57 / 118
シンデレラ
しおりを挟む
私はある劇団の候補生になっていた。練習はハードだがやりがいがある。
迎えた昇格試験。会場は舞台が併設された、古びた4階建ての元ホテル。
昭和初期は保養所として使われていて、劇団の前身はそこで演芸を披露する集団だったという。
最初の試験は自由演技。四方を客席に囲まれた(客は入ってない。居るのはこの道何十年のベテラン劇団員や審査官)、プロレスリングの様な舞台。
「来たよ『デスマッチステージ』だ…」
他の候補生がビビって青ざめるなか、私は大興奮。
(これが噂の聖地!!すごい!マジで四方に客席あるのね!)
噂では半数の候補生はここで脱落するという。360度審査官から査定される緊張で、潰れるとか。
クジ引きの結果、私が1番手。普通ならギョッとするのに、私は喜んだ。
(よかった!いま丁度聖地を見て興奮してるとこだから、緊張する前に勢いで行ける!!)
私は自分の高揚感が途切れぬ前に、とびきりの笑顔でダンスを始めた。
『ボロを着て家事を押し付けられても、合間に鳥や小動物と遊ぶシンデレラ』を表現したアカペラとダンスは、まぐれで意外に高評価。
候補生達の1次試験終了後、2次試験用の小道具を配布された。
美しい装飾のある模造ナイフと香水瓶、どちらかを用いた寸劇を半日で考え発表しろとのこと。私は香水瓶を選んだ。
ちなみに、昇格試験は合格できなければ毎年受けることになる。候補生の最年長は50代半ばの女性。『万年候補生』のイクエは、新人候補生いびりで悪名高い。
(あの人、何年連続で落ちてるんだろう…?)
同期の候補生仲間から『無断外出』に誘われる。
見つかると面倒なので、断って彼らを眺めてると、イクエが飛び出して騒ぐ。
「あー!! 勝手に出かけてるんですけど! いいんですかー?」
(言い方、小学生かよ…)
廊下に並べられ上層部から厳重注意を受ける候補生達を尻目に、イクエは口を添える。
「注意勧告だけだなんて温いですよ、連帯責任で彼らと同期の人間全員の資格を抹消して下さい!」
彼女は私をチラと見て言った。
(1次で高評価の私を潰しにかかってるのか。うわ、引くわ)
上層部はイクエに言った。
「必要があるかどうかを決めるのは、私達だ。決定権は君に無い」
自分より年下の上層部に一喝され、イクエの表情が険しくなる。急に走り出した彼女はどこに行ったのかと思うと…。
候補生の部屋に乱入し、配布された小道具を破壊し始めた。
(おばさんご乱心かい!)
私はどさくさに紛れて、何とか香水瓶を死守するが。イクエは私をロックオンして追ってくる。
(何で私なんだよ…)
私は廊下を全力疾走する羽目になった。シンデレラも、こうやって階段を駆けて行ったのだろうか?
迎えた昇格試験。会場は舞台が併設された、古びた4階建ての元ホテル。
昭和初期は保養所として使われていて、劇団の前身はそこで演芸を披露する集団だったという。
最初の試験は自由演技。四方を客席に囲まれた(客は入ってない。居るのはこの道何十年のベテラン劇団員や審査官)、プロレスリングの様な舞台。
「来たよ『デスマッチステージ』だ…」
他の候補生がビビって青ざめるなか、私は大興奮。
(これが噂の聖地!!すごい!マジで四方に客席あるのね!)
噂では半数の候補生はここで脱落するという。360度審査官から査定される緊張で、潰れるとか。
クジ引きの結果、私が1番手。普通ならギョッとするのに、私は喜んだ。
(よかった!いま丁度聖地を見て興奮してるとこだから、緊張する前に勢いで行ける!!)
私は自分の高揚感が途切れぬ前に、とびきりの笑顔でダンスを始めた。
『ボロを着て家事を押し付けられても、合間に鳥や小動物と遊ぶシンデレラ』を表現したアカペラとダンスは、まぐれで意外に高評価。
候補生達の1次試験終了後、2次試験用の小道具を配布された。
美しい装飾のある模造ナイフと香水瓶、どちらかを用いた寸劇を半日で考え発表しろとのこと。私は香水瓶を選んだ。
ちなみに、昇格試験は合格できなければ毎年受けることになる。候補生の最年長は50代半ばの女性。『万年候補生』のイクエは、新人候補生いびりで悪名高い。
(あの人、何年連続で落ちてるんだろう…?)
同期の候補生仲間から『無断外出』に誘われる。
見つかると面倒なので、断って彼らを眺めてると、イクエが飛び出して騒ぐ。
「あー!! 勝手に出かけてるんですけど! いいんですかー?」
(言い方、小学生かよ…)
廊下に並べられ上層部から厳重注意を受ける候補生達を尻目に、イクエは口を添える。
「注意勧告だけだなんて温いですよ、連帯責任で彼らと同期の人間全員の資格を抹消して下さい!」
彼女は私をチラと見て言った。
(1次で高評価の私を潰しにかかってるのか。うわ、引くわ)
上層部はイクエに言った。
「必要があるかどうかを決めるのは、私達だ。決定権は君に無い」
自分より年下の上層部に一喝され、イクエの表情が険しくなる。急に走り出した彼女はどこに行ったのかと思うと…。
候補生の部屋に乱入し、配布された小道具を破壊し始めた。
(おばさんご乱心かい!)
私はどさくさに紛れて、何とか香水瓶を死守するが。イクエは私をロックオンして追ってくる。
(何で私なんだよ…)
私は廊下を全力疾走する羽目になった。シンデレラも、こうやって階段を駆けて行ったのだろうか?
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鳴瀬ゆず子の社外秘備忘録 〜掃除のおばさんは見た~
羽瀬川璃紗
経済・企業
清掃員:鳴瀬ゆず子(68)が目の当たりにした、色んな職場の裏事情や騒動の記録。
※この物語はフィクションです。登場する団体・人物は架空のものであり、実在のものとは何の関係もありません。
※ストーリー展開上、個人情報や機密の漏洩など就業規則違反の描写がありますが、正当化や教唆の意図はありません。
注意事項はタイトル欄併記。続き物もありますが、基本的に1話完結、どの話からお読み頂いても大丈夫です。
25年3月限定で毎週金曜22時更新予定。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる