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227 二人の夜 *性的な描写があります*
しおりを挟む離れるとまたすぐに触れ合いたくなって、夢中になって何度も何度も口づけを交わしているうちに寝台に運ばれていた。
抱え上げられた時同様、ふわりとそこに下ろされ、途端、白羽は自分が緊張したのがわかった。
体重をかけすぎないようにしてのしかかってくるレイゾンの優しさと、心地のいい温もりに胸は熱くなるものの、いざ彼を身近に感じるとどんな顔をすればいいのかわからない。
そんな不安が伝わったのだろうか。
「……白羽?」
口づけの合間に、レイゾンが囁くように尋ねてきた。
「重たいか? それともどこか痛……」
<いいえ>
白羽は首を振った。
重たくないし、さっきから何度も柔らかく髪をかき上げられているのは堪らなく気持ちがいい。けれどやはり——不安なのだ。
怖いのだ。
——騏驥だから。
<ただ……あの……>
「ん?」
<わたしで……本当に……?>
「??」
<その……騏驥なので……>
人の姿であっても、人ではないのだ。一糸まとわぬ姿になれば、きっとこの首の「輪」は一層目立つだろう。
白羽は縋るようにレイゾンを見上げる。
と、レイゾンは白羽を見つめ——その「輪」を見つめ——再び白羽を見て——小さく笑った。
<レイゾンさま!?>
笑うなんてひどい、と白羽が抗議の声を上げると、レイゾンは「すまない」と軽く手を挙げる。しかしまだ笑ったままだ。
微苦笑を浮かべながら、優しく白羽の頬に触れてきた。
「まったく……お前は予測がつかないな……。そんなことで不安がるとは」
そして白羽の額に静かに口づけてくる。宥めるように。
「お前が騏驥だということなど、会った時からわかっている。それからずっと騏驥として扱ってきたつもりだぞ? いまさら——」
<で、でも>
「俺がなにも考えてないとでも思ってるのか? 俺だって今に至るまで色々と考えた。その上で、お前がいいんだ。お前がいい。騏驥だろうがなんだろうが、お前がいい。お前が欲しいんだ」
<…………>
そして彼は「それにしても」と苦笑すると、不意に白羽の頰をふにっと摘む。
「一人で俺を助けに来るような怖いものなしのくせに、こんなことで悩むなんて変なやつだ」
言いながら、白羽の頬をむにむにと柔らかく揉むように愛撫する。白羽は<だって>と唇を尖らせてみせた。
<あの時と今は違います。あの時はレイゾンさまを助けるためだったから……。でも今は……>
レイゾンさまに嫌われるかもしれないと思うと、怖いのです。
白羽が零すと、その身体がぎゅっと抱きしめられる。
何度めかの抱擁だ。けれど今までよりもより強い。
耳元で、レイゾンの声がした。
「お前を離さないと言ったはずだ。信じろ、俺を」
想いは、熱い囁きとなって白羽の中に流れ込む。
「嫌うわけがない。嫌うどころか、『レイゾンさまもう許してください』と言いたくなるぐらい愛してやる。覚悟しておけ。必死に騎士になって死にそうになってまで得たいと思った騏驥だ。どれだけ愛しても足りないほどだからな。……むしろ……」
不意に声を切って、レイゾンが顔を覗き込んできた。
「むしろ、お前は本当にいいのか?」
どこか不安そうな面持ちだ。白羽が目を瞬かせると、
「俺は……お前に酷いことを……」
少し躊躇った後、レイゾンは苦しそうに眉を寄せて言う。
“あのこと”だ。白羽は気づいた。
過日、レイゾンに力づくで乱暴された、あの……。
白羽はじっとレイゾンを見つめる。
彼を恨んだし憤った。許せないとさえ思った。あのときの恐怖と悲しさを完全に忘れることは、きっと無理だろう。起こったことはなかったことにできない。
でも。
白羽はゆっくりと首を振ると、
<レイゾンさまに触れられるのは好きだと……申しました>
そう告げる。
これもまた事実なのだ。
そして、彼があのことをとても悔やんでいるのを知っている。
彼もまた、あのことを忘れていないことを。
だからもう——いいのだ。
過ちは起こってしまったけれど、それを経て今があるのだから。
白羽が見つめると、レイゾンは「ありがとう……」と噛み締めるように言う。
そして強く白羽を抱きしめると、深く口づけてきた。
<ん……っ>
深く——浅く。長く——短く。何度となく角度を変えて重ねられる口づけは、瞬く間に白羽を夢中にさせる。
挿し入ってきた舌に口蓋を擽ぐられ、舌を舐められ柔らかく吸われると、鼻にかかった声が溢れる。
それが恥ずかしくて、ついつい踠いてしまうと、「逃がさない」と言うようにより強く抱きしめられ、深く口づけられる。
<ぁ……ふぁ……ん、んん、っ……>
まだ寝衣を解かれてさえいないのに、もう頭がくらくらしている。
頰が熱い。耳が熱い。まるで酩酊してしまったかのようだ。
口づけられるたび、甘く濃い果実酒を注がれるかのように身体がじわじわと熱くなっていくのがわかる。
ふわふわして、ぼうっとして、なのに気持ちがいい。
恥ずかしいのに、もっと、ねだってしまうのを止められない。
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