魔女の箱庭

うかびぃ

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【???side】魔術師は勝ち誇る②

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「…お忍びでこちらへ?」
「はい。サラ殿は?」
「不在です。しばらくは帰ってきません。」


流石に先生の事情までは把握出来なかったようでかいつまんで話せば難しい顔をされた。そんなにサラに会いたかったのか?


「何故今なんです?」
「むしろち…スヴェン殿は今だからこそと仰ってましたよ。帝国から牽制されてるのをシュゼールは知りませんからね。拒否するのは当然ですが、その理由によってはこちらが先に攻撃されかねない。」


城主不在で決定の権限を誰も持ってないと言えば何度か召集がかかっても時間くらい稼げるし。その間に帝国が勝ってくれるかは何とも言えないけど、恐らくそれも義弟が上手くやるだろう。
今どの辺かな、もう帝国に入ったかな、なんてまだ離れて数時間も経過してないのにもう寂しい。折角一緒に住めるようになったのに。
彼女は常々長生きしたいとダラダラし、時折何かに立ち向かうように強い顔をする。実は彼女の祝福は詠唱簡略化ではなくて、母でもなく彼女の姉でもない、本当の先見の祝福ではないのかと思ったり。


「…彼女への謝罪は後日にします。」
「それ以外で何か御用が?」
「交易の件です。」


さっさと帰国してもらいたかったのだが、本題はこちらのようだ。商会長と話をしようかと思っていたのに我慢出来なかったのかな。


「この件はレイル殿が決定権を持っていらっしゃると先程伺ったので丁度よかったです。…再開を考えていただけまんか?」
「まぁ、別にいいんですけど。聖女擬きの話はいいんですか?」
「…メドニエの情報は入ってきていますか?」


ヤシュカもアルテナもメドニエに影を送り込んでいるのは双方知っているのに聞いてくるとか、こちらが把握出来ていないことでもあるのだろうか。
場合によってはサラに報告かな、と残りの鴉を呼ぼうとした時だった。


「ちょっと失礼。」
「…?」


突然窓に向かった僕を不思議そうに見てくる殿下を綺麗にスルーして外に待機しているソレに手を伸ばす。
帝国に送ったはずの一体が戻ってきた。何か動きがあったらしい。今ここで確認すべきだろう。
埋め込まれてる録画用の魔石を取り出して部屋に設置されている魔道具にセットする。見たことないものに殿下も好奇心から覗き込んでくる。
流れてきた映像には、義弟が城から何処かに向かう姿。行先は…酒場?


(兄さんが鴉に気付いて接触しようとしてる…?)


それはあまりよろしくない展開だ。いま彼に邪魔されるわけにはいかない。
サラが帰ってくるのが遅くなってしまう。


「レイル殿、これは…?」
「殿下、説明は後でするので少し時間ください。」


殴り書きでたった一言。それでも彼女達なら理解してくれるだろう。
同じ窓から飛ばした鴉を見送りつつ、自分もやはり行きたかったと不満を含んだ溜息を零すのである。
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