか？」
「でも、貴女だけ、働いているなんて。私だって働きたいのに。ねぇ亜妃、貴女も一緒に頼んでくれない？」
「いえ、私はやめておきます。疲れたので部屋に戻ります」
姉様は悪気がないことも知っている。だけど、私だけお小遣いがなくて働く理由。それは私が側女の子供だからだった。
御母様の本当の子ではない。本来なら認知してもらえないが、御母様はそこまで酷い方では無かった。だけど、私だけ屋敷にいるのは、居場所がない感じがしたのだ。
「姉様はなんでも持ってるくせに、私の場所に来ないで欲しい」
幼稚だと思っていても言葉が出てしまう。今働いてる所言えば姉様は自分も働きたいと言うのだろう。悪意もなく天真爛漫な姉様はきっと轟とも仲良くなる。そしたら、私は居場所がなくなってしまう。
ゾッとする感覚に襲われて私は自分の体を抱きしめた。
「どうか、姉様も学校の関係者もバイト先に来ませんよに」
祈る様に呟くと私はお風呂に入るのも忘れてベッドで眠ってしまった。