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123 夢見ていた以上に、もっと——。 *性的な描写があります*
しおりを挟む「……ダンジァ……こ……これで終わり……では、ないのだろう……?」
啄むような口付けの合間、頬を染めながら尋ねると、ダンジァの唇がピクンと震える。暫し間があった後、
「……お辛くありませんか」
顔を上げ、伺ってくる。
シィンは「平気だ」と応えると、恋しい相手の身体に自身の身体を擦り寄せた。
「騎士なのだし、このぐらい全然平気だ。それに……お前、なのだし……」
辛くない、と続けると、ダンジァはじっとシィンを見つめ、やがて幸せそうに目を細める。
大切なものを見るときの目だ、とシィンは思った。自分もきっと同じ目をしているだろう。
シィンは胸が熱くなるのを感じながらダンジァを引き寄せると、乱れて額に落ちかかって来ている髪をかきあげる。そしてその額に、ちゅっと音を立てて口付けた。
「……もっと気持ちよくなりたい……お前と一緒に……」
そして間近から瞳を覗き込む。
ここにも星があるのだな、と思っていると、その星が輝いて瞬いた。
「シィン様は……本当にわたくしを幸せにするのが上手なのですね……」
「……お前も、わたしを幸せにするのが上手いぞ」
「お褒めに預かり光栄です」
畏まった口調に、どちらからともなく笑みが溢れる。
「力を抜いていてくださいませ」
ダンジァが優しく言った。
「どうぞ——お任せ下さい。……少々恥ずかしいことになるやもしれませんが、決して痛くは致しませんので」
「は、恥ずかしいのも——」
嫌だ、と言い終える前にぐいと膝を掬われ、大きく脚を割り開かれ、シィンは息を呑む。
あまりにあられもない格好だ。
「ダ……」
「ご辛抱ください。少し準備を致しませんと……」
みるみる真っ赤になるシィンに、ダンジァは落ち着いた口調でそう言うと、露わになったシィンの秘部に——普段は慎ましく閉ざされた双丘の間にそっと触れてくる。触れた途端、くちゅんと秘めやかな音がした。
ダンジァの指に残っていた体液——先刻の手淫でシィンが零した精液と、扱かれていたうちに性器から滴っていた体液のためだろう。既にしっとりと濡れていた窄まりを、ダンジァの指がゆるゆるとなぞる。
「力を抜いていてください」
そう言われたかと思うと、指はゆっくりとシィンの中に挿し入ってきた。
「んっ……」
一瞬感じた違和感に、思わず声が溢れる。ダンジァと目が合う。
「大丈夫」と、シィンは首を振った。
「平気、だ……ちょっと、びっくりして……」
「苦しくはございませんか」
「少し……だけ……でも、大丈夫、だ……から……」
指はじりじりと探るようにシィンの奥に入ってくる。
動かされるたび次第に違和感は和らぐものの、今度はそれがダンジァの指なのだということを強く意識してしまい、恥ずかしさにどんな顔をすればいいのかわからない。
なのに気づけば、そんなシィンの顔をダンジァが見つめている。
心配そうな気遣うような貌。それが近づいてきたかと思うと、そっと口付けられた。
「絶対に……傷つけたりはいたしません」
「ん……」
ちゅ……ちゅ……と口づけを重ねていると、強張りかけた身体も自然と弛んでいく。柔らかな粘膜を弄られているのに、相手がダンジァなのだと思うと全く怖くなかった。むしろ、丁寧すぎるぐらい丁寧に扱われて、なんだか気恥ずかしいほどだ。
「ぁ……んっ」
そうしていると、後孔に感じる圧迫感が増した。
埋められている指が増えたのだ、と気付いたのはそれが中で動き始めた時。
体奥を優しく執拗になぞられるたび、背筋が甘く痺れる。
粘液が絡むようなグチュグチュとした音が聞こえるたび耳が熱くなるのに、繰り返される口付けは蜜のようで、いつしか夢中にさせられる。
「は……ぅ……ぁ……」
一度達したはずの性器も、再び力をもって頭をもたげ始めている。
自分の身体の中を探られることが、こんなに気持ちいいなんて——。
「ダ……ンジァ……っ……」
でももっと——もっと彼が欲しい。もっと触れたい。触れられたい。夢見ていた以上に、もっと——。
「ダンジァ……」
腕をぎゅっと掴む。自分の身体の「準備」が整ったのかどうか、自分ではわからない。でも心はもう待てない。待ちきれない。
視線でそう訴えると、ダンジァが困ったように眉を下げる。
「もう少し……お身体の様子を見てからの方が……」
「嫌だ」
「シィン様……」
「焦らすな……馬鹿もの。…………欲しいのだ、お前が。もう……」
待てない——と言いかけた言葉は、深く重ねられた唇に攫われる。
埋められている指は、それでもひとしきり確かめるようにシィンの内壁を柔らかく抉り、やがてゆっくり抜き出される。
一層大きく膝を開かされ、のし掛かられたかと思えば膝が胸につくほど身体を畳まれ、代わりにそこに触れたのは、指よりもっと熱く、なんだか比べ物にならないほど大きなものだ。
一瞬、シィンは不安になる。
けれど今更「待て」とも言えず、シィンが思わず身構えてしまった時。
「んっ——」
その灼熱を思わせる塊が、グッと挿し入ってくる感覚があった。
予想していた以上の質量を感じ、恐怖に思わず身体が竦む。途端、ぴたとダンジァの動きが止まった。
彼は何かを堪えるように険しい表情でぎゅうと目を閉じ、頭を振ると、ややあって瞼を上げ、息をつきながらそろそろとシィンの頬に手を伸ばしてきた。
「っ……お苦しいのでは? やはりもう少ししてからの方が……」
その声も、彼らしくなくたどたどしく乱れている。
堪えているのだ。激情を。一気に挿し貫き、快感を貪りたい欲望を。
シィンが我慢できなくなっているように、彼もまた充分に昂っているのだ。いや——一度達しているシィンより、よほど彼の方が。
なのにシィンの身体を気遣って——シィンのために。
「…………」
シィンの胸の中が、切ないほどの愛しさでいっぱいになる。
ゆっくりと、彼の首筋に腕を絡め、抱きしめた。草の香りに混じる汗の香りを胸いっぱいに吸い込む。
人の姿でも馬の姿でも、こんなに好きな相手はいない。触れ合って嬉しいと思う相手も。離れたくないと思う相手も。何をされてもいいと思う相手も。
「平気だ。初めてゆえ……慣れていなくてすまぬ」
「い、ぃえ。そこは謝られるところでは……」
むしろ嬉しゅうございます——。
微笑んで言われ、その笑みの鮮やかさに、瞬間、シィンはドギマギしてしまう。
気を取り直して続けた。
「だから……しがみついていて良いか? こうして……さっきのように……。お前にくっついているのは、気持ちがいい。それに、とても安心できる」
そう言って、全てを委ねるようにダンジァにしがみつく。と、そんなシィンの意を察したのだろう。応えるように、ぎゅっと抱きしめ返された。
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