超レア消費アイテム生産者の異世界つえー物語~今ならもれなく全紛失したら死ぬ特典付きです~

安居 飽人

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第1章 異種族交流編

25. 入学試験

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「オルタ様…高等魔術学園の入学試験受験票を、お届けに参りました」

 試験の数日前、スチュワードさんさんからある物を受け取る。
 それは、ようやく手元に届いた高等魔術学園の試験を受けることが出来る受験票だ。いたってシンプルな紙であるが、前世の大学受験のような感覚を思い出して物凄く緊張してしまった。

「そっか、いよいよだな…」
「そう気負わずとも兄様ならば大丈夫でしょう。むしろ首席合格も狙えますよ!」
「そうね、オルタなら間違いないわ」

 相変わらずアルナと母上から過度な期待をされている自分。因みに、父上からは優しい微笑しか向けられていていない。入学試験については、ゲーム内の生徒同士の会話で"筆記"と"実技"に分かれているのは知っている。その総合点数によってクラス分けをしているらしい。
 "筆記"はゲームの知識と勉強している分まだいい…問題は"実技"だ。全力でやるのは当然だが、全開でやるのは得策じゃない。まだ世間では秘奥義ともいえる"雷属性"は使わない方がいいだろう。結界魔術も同様か…

「この試験でイバール家にぎゃふんと言わせましょう!」
「ん?お前達、イバール家と出会っていたのか?」
「えぇ…というか向こうから挑発と因縁をつけられました…」

 思い出したくない記憶が蘇る。父上も、出来るだけイバール家とは避けてきたからな…
 だが、アルナの言う通りだ。ああいう奴らには実力で示してやるのが一番だ。

そして、試験当日。

「よぉオルタ、先に来てたんか」
「タケシか」

 魔術学園の校門前、そこで偶然にもタケシに出会った。しかもいつものようなチャラい服装ではなく、ビシッとビジネスカジュアルのような服装で来てる。

「自信はあるか?」
「あぁ、お前に勉強教えてもらって自信マシマシやで」

 タケシの様子に俺は感心している。
 試験前だというのに、俺と違って緊張している様子が見られない。あれか?この間貴族たちに馬鹿にされても何度でも立ち上がる不屈の闘志の持ち主か。この時点で精神面じゃ俺より上である。

「おや、やっぱり来たのか落ちこぼれども」

 そんな感動をぶち壊すような声が、別の所から聞こえてくる。
 振り返ると、そこにはクスクスとこちらを見て笑っているレシアとムーダーがいた。しかも、彼らのすぐ後ろには馬車が通り過ぎるのが見える。まさか、馬車でここまで来たのか?

 一般的に馬車で来るのは規則違反ではないが、馬車は貴族くらいしか所持していない。なので、この人達は貴族だとすぐにわかるし、平民出身からは余計な不安を持ちかねない。例えるなら、試験会場に場違いな高級外車でやってくるようなものだ。

「まぁ貴方たちが落ちるのは分かっておりますし、特別にその情けない瞬間を見てあげる」

 こいつら…試験前だというのに、この場にいる受験生全員に対して大声で禁句を言いやがった。俺達だけでなく全員にだ。空気ぐらい読んでほしいよ!

「そこまでよ」
「ッ!貴方は…」

 そこで、俺達に誰かが割って入る。どちら様だ?

「高等魔術学園では貴族平民問わず、受験者や生徒は皆平等。これを害する事は、優秀な魔術使いの成長の芽を刈り取る行為であり、これを破った者は厳罰に処する。王家が定めた高等魔術学園の校則であり、貴族であればより厳罰になるという事をお忘れかしら?」
「く、それは…」

 あの二人が急に大人しくなった。それにこの喋り方は…。

「それとも、先程の発言は学園のひいては王家に対する叛意なの?」
「そ、そんな事は!」
「ならばこれ以上騒がないことよ。ここは入学試験会場、受験者の心を乱す様な事をしないで」
「……………チッ」

 そう舌打ちしながら、彼女に怨みが篭った様な視線を向けてから立ち去って行った。

「貴方たちも早く会場に向かいなさい、あんな者を相手にするのは損よ?」
「女帝…」

 タケシの一言で、この女性の正体を看破する。

 "クレア・ブルーローズ"…
 現ブルーローズ帝国国王の一人娘、後の女帝となる人物だ。ゲームの設定と同じく生真面目な委員長気質の女性である。黒髪のロングヘアーでサファイアのような瞳を覗かせていた。
 
「ん? ああ、全然大丈夫だ。というか、数日前に因縁つけられただけだから何の問題ない」
「おいオルタ…!」

 今自分達と話しているのが、国の最高権力者の女性と気づいていないのかタケシが注意する。悪いなタケシ、俺はこの人を知っているからをとっているんだ。

「?変わってるわね貴方…ああ、自己紹介が遅れた。私の名はクレア。クレア・ブルーローズよ。一応ブルーローズ家の跡取りなんだけど」

「へえー貴方が…」

 俺のあまり驚かない態度に、目を丸くするクレアさん。

「本当に変わってる人ね。私が女帝だと知った人は途端に媚びてくる人か隠れて敵意を向けてくる人ばかりなのだけど」
「別に、内心は驚いてるよ」
「そう?話し方も変えようとしてなくて、自然体のように見えるわ」
「…さっきアンタが言ったじゃないか?ここはだと。だったら、いくら相手が女帝サマとはいえ、ルール上敬意を表したらそれこそ失礼になるんじゃないか?」

 会場全体に衝撃が走る。
 受験生の身分で、目の前にいる女帝をアンタ呼ばわり。普通ならば処刑ものだと誰もが覚悟した。

「ふふ、本当に恐れ知らずの変わった人ね。まるでを相手しているみたい」
「そりゃどうも…と、そろそろ時間か」
「それじゃ、お互い頑張りましょう。次に会うのは入学式ね?」
「はは、そうなる様に頑張るよ。というか、これから魔術を極める者同士、家に遊びにこない?」
「それはお誘い?生憎だけど、王族の身としては軽々しく出歩けないわ」

 そんな会話が終わり、受験前に女帝様とあり得ない普通の会話を目の前で見て呆然としてたタケシをすっかり忘れていたのであった。
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