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クリムゾン・ヘル

December-2

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 打ち上げはヘルファイアの5人、久井、赤城、真姫、皇介、未琴、広空の総勢12人の大所帯となった。


    年齢も立場も、生まれた土地も違う同族(同胞とでもいうか)で集まれるとは、思いも寄らなかった。
 

「初めまして。皇介の妹の未琴です」

「あらまあ! 皇介に似てなくてカワイイ!!」

 陸がオネエ口調で褒めて、皆が笑う。広空も口を開く。

「コハクさん達の後輩の星野です。名前と全然関係無いんですが『うー』と呼んで下さい」

「ヘルファイアの先輩って言うか、少しアドバイスもしてます、久井です」

 初参加の3人が自己紹介を終えたら、ジュースで乾杯となった。


    大人数だし、話も深くなりそうなので、今回は全国チェーンの居酒屋の個室を取った。


    広空の隣の望が話しかける。

「晴天ってさあ、どんな感じなの?」

「『どんな』…?」

「俺、東京は観光でしか行った事無くて、もちろん晴天も行った事無いのね。だからどんな感じだろうと思ってさ」

 目を泳がす広空に気付いた鉄也が、フォローする。

「学校とかの話? 実はこいつ、小学校から登校拒否なんだわ」

「え⁈ そうなんだ、ごめん!!」

「いや、別に。話そうにも、思い出らしい思い出無えから」

 広空も上手く話を合わせた。歩が目で鉄也に称賛を送る。

 真姫も質問した。

「そちらって『術』使う事ってあります?」

「怪我した時にこっそりね。基本的に使う事無いな」

 鉄也が答えた。


 基本的に何者かに襲われる事は無い。あるとしたら強盗と通り魔くらいか。


「でも武術は身に着けますよね?」

「『護身用』レベルね。後は特殊な仕事に就いた時に、改めて習う感じ」

 望の追加質問にも、鉄也が答えた。やはり、込み入った質問の話題になる。


 広空が不意に問う。

「…式獣は、そっちでも使います?」

 鉄也と歩は少し警戒したが、フラットに望が答える。

「うん。俺は滅多に使わないけどね」

 真姫も頷いた。

「望のは、動きを抑えたり止めたりするやつだものね。私のは大規模攻撃系だから、逆にあまり使わないし」

「…会話したりは?」

 広空がもっと踏み込む。鉄也と歩はドキドキする。

 望が答える。

「俺はしないな。『範囲こっからここまで』って指示して終わり。
あ、でもウチの姉貴は勝手にあだ名つけて、呼んだり戻る時にお礼や挨拶言ってる」

「…ミカさんらしいわね」

「動物好きだしね。でさ、姉貴が呼び出す時は滞在時間長いし、精度も高いの。気に入られてんかな?」

「相性ってあるらしいよな」

 鉄也も頷く。望はウーロン茶を飲んだ。

「元から喋りの達者なやつもあるよね。人型とか、神レベルに年数のいってる式獣は」

「ありがとう。勉強になった」

 広空はにっこり微笑んだ。



「お疲れ」

 久井は恭一に声を掛けた。

「お前に色々任せて悪いな」

「お疲れ様です。そんな事無いです。久井さんには仕事があるし、俺も出来る事しかやってないんで」

 言いつつ、恭一に精神的な疲れが見えるのは、久井も気付いていた。

「リーダーだから頑張るのはいいけど、何かあったらすぐ言えよ?」

「判ってますよ」

 恭一は自然体の笑みを見せた。赤城がそこへやって来た。

「初めまして久井さん。赤城と言います」

「あ、今日はお疲れ様でした。素晴らしいライブをどうも」

 2人は社会人のお辞儀をした。


(オフでも漏れてくるオーラは強大だな)
 そんな事は表情にも出さない久井に、赤城は言った。

「望や皇介がお世話になってて、申し訳ないです」

「そんな事ないですよ。ウチの奴らも勉強させてもらってます」

「そうそう。ドラゴンフライのテープ持ってたのって…」

「久井さんです」

 恭一の答えに、赤城は心から嬉しそうな顔をした。

「マジすか⁈ おたくでしたか。嬉しいな! アレ、どこで手に入れたんですか?」

「…赤城さんは覚えてないと思うんですが、実は俺、あの時オープニングアクトで出てまして…」

 久井の言葉に、赤城は手で口を隠しものすごく驚いた。

「ええっ! 本当すか⁈ …そっか、参加者みんなに配ったやつですね」

「そうなんです。下手くそなのに無理やりブッキングして…」

 久井は一息つくと、続けた。

「俺、今日赤城さんと会えて本当に良かったです。キキョウ達の話聞くまで、引退したと思ってたので、また演奏観れて嬉しかった」


 これは任務でも接待でもなく、本心から出た言葉だった。

 赤城は笑ってみせた。

「そう言ってもらうと、しぶとくやってて良かったと思いますよ。齢が齢だからもう趣味でいいんで…。
久井さんは?」

「今は天番関係なので、もうバンドは…。でも諦めきれないのか、若手の応援してます」

「そうですか…。おたくのあの子達、筋がイイしメジャーだって夢じゃないですよ」

 2人はチラリとヘルファイア達を見た。


    ジンジャーエールを口にした後、赤城は口を開いた。

「たまに…。まあ、年1であるか無いかですけど。もし、ドラゴンフライが東京進出もして、メジャーデビューしてたらどうなってたかなぁって、ガラにもなく考える事あるんですよ」

 久井が思わず赤城を見ると、何となく寂しそうな顔をしていた。

「まあ、メンバー2人が七神衆って時点で、東京行けないんですけどね。あははは」

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