前王の白き未亡人【本編完結】

有泉

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228 二人の夜(2) *性的な描写があります*

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「白羽……白羽——」

 口づけの合間に耳殻を掠める息混じりの声音に、一層理性が溶けていくようだ。

<レイゾンさま——レイゾンさま——レイゾンさま——>

 何度名前を呼んでも呼び足りない。
 呼ぶたびに好きだという気持ちが込み上げ、胸が破裂しそうだ。
 口づけの音、吐息と衣擦れの音。
 布一枚がもどかしい。
 
 好き。触れたい。触れられたい。——もっと。

 昂る気持ちのまま、数えきれないほど口づけを交わしていると、いつしか寝衣は解かれ、レイゾンの大きな手が直接肌に触れるのを感じた。白羽はうっとりと息をつく。
 温かで、なのにさらりとした感触が気持ちいい。

 背中、肩、腰、脚——。
 レイゾンは白羽の身体中のあちこちに手を滑らせながら、同時に、鼻先に、頬に、額に、瞼にと次々と柔らかな口づけを降らせてくる。
 手で指で唇で——彼の全身で白羽の全身をくまなく辿るように。

「——美しいな……お前は本当に……。肌も髪もしなやかな四肢もなにもかも……。もっとも……一番美しいものは見えないところにあるのだろうが……」

 ひとりごちるような声がしたかと思うと、胸元に——心臓のあたりにちゅっと音を立てて口づけられ、白羽の身体がびくりと跳ねた。

<ァっ——>

 高い声が上がってしまうのが恥ずかしい。
 けれど堪えようとしてみても、続けざまに胸元に、首筋に口づけを繰り返されるとその度に声が溢れてしまう。
 
<っ……ぁ……レ……ゾン、さま……っ……>

「なにを堪える。俺にしか聞こえていないのだ。構わないだろう?」

<アぁっ——>

 次の瞬間、白羽の唇からひときわ甘い声が零れた。
 大きく背がしなる。
 レイゾンの唇が、白羽の胸の突起を啄んだのだ。

 そのまま舌先で柔らかく捏ねるようにして幾度も擦られたかと思えば、ちゅうっ……と強く弱く吸い上げられ、その度、腰の奥から熱いものが込み上げ、身悶えしてしまう。

<レ……ぁ……だめ……っ——>

 レイゾンの愛撫は優しいが情熱的で、執拗だった。白羽が押し隠そうとしている欲を的確に刺激し、露わにしていく。触れられるたび膨れ上がっていく劣情に翻弄され、白羽はなすすべなく快楽の沼に引き摺り込まれていく。

<ぁ……っぁ、あ、ゃァっ——>

「もっともっと、お前の気持ちのいいところを教えてくれ。もっともっと——お前を気持ち良くしてやりたい」

<んんっ……!>

 一方の乳首を舌で転がすようにして散々に弄られたかと思うと、もう一方をきゅっと摘まれ、背筋に甘い痺れが走る。 
 与えられる快感の大きさについていけない。
 好きな相手と身体を重ねることが、こんなに気持ちのいいことだなんて……。

<レ……イゾン……さま……っ……>

「ああ」

<レイゾンさま……っ——>

「ああ。白羽——俺はここだ。ずっとお前のそばにいる」

 声と共に、いつしか目尻に浮いていた涙を口づけで拭われる。
 ぎゅっとしがみつくと、強く抱き返される。
 なにも纏っていない肌と肌で触れ合うと、混じって溶けていくようだ。広い胸。逞しい腕。頰の傷。レイゾンの香り。 
 
<……っ……!>

  そうしていると、レイゾンの手が白羽の性器に触れた。既に張り詰めているそこを片手ですっぽり包まれたかと思うと、やわやわと揉み込まれる。
 そのたび、クチュクチュと濡れた音がするのが恥ずかしい。
 腰を引いて逃げようとしても手は離れず、むしろより強く淫らに蠢き、白羽を煽る。

<ぁ……っ……ん……あ、ァ……ゃ……だ、め……っ……>

「どうしてダメなんだ? こんなに硬くしてるなら、気持ちがいいんだろう?」

 言いながら緩く扱かれ、腰が跳ねる。
 ダメだと思うのに、腰が揺れてしまう。恥ずかしいのにレイゾンから与えられる刺激を追うように身体を擦り寄せてしまう。

(でも——)

 白羽はいやいやをするように頭を振った。
 このままでは、きっと自分だけ達してしまう。我慢できなくなってしまう。レイゾンを——愛する人を、初めて心から全身で感じる夜にそんなのは嫌だ。
 気持ちがいい。けれど——欲しいのは快感よりも——レイゾンだ。

<……ゃ……です……>

「白羽?」

<っ……ぃや……です……わたし、ばかり……っ……>

「白羽……」

<レイゾンさまも……レイゾンさまが、欲しぃ……です……>

 乱れる息混じりになんとかそう訴える。と、レイゾンがごくりと息を呑む気配があった。
 彼はおもむろに枕を掴むと、やや強引に白羽の身体の下にあてがった。
 そのままゆっくりと膝を開かされたかと思うと、先刻まで触れられていた性器の奥——尻の狭間に指が伸びてきた。

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