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階段 ※流産表現あり

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 私は旧知の仲の友人、タマキと飲んでいた。


「ねえ、これ見て」

 タマキはそう言い、自分のスマホのとある画像を見せてきた。

「これ何? 天井裏? 何か梯子っぽいの見えるね」

 画像は黒い木の板に囲まれた空間に、ぽっかりと四角い穴が開いていて、その下にも四角い穴があり、下の部屋が見て分かる。
 穴と穴の間の板の上に、風化しかけたどす黒い縄梯子が映り込んでいた。

「そう。実家の2階の畳外して、その下の床板も外して、その真下の1階の天井部分も外してみた。
そしたらこうなっていた」

「何でこんな事したの?」

「それがさ…」


 タマキが説明を始めると、私の眼前にタマキの体験した映像が広がった。

『だからさ、覚えてない?うちのあの階段以外に、もう1つ2階に行くルートがあったって話』

 実家へ帰省した時なのか、目の前にはタマキの両親と彼女の弟が寛いでいる。父が答える。

『分かんねえな。大体あったなら、この家で生まれ育った俺が知らないのはおかしいだろ?』

 子供の頃から何度も遊びに行ったタマキの家は、昭和初期に建てられたリアル古民家だった。
 増改築を幾度かしていて、迷路の様に部屋や通路があり、楽しかったのを覚えている。

 タマキの母も答える。

『うちの爺ちゃん婆ちゃんが生きてたらねぇ。だいたい、その話誰から聞いたの?』

『それが覚えてないんだよね。聞いたの子供の頃かなぁ?だからおぼろげなのかな』

 タマキの弟が尋ねる。

『どういう話?それって』

『えっとね、階段とは別で上の部屋に行ける所があったんだけど、妊婦さん…、多分爺ちゃんの母親かな?
使った時に落ちるか何かして、流産したから塞いだって話なんだけど』

 タマキのその話を聞いた父親は、手を顎に当てた。

『あれ?何か…、爺ちゃんに生まれなかった兄弟居るって聞いた気が…』

『墓に彫られてない?その人』

 弟が口を挟むと、父親は否定した。

『いやあ、基本的に遺骨無いと戒名彫らないよ。流産する大きさだと、遺骨無いだろうしな…』

 母親が質問する。

『その2階へ行ける場所が何処かは覚えてる?』

『うーん…。でもさ、1階の何処かの天井に痕跡無いかな?』

 家族総出で天井を見てまわると、怪しい箇所があった。よく見ると板の木目が他と違う。
 早速脚立で登り、手で押すと。

『動くよ、ここだけ板が外せる』


 視界が暗転して、目の前には頬杖をつくタマキ。琥珀色の酒を口にして、話を続けた。

「それから真上の部屋の畳も外して、この写真撮ったんだ」

「なるほどねー。この縄梯子は当時のやつか。確かに、こういう梯子を妊婦さんが使うのは危ないよね」

「その話なんだけど…」

 タマキは少々顔を強張らせて、こう言った。

「この縄梯子を束ねたやつと一緒に断り書きがあったの。『妊婦ニコノ出入口ヲ使ウノヲ禁ズル昭和9年1月3日』って。
…この出入口見つけたの、今年の1月3日だったわ」


(もしかして、タマキに情報をもたらしたのは、曾祖母か流産した水子だったのかも…?)

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