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成敗 ※犯罪被害表現あり
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私は仕事をしていた。
閉店2時間前、店番を男子大学生のユキトに任せ、バックヤードで発注作業をしていると、ユキトが声を掛けてきた。
「沢木さん、何かエドくんみたいな人がさっき居たんですけど…」
「え?」
20歳のフリーターのエドは、2週間前までこの店に勤務していた男だ。
だが不真面目な勤務態度と、友人に不法に商品を譲渡するのが問題となり、解雇されていた。
「どこ?」
「何か俺が居るの見て、どっか行っちゃいました」
先週、系列他店舗で、閉店直後にレジ金の盗難事件があった。
その店舗はエドがよくヘルプで入っていて、エドと仲の悪い社員が閉店作業(金銭管理)をおこなった日でもあった。
(この店で店長の次にエドを非難していたのは私だ。しかも今日は店長が非番で私が閉店作業。これはもしや狙ってるかも…)
胸騒ぎと確信めいたものがあった私は、携帯で店長へ電話をかけた。
「もしもし、エドが店の近くに来てるようです」
『本当か?』
「いかがしましょう?」
『防カメの電源を切らずに撮影モードのまま、通常通り閉店作業をしてくれ。こっちもそちらに向かう』
「分かりました」
店長はユキトへも電話を代わり、手筈を説明する。
時間になり、私達は普段通りの閉店作業をして消灯した。
「行こう」
通常通りに店舗裏口から出て、施錠。裏口から死角になる植え込みに2人で身を潜めていると、店長から着信。
『裏口、奴がロックを解除してる。…中に入った。そっちは裏口から入ってくれ』
「分かりました」
2人で裏口を蹴るように開け、突入。エドは私達の姿を見ると、慌てて逆側にある店の出入り口の方へ駆け出した。
「あらあら、何で逃げるのー?」
暗闇の中、物に躓いたのか何かがひっくり返る音が響く。
(閉店後に忍び込む手口のくせに灯り持ってないんかい!)
心の中でツッコミつつ後を追うと、ロックされている店舗入口ではなく、客席側の窓を開け外に出ようとする人影が。
私は咄嗟にカウンターに乗り、無茶な態勢で奴の髪の毛ごとフードを鷲掴みした。
「何持ってんや! うちの店のレジ金じゃねえんか?!」
驚くほど柄の悪い口調で私は罵った。店長が窓の外から、半開きの窓を開けて声を上げる。
「諦めろ! 通報したぞ!!」
奴はポケットに入れてた金を捨て、掴んだ髪の毛ごとフードを自分で引きちぎり、逃げようとした。
すんでのとこでユキトが引き倒す。
散らばる大量の抜け毛と破れたフードを捨てて、私も足を抑え込む。
(頭ハゲても逃げるつもりかよ、馬鹿じゃん)
閉店2時間前、店番を男子大学生のユキトに任せ、バックヤードで発注作業をしていると、ユキトが声を掛けてきた。
「沢木さん、何かエドくんみたいな人がさっき居たんですけど…」
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20歳のフリーターのエドは、2週間前までこの店に勤務していた男だ。
だが不真面目な勤務態度と、友人に不法に商品を譲渡するのが問題となり、解雇されていた。
「どこ?」
「何か俺が居るの見て、どっか行っちゃいました」
先週、系列他店舗で、閉店直後にレジ金の盗難事件があった。
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(この店で店長の次にエドを非難していたのは私だ。しかも今日は店長が非番で私が閉店作業。これはもしや狙ってるかも…)
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「もしもし、エドが店の近くに来てるようです」
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「いかがしましょう?」
『防カメの電源を切らずに撮影モードのまま、通常通り閉店作業をしてくれ。こっちもそちらに向かう』
「分かりました」
店長はユキトへも電話を代わり、手筈を説明する。
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『裏口、奴がロックを解除してる。…中に入った。そっちは裏口から入ってくれ』
「分かりました」
2人で裏口を蹴るように開け、突入。エドは私達の姿を見ると、慌てて逆側にある店の出入り口の方へ駆け出した。
「あらあら、何で逃げるのー?」
暗闇の中、物に躓いたのか何かがひっくり返る音が響く。
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私は咄嗟にカウンターに乗り、無茶な態勢で奴の髪の毛ごとフードを鷲掴みした。
「何持ってんや! うちの店のレジ金じゃねえんか?!」
驚くほど柄の悪い口調で私は罵った。店長が窓の外から、半開きの窓を開けて声を上げる。
「諦めろ! 通報したぞ!!」
奴はポケットに入れてた金を捨て、掴んだ髪の毛ごとフードを自分で引きちぎり、逃げようとした。
すんでのとこでユキトが引き倒す。
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(頭ハゲても逃げるつもりかよ、馬鹿じゃん)
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