【完結】僕たちのアオハルは血のにおい ～クラウディ・ヘヴン〜

カーニバル・クラッシュ

カーニバルクラッシュ

　派手なライトが消え暗転すると、観客は静まった。

   ステージが青く点灯し、中央のマイクスタンドの隣で女は深々と一礼した。既に演奏部隊は、後ろで配置についている。

   黒い蝶の描かれた、空色のミニドレス姿の女が顔を上げると、観客は拍手と歓声を上げた。

　ベースが地響きの様な唸りを立てると、呟くように女が唄い始める。
    物語を語るかの様にゆっくりワンコーラス唄うと、ギターとドラムが追いかけるが如くメロディを奏で始める。


   まるで重力に逆らい昇った花火の、大輪が花開いたみたいだった。



「お疲れ！　マジ良かったわ！」

　望は通用口から出た真姫に感想を述べた。

    これから打ち上げで、近くのコンビニに移動し赤城を待つところだ。
    生き生きした表情の望とは対称的に、真姫は怠そうな表情だった。

　疲れもあるだろうけど照れてるな、と望は思った。


「ラストの曲、すげーカッコ良かった！　アレ好きだなー」

「…カーニバルクラッシュ」

「え？」

　望が聞き返すと同時に、赤城がやって来るとこだった。
   真姫は続けた。

「あの曲のタイトル。アレンジは赤城さんだけど、原曲は望の父さんが作った」

　驚く望をそのままに、真姫は車へ向かった。