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死に至る ※特定の病による皮膚症状表現あり
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私は、ある小隊の隊長となっていた。
ある時、この国の首都を謎の病が襲った。病に罹った人間は理性を失くし、衝動的に暴れる『ゾンビ』と化した。
ゾンビ化した人間に襲われた人間は、傷口から病に感染し、新たなゾンビとなった。
ゾンビは、首都から陸続きになっている場所へ次々移動し、あっという間に増えた。私は民間の義勇軍として、生存者の捜索とゾンビの駆除活動を担っていた。
(あれから3年、かぁ…)
夕闇迫る中、野営を設営しながら私は思った。
(今では、生存者を見つけ出す事もほとんど無い。そして、ゾンビを見つける事すらもほぼ無くなった。『完全鎮圧』が近いのだろうけど、むしろこの状態は『虚無』としか言えない)
奇しくも今回の野営地は、私の生まれ故郷だ。
(バラバラに離島へ疎開した、家族や友達はどうしてるだろう。そして、ゾンビ化して駆除されてしまったあの子やみんな…。花も手向けられずにどこに埋められているんだろう…)
物思いにふける私の思考は、言い争いの声で途切れた。
「いい加減認めろ! お前はキャリア患者じゃないか!」
「違う!!」
騒いでいるのは、部下である女2人。私は仲裁に入った。
「おい、何を争っている!」
ルマは鼻息荒く私に申し立てた。
「確認してください! リセの脚にゾンビの印が…」
弁解の余地もなく、別の女性隊員の手でズボンが捲られ、赤いヒョウ柄の様な湿疹が右の膝裏に見えた。目を細めて確認する私に、リセは泣きそうな顔で訴えた。
「違います! 違うんです…!」
青い顔をしたジュンゴが呟く。
「どう見ても『ゾンビ斑』だろ…? お前、いつから?」
ゾンビ病は、感染してすぐに症状が出る訳では無い。入り込んだ菌が皮膚に『ゾンビ斑』と言う模様を作り、徐々に全身へ広がり脳に達したら完全な『ゾンビ』となる。
ゾンビ化まで進んでない感染者(キャリア患者)の体液や唾の飛沫でも、感染力は十分にあるのだ。
首を振ってリセは叫ぶ。
「違うの!」
ジュンゴは唇を震わせた。
「だって…、俺達、何回『シタ』と…?」
(何で任務中にいちゃついてんだよ)
聞き捨てならぬ発言にムッとする私だが、ルマは持っていた銃をリセに向ける。
「最低だね、あんた。キャリアを黙って入隊して、部隊の皆を道連れにする気だったんだ?」
「そうじゃない! ともかくこれはゾンビ斑じゃない!」
黙っていた私は口を開く。
「ルマ、銃を降ろせ。これはゾンビ斑じゃない」
「じゃあ何なんですか?」
「これは」
至近距離の銃声が私の声を掻き消した。銃弾が腹部に命中し、リセは崩れ落ちる。撃ったのはジュンゴだ。
「…お前、ヒロトと浮気したんだな。あいつと同じ性〇じゃねえか」
吐き捨てるジュンゴに、私はギリッと歯を食いしばる。
(何でだよ…)
隊員達が立ち尽くすなか、私はジュンゴを睨みつけ怒鳴る。
「貴様、なぜ殺した! うつった性〇なんて、薬を飲めば治るだろ⁈」
ある時、この国の首都を謎の病が襲った。病に罹った人間は理性を失くし、衝動的に暴れる『ゾンビ』と化した。
ゾンビ化した人間に襲われた人間は、傷口から病に感染し、新たなゾンビとなった。
ゾンビは、首都から陸続きになっている場所へ次々移動し、あっという間に増えた。私は民間の義勇軍として、生存者の捜索とゾンビの駆除活動を担っていた。
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夕闇迫る中、野営を設営しながら私は思った。
(今では、生存者を見つけ出す事もほとんど無い。そして、ゾンビを見つける事すらもほぼ無くなった。『完全鎮圧』が近いのだろうけど、むしろこの状態は『虚無』としか言えない)
奇しくも今回の野営地は、私の生まれ故郷だ。
(バラバラに離島へ疎開した、家族や友達はどうしてるだろう。そして、ゾンビ化して駆除されてしまったあの子やみんな…。花も手向けられずにどこに埋められているんだろう…)
物思いにふける私の思考は、言い争いの声で途切れた。
「いい加減認めろ! お前はキャリア患者じゃないか!」
「違う!!」
騒いでいるのは、部下である女2人。私は仲裁に入った。
「おい、何を争っている!」
ルマは鼻息荒く私に申し立てた。
「確認してください! リセの脚にゾンビの印が…」
弁解の余地もなく、別の女性隊員の手でズボンが捲られ、赤いヒョウ柄の様な湿疹が右の膝裏に見えた。目を細めて確認する私に、リセは泣きそうな顔で訴えた。
「違います! 違うんです…!」
青い顔をしたジュンゴが呟く。
「どう見ても『ゾンビ斑』だろ…? お前、いつから?」
ゾンビ病は、感染してすぐに症状が出る訳では無い。入り込んだ菌が皮膚に『ゾンビ斑』と言う模様を作り、徐々に全身へ広がり脳に達したら完全な『ゾンビ』となる。
ゾンビ化まで進んでない感染者(キャリア患者)の体液や唾の飛沫でも、感染力は十分にあるのだ。
首を振ってリセは叫ぶ。
「違うの!」
ジュンゴは唇を震わせた。
「だって…、俺達、何回『シタ』と…?」
(何で任務中にいちゃついてんだよ)
聞き捨てならぬ発言にムッとする私だが、ルマは持っていた銃をリセに向ける。
「最低だね、あんた。キャリアを黙って入隊して、部隊の皆を道連れにする気だったんだ?」
「そうじゃない! ともかくこれはゾンビ斑じゃない!」
黙っていた私は口を開く。
「ルマ、銃を降ろせ。これはゾンビ斑じゃない」
「じゃあ何なんですか?」
「これは」
至近距離の銃声が私の声を掻き消した。銃弾が腹部に命中し、リセは崩れ落ちる。撃ったのはジュンゴだ。
「…お前、ヒロトと浮気したんだな。あいつと同じ性〇じゃねえか」
吐き捨てるジュンゴに、私はギリッと歯を食いしばる。
(何でだよ…)
隊員達が立ち尽くすなか、私はジュンゴを睨みつけ怒鳴る。
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