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ミッション
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私は、両脇にビニールハウスの建ち並ぶ田舎道を歩いていた。
(これは夢だ。なぜなら、現在この場所は住宅街になってて、存在しない)
道を抜けた先。県道を渡った向こうは私の実家なのだが、様子が少し違っていた。
(門の隣に柊の木がある。そして塀じゃなく柵ってことは…、これは小学生の時の実家だ)
私は少し眺めた後、敷地へ入って行った。実家の車庫には、母が当時乗っていた紺の軽ワゴンは無く、自転車置き場には私の赤い自転車や弟の三輪車。
(成長するに従って乗らなくなって、全部捨てたっけ。…そう言えば)
私はある事を思い出し立ち止まり、自分の足元を見る。そして、家の前にある畑を見た。
「あった?」
9歳の私が声をかけると、少年2人は首を振った。
「無えや」
「あっちにあるんじゃないか?」
私達は畑に入り込んでしまった、ゴムボールを探していた。
「ごめん、喉乾いたから、いったん水飲んでくる」
捜索を離脱した9歳の私は、車庫の脇に居た40歳の私を見て、立ち竦む。私は言った。
「都子、元の世界に戻ろう」
私は9歳の私を伴うと、無言で実家の敷地を出た。9歳の私は、少年の居た方を振り返りつつ言った。
「でも、あの子達に何も言ってない。言ってからの方がいいんじゃ?」
「お父さんから聞かなかった?『昔、池で死んだ友達が居た』って」
子供の頃、ザリガニを釣りに近所の調整池に行こうとしたら、父から注意を受けた。父が小学生の時、同級生2名がそこで亡くなったという。
9歳の私は言った。
「あの子達がそうなの?」
「さあね。でもここ、何であの子達しか居ないんだろうね」
その言葉に9歳の私は俯き、ビニールハウスの道を歩いた。
「…戻れるの?」
「戻れるよ。だって私が来たんだもの」
私は不敵に笑ってみせた。道を抜け、県道を渡った先には実家。9歳の私は、県道を前に立ち止まった。
「また、あの子達居たら?」
「大丈夫、何ならここで待ってるから、こっそり行って来なよ」
私は笑顔で送り出す。9歳の私は不安そうな顔で実家へと向かって行った。門をくぐって数秒後、9歳の私は急いで門まで駆けて来て、腕で大きく『〇』を作り笑顔になった。
(任務完了、だね)
私は笑顔で手を振り返した。
私は9歳の夏、半日だけ神隠しに遭った。
見知った自宅や町内なのに誰も居らず、自宅の電話もどこにも繋がらない、謎の世界に迷い込んだ。そこで逢ったのが、同世代の見知らぬ少年2人だった。
私は不安を拭い去るように、少年2人と遊びまわった。遊びに集中していると、現実逃避できた。ふと、このままでいいのかと思った時に、『謎のおばさん』に逢った。
彼女は母に雰囲気が似ているが知らない人で、母が絶対履かないだろう高いヒールのサンダルを履いていた。
そこから覗く足の爪に、やはり母なら絶対選ばない様なワインレッドのマニキュアが塗られていたのを、強烈に覚えていた。
私は謎のおばさんについて行き、元の世界に帰還出来た。
(あれは、私だったんだね)
私は9歳の私が居なくなっても、その場に立っていた。覚醒を待つ。
(どう?オシャレなおばさんになれたでしょ?)
視界が、白んでいく。
(これは夢だ。なぜなら、現在この場所は住宅街になってて、存在しない)
道を抜けた先。県道を渡った向こうは私の実家なのだが、様子が少し違っていた。
(門の隣に柊の木がある。そして塀じゃなく柵ってことは…、これは小学生の時の実家だ)
私は少し眺めた後、敷地へ入って行った。実家の車庫には、母が当時乗っていた紺の軽ワゴンは無く、自転車置き場には私の赤い自転車や弟の三輪車。
(成長するに従って乗らなくなって、全部捨てたっけ。…そう言えば)
私はある事を思い出し立ち止まり、自分の足元を見る。そして、家の前にある畑を見た。
「あった?」
9歳の私が声をかけると、少年2人は首を振った。
「無えや」
「あっちにあるんじゃないか?」
私達は畑に入り込んでしまった、ゴムボールを探していた。
「ごめん、喉乾いたから、いったん水飲んでくる」
捜索を離脱した9歳の私は、車庫の脇に居た40歳の私を見て、立ち竦む。私は言った。
「都子、元の世界に戻ろう」
私は9歳の私を伴うと、無言で実家の敷地を出た。9歳の私は、少年の居た方を振り返りつつ言った。
「でも、あの子達に何も言ってない。言ってからの方がいいんじゃ?」
「お父さんから聞かなかった?『昔、池で死んだ友達が居た』って」
子供の頃、ザリガニを釣りに近所の調整池に行こうとしたら、父から注意を受けた。父が小学生の時、同級生2名がそこで亡くなったという。
9歳の私は言った。
「あの子達がそうなの?」
「さあね。でもここ、何であの子達しか居ないんだろうね」
その言葉に9歳の私は俯き、ビニールハウスの道を歩いた。
「…戻れるの?」
「戻れるよ。だって私が来たんだもの」
私は不敵に笑ってみせた。道を抜け、県道を渡った先には実家。9歳の私は、県道を前に立ち止まった。
「また、あの子達居たら?」
「大丈夫、何ならここで待ってるから、こっそり行って来なよ」
私は笑顔で送り出す。9歳の私は不安そうな顔で実家へと向かって行った。門をくぐって数秒後、9歳の私は急いで門まで駆けて来て、腕で大きく『〇』を作り笑顔になった。
(任務完了、だね)
私は笑顔で手を振り返した。
私は9歳の夏、半日だけ神隠しに遭った。
見知った自宅や町内なのに誰も居らず、自宅の電話もどこにも繋がらない、謎の世界に迷い込んだ。そこで逢ったのが、同世代の見知らぬ少年2人だった。
私は不安を拭い去るように、少年2人と遊びまわった。遊びに集中していると、現実逃避できた。ふと、このままでいいのかと思った時に、『謎のおばさん』に逢った。
彼女は母に雰囲気が似ているが知らない人で、母が絶対履かないだろう高いヒールのサンダルを履いていた。
そこから覗く足の爪に、やはり母なら絶対選ばない様なワインレッドのマニキュアが塗られていたのを、強烈に覚えていた。
私は謎のおばさんについて行き、元の世界に帰還出来た。
(あれは、私だったんだね)
私は9歳の私が居なくなっても、その場に立っていた。覚醒を待つ。
(どう?オシャレなおばさんになれたでしょ?)
視界が、白んでいく。
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