魔女の箱庭

うかびぃ

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じゃぁ今回は何回目だというのよ。

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玄関は普通だった。前世と同じく靴を脱いでフワフワなスリッパに足を入れる。その感覚が酷く懐かしくて感動していたが、ハッと我に返り奥を見据える。
1階は長めの廊下の左右と最奥に扉が一つずつ。今いる私のすぐ横には上へと続く階段。
さてどの扉から入ろうかと悩んでいれば、奥の扉が勝手に開く。
だからいきなりはやめて欲しい。心臓に悪い。
まぁ行くべき場所は確定したのでなるべく足音をたてずに進む。横の扉から何か飛び出してきたら怖いし。気配を可能な限り消す方が良いだろう。


踏み入れた部屋は前世のリビングそのままだった。
ローテーブルに3人掛けのソファが2つ。その向こうには、

「まさかテレビまであるとは…。って、エアコンもあるじゃない。」

良く見れば奥にはキッチン、テーブルの上にはスマホ。
建物の外観から期待はしていたけど、この時代じゃお目にかかれない懐かしい物ばかりだ。
これらが使用可能なら食料さえ手に入ればここでラクに過ごせるのでは?と考え始めた時、スマホが震え始めた。
静かな空間に響く音にどれだけ驚かせれば気がすむのだと心臓をバクバクさせながら、手に取るべきか躊躇う。そんな私を急かすように振動が強くなった気がした。
ええい!女は度胸!

「もしもし!?」
『初めまして今代の魔女さん』

外で聞いたものと違う、低めの疲労が滲んだ声がスマホから流れてくる。やはりこの家には私と同じ人間がと気持ちが浮上するが、

『申し訳ないけど、このまま聞いてね。アタシにはこうして貴方に音声のみを遺すことしか出来ないの。貴方の質問に何一つ答えてあげられない、助けてあげられないの。ごめんなさい。』

続く言葉にゾッとした。つまりこれは遺言ではないか。

『更に言うとこの音声、1ループにつき1回しか再生出来ないの。アタシにもっと才能があったら良かったのだけど。本当にごめんなさい。だから、よく聞いてほしいの。』

1ループ?才能?
謎な単語に頭は混乱するばかりだが、1回しか再生出来ないのであればそれらはとりあえず隅に追いやるしかない。今は自分の記憶力を総動員してこの遺言を聞かねば。

『薄々勘づいているとは思うけど、ここはアタシ達がいた世界で存在してたラノベの世界。ヒロインと悪役である魔女が転生して何度も繰り返されてる世界よ。アタシが把握しているだけで以前に9人はこの世界に転生していた。そしてこれを聞く貴方がアタシの後の何人目なのかは分からない。』

あぁ既に頭がパンクしそうだ。
それが本当なら、一体私は何人目の転生者なのだろう。

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