31 / 83
チキン・ヒーロー
任務続行
しおりを挟む
「凪原靖等さんは、陽炎だけど糸遊側についた言わば陽炎の反徒、ってやつだ。
戦後の混乱に乗じて政府を倒そうとした動きを密告した事と、糸遊と政府を繋ぐ『天番』制度を考案した人さ。
一応政治家だけどあまりメジャーでは無くて、陽炎出身だからか…曇天でもあまり口に出す人も無いし、名前は浸透してない。
俺も『上役』につくまで知らなかった」
赤城はそこまで言い、ジンジャーエールを口にした。
ガトリングコブラでのライブ公演後、ヘルファイアの5人と赤城、真姫、望、皇介で、遅い夕食を取るため居酒屋の個室に居た。
赤城は苦笑した。
「てか、君らわざとにも程があるだろ⁈ 言おうと思えば、昨日まで引っ張らなくても言えるじゃん! もしもがあったらどうすんのよ!」
「すみません…。でもそういう任務だったんで」
キキョウは申し訳なさそうに言った。
昨日は年長者としてクールに振舞っていたキキョウだが、赤城達の退散後、汗でTシャツの背中部分の色が変わっていた。
『マジやばかった!!ガチで殺されるかと思った!!』と1番騒いでいた。
昨夜遅く、晴天から『抜き打ち内偵任務』の為にヘルファイアを送り込んだ人物数人(1人はキキョウの父)が、中央会など関係先と望や皇介宅に訪れた。
『大変失礼しました、ご協力ありがとう』と。
内偵理由は教えられないらしいが。
偶然にも望と芽衣は同じ日に、『疑惑のパンピ』と会う事になっていたのだ。
芽衣の彼氏がパンピに偽装した陽炎で、曇天侵入と共に捕まりかけ、説得する芽衣に式獣で重傷を負わせ、陽炎は車ごと暴走し突入。
糸遊の攻撃で、その陽炎は死亡。
芽衣も、病院への搬送中に死亡した。
因縁のある相手だが、あの惨状を見せつけられた真姫は気分が晴れなかった。
皇介が尋ねる。
「家は政府筋なんですよね? よくバンド許しましたね、親御さん」
「え? 全然許されてないよ? 諦められてる。ぎゃははは!!」
コハク:有間陸が笑って答えた。シオンも言った。
「うちも。『取り敢えず学校だけは卒業して』ってね」
真姫も尋ねる。
「どうしてバンドを?」
「音楽が好きってのが1番大きいけどさ、晴天は『この国の為になる仕事に就くのが当然』ってなってるんだ。
俺はその考えに真っ向から歯向かっていきたい。『音楽』だって人の為になるって信じてるから」
エンジ:戸田隆平が答えた。
『音楽で世界を変える』、みたいな次元の話だと真姫は思った。癒し、激励、活力…、でも人は音楽を求める。
バカみたいな話だけど、人である以上は蔑ろに出来ないのである。
望がポツリと呟く。
「この国の為か。…いつまで戦うべきなんだろうな」
その言葉に、一同は思わず望を見ると、焦ったのか弁解を始めた。
「ごめん、変な事言っちゃって…」
「まあ、糸遊は戦う事だけがこの国の為になるって訳じゃないじゃん?」
キキョウが煙草を吸いつつ言うと、赤城も頷いた。
「イイと思う。そういうのも大事だ」
「焦った」
運転しつつ恭一が呟いた。帰途の車内。歩が反応する。
「確かに…。でもキョウさん、上手くフォローしたじゃん」
「ああ言うしかねえじゃん。良かった」
まだ早い。
陸が笑って言う。
「もう戻れないね、進むのって怖いね」
「お前、プレッシャーかけんなよ」
隆平が顔をしかめる。鉄也が静かに言う。
「困難な任務だけど、俺達の夢もかかってるし。…利用してるみてえだけど、やらないと」
助手席の歩が、車のMDプレイヤーへ赤城からもらったMDを読み込ませた。
親愛の証に、赤城からCLOWN・ASHの曲を貰ったのだ。
俺達は卑怯者だ。夢の実現の為に、ある任務を遂行する。
トモダチを作り、そのトモダチを地の底へ落とす。
MDは1曲目の『チキン・ヒーロー』を奏で出す。
何度でも言おう。俺達は卑怯者だ。
戦後の混乱に乗じて政府を倒そうとした動きを密告した事と、糸遊と政府を繋ぐ『天番』制度を考案した人さ。
一応政治家だけどあまりメジャーでは無くて、陽炎出身だからか…曇天でもあまり口に出す人も無いし、名前は浸透してない。
俺も『上役』につくまで知らなかった」
赤城はそこまで言い、ジンジャーエールを口にした。
ガトリングコブラでのライブ公演後、ヘルファイアの5人と赤城、真姫、望、皇介で、遅い夕食を取るため居酒屋の個室に居た。
赤城は苦笑した。
「てか、君らわざとにも程があるだろ⁈ 言おうと思えば、昨日まで引っ張らなくても言えるじゃん! もしもがあったらどうすんのよ!」
「すみません…。でもそういう任務だったんで」
キキョウは申し訳なさそうに言った。
昨日は年長者としてクールに振舞っていたキキョウだが、赤城達の退散後、汗でTシャツの背中部分の色が変わっていた。
『マジやばかった!!ガチで殺されるかと思った!!』と1番騒いでいた。
昨夜遅く、晴天から『抜き打ち内偵任務』の為にヘルファイアを送り込んだ人物数人(1人はキキョウの父)が、中央会など関係先と望や皇介宅に訪れた。
『大変失礼しました、ご協力ありがとう』と。
内偵理由は教えられないらしいが。
偶然にも望と芽衣は同じ日に、『疑惑のパンピ』と会う事になっていたのだ。
芽衣の彼氏がパンピに偽装した陽炎で、曇天侵入と共に捕まりかけ、説得する芽衣に式獣で重傷を負わせ、陽炎は車ごと暴走し突入。
糸遊の攻撃で、その陽炎は死亡。
芽衣も、病院への搬送中に死亡した。
因縁のある相手だが、あの惨状を見せつけられた真姫は気分が晴れなかった。
皇介が尋ねる。
「家は政府筋なんですよね? よくバンド許しましたね、親御さん」
「え? 全然許されてないよ? 諦められてる。ぎゃははは!!」
コハク:有間陸が笑って答えた。シオンも言った。
「うちも。『取り敢えず学校だけは卒業して』ってね」
真姫も尋ねる。
「どうしてバンドを?」
「音楽が好きってのが1番大きいけどさ、晴天は『この国の為になる仕事に就くのが当然』ってなってるんだ。
俺はその考えに真っ向から歯向かっていきたい。『音楽』だって人の為になるって信じてるから」
エンジ:戸田隆平が答えた。
『音楽で世界を変える』、みたいな次元の話だと真姫は思った。癒し、激励、活力…、でも人は音楽を求める。
バカみたいな話だけど、人である以上は蔑ろに出来ないのである。
望がポツリと呟く。
「この国の為か。…いつまで戦うべきなんだろうな」
その言葉に、一同は思わず望を見ると、焦ったのか弁解を始めた。
「ごめん、変な事言っちゃって…」
「まあ、糸遊は戦う事だけがこの国の為になるって訳じゃないじゃん?」
キキョウが煙草を吸いつつ言うと、赤城も頷いた。
「イイと思う。そういうのも大事だ」
「焦った」
運転しつつ恭一が呟いた。帰途の車内。歩が反応する。
「確かに…。でもキョウさん、上手くフォローしたじゃん」
「ああ言うしかねえじゃん。良かった」
まだ早い。
陸が笑って言う。
「もう戻れないね、進むのって怖いね」
「お前、プレッシャーかけんなよ」
隆平が顔をしかめる。鉄也が静かに言う。
「困難な任務だけど、俺達の夢もかかってるし。…利用してるみてえだけど、やらないと」
助手席の歩が、車のMDプレイヤーへ赤城からもらったMDを読み込ませた。
親愛の証に、赤城からCLOWN・ASHの曲を貰ったのだ。
俺達は卑怯者だ。夢の実現の為に、ある任務を遂行する。
トモダチを作り、そのトモダチを地の底へ落とす。
MDは1曲目の『チキン・ヒーロー』を奏で出す。
何度でも言おう。俺達は卑怯者だ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ま性戦隊シマパンダー
九情承太郎
キャラ文芸
魔性のオーパーツ「中二病プリンター」により、ノベルワナビー(小説家志望)の作品から次々に現れるアホ…個性的な敵キャラたちが、現実世界(特に関東地方)に被害を与えていた。
警察や軍隊で相手にしきれないアホ…個性的な敵キャラに対処するために、多くの民間戦隊が立ち上がった!
そんな戦隊の一つ、極秘戦隊スクリーマーズの一員ブルースクリーマー・入谷恐子は、迂闊な行動が重なり、シマパンの力で戦う戦士「シマパンダー」と勘違いされて悪目立ちしてしまう(笑)
誤解が解ける日は、果たして来るのであろうか?
たぶん、ない!
ま性(まぬけな性分)の戦士シマパンダーによるスーパー戦隊コメディの決定版。笑い死にを恐れぬならば、読むがいい!!
他の小説サイトでも公開しています。
表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる