泣き虫悪女さんの事情

泣き虫悪女さんの裏側2

学校が終わり、私の至福の時間がやってくる。
メイド喫茶で働いているが、ここの店長もバイト仲間、そして客層もすごく優しい。特に仲のいいバイト仲間が轟だった。髪も長くキューティクルが光っている。
凛とした姿の少し低い声が可愛らしかった。

「轟は今からバイトです？」
「笹枝、今からよ」
「今日も頑張りましょう」
「えぇ、あれ、笹枝は今日何かあったの？」

轟の突然の言葉に戸惑うと私より背の高い轟が屈んで目のをさすってくる。

「少し腫れてるわ。泣いたの？」
「ち、違います！」
「笹枝、そんなに意地を貼らなくていいのよ？話なら聞くし、私じゃそんなに不甲斐ない？」
「違うのです。そうじゃなくて、ただ、目が痒くて花粉かなって思って」
「あれれ、今はもう夏前よ？」
「えっと…」
「まぁ、いいわ。何かあれば言ってね」
「はい…」

轟に言われて私は頷き、制服からメイド姿に着替える。
財閥の家に住んでいるとはいえ使えるお金は無いためバイトは欠かせないのだ。

「さて、今日も萌え萌えきゅんで頑張るわよ笹枝！」
「もちろんです。今日こそ売り上げ一位を狙いますわ」
「その意気よ。その意気」

私の一日で、一番楽しい時間が始まった。
ここでなら家でも外でも大河の事を忘れる事が出来る。