漆黒の夜は極彩色の夢を 〜夢日記ショート·ショート~

羽瀬川璃紗

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意識高い系

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 私は夫と出掛ける事になった。 

 夫の友人夫婦から、あるお誘いを受けたのだ。
 彼らが所属しているボランティアサークルで、簡易食堂を営む企画があるらしい。 

 友人夫婦は3日間だけ運営を任されているらしく、是非顔を出して欲しいと言われた。 


 シャッター商店街の小規模空きテナントで、過剰在庫などで発生したロス食材を使用したエコ食堂。
 意識の高い取り組みに賛同するわけでないが、冷やかし半分売り上げへの貢献半分の軽い気持ちで行った、私と夫は会場で度肝を抜かれた。 

 混み合う時間をずらして14時頃に行ったのだが、店内はほぼ全席に汚れた食器が放置されていたのだ。 

「これは? これも取り組みの一環?」 

 思わず夫に言うと、首を振った。 

「まさか。単にうまく回せてないんでしょ」 

(あの夫婦、意識高い者同士の筈なんだけどな…) 


 カオルは大慌てで片づけをしていたが、私達の姿を見た瞬間、いつもの『意識高い系です』的な余裕のある表情でやって来た。

 私は声を掛けた。 

「忙しそうね、大丈夫?」 

「おかげ様で商売繁盛よ。何にする?」 

 余裕綽々で注文を取るカオルだが、飲食勤務経験者の私は内心、気が気でなかった。 

(料理とか接客態度以前に、汚れた食器下げないのはダメじゃん。ほら、いま入口に居た客がこの惨状見て入るのやめたし) 


 カオルが注文の品を調理場の夫:ジンに伝えに行くと、辺りを見た夫は小声で呟く。 

「いやぁ…。これはちょっと」 

「これさあ、ジンさんがホールと片付けやったらいいんじゃ?」 

「でもカオルさんが調理場入っても、仕上がり遅そうっていうか…」 

 私達はこの後も用事があるのだが、待てど暮らせど注文の品はなかなかやって来ない。 


(カオルってば、床掃除なんか今してないで、食器下げないと!ほら、皿を重ねてるからまた倒してるし。ジンさんもそんな狭いスペースで調理してるから、1品ずつしか作れないんだってば!気づいてくれ…) 


 ようやく品は届いたが、時間が押している。
 カオルによる料理の説明を聞き流しつつ、私と夫は料理を口いっぱいにかき込んだ。 

 正直、味がよく分からないがやむを得ない。セルフ片付けではないが、食器をカウンターへ持っていくと、他に1組だけ居た客も、我々に倣って片づけた。 


「また行く? 呼ばれたら」 

 店を出て私が夫に聞くと。 

「呼ばれないっしょ? サークル側もあの夫婦にはもう頼まないじゃん」 

(まあ、意識高い系の人が必ずしも要領や段取りもすごく出来るって訳でもないからね…)

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