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消える ※ホラー表現あり
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私は、曰くつき物件を歩いていた。
ここは、元は小学校だった。児童数減少の為に廃校となり、業者が買い取り、最近よくある『そのままの校舎を生かした商業施設』へと改装した。
そして、ここは『出る』場所なのである。
商業施設の開店当初は、物珍しさも手伝って、連日客足が途切れなかったのだが、最近は翳りが出てきていた。
当初は全て埋まっていたテナントが、現在稼働しているのは3店舗のみ。私は、その内の1つの店に勤めていた。
「そう言えば、おたくのおばあちゃん、この学校の先生だったんだって?」
私と同僚は、閉店後の戸締りをしつつ歩いた。同僚が答える。
「厳密にはね、ひいお祖父ちゃんが初代の校長。この学校を作るのに携わった」
「そうなんだ! すごーい」
「…本当はね、ここは何かを建ててはいけないんだって」
「どういう事?」
「土地が悪い」
渡り廊下を通り、ふと見た空き店舗。片側が屋外になっている廊下に、双子用ベビーカーが、照明の下で揺れている。
「何あれ。何で勝手に動いてるの?」
「余計な物見ないで! あの区画通電してないから、明かりは点かない。『出てる』のよ!」
「え?」
「急ぐよ!」
よせばいいのに再度ベビーカーを見ると、子供をあやすように揺れていた動きが止まり、電灯が瞬きだす。私と同僚は駆けだすと、廊下を抜けて、戸のカギをかけた。
同僚は言った。
「ここの噂知ってるよね?」
「うん。『出る』って」
「正しくは違うね。危ない道が通ってるから、何を建てても衰退するのよ。それでも小学校はまだいい方だったわ。若くてエネルギッシュな力が毎日やって来るでしょ?」
同僚は窓越しに後ろを見つつ、言う。
「危ない道は力を吸うの。商業施設になった後も、力を求め続けた。客足に翳りの出て来た店舗から、具合悪くなる人が増えたと思わない?」
(そう言えば、あそこもそっちのテナントも、店長さんとかが体調崩して撤退していったっけ)
「危ない道って、どこにあるの?」
「あそこよ。丁度ベビーカーが通ろうとしている」
言われて私も見ると、ある地点に動く無人のベビーカーがやって来ると、いきなり動きが止まった。同僚は言った。
「ごらん。吸われたわ。幽霊すら吸われてしまうんだよ」
「何それ。私達、こんなとこ来てて平気なの?」
「…平気な訳ないでしょ。沢木も早く辞めた方がいいよ」
(ここ、『出る』んじゃなくて『消える』んじゃ…?)
ここは、元は小学校だった。児童数減少の為に廃校となり、業者が買い取り、最近よくある『そのままの校舎を生かした商業施設』へと改装した。
そして、ここは『出る』場所なのである。
商業施設の開店当初は、物珍しさも手伝って、連日客足が途切れなかったのだが、最近は翳りが出てきていた。
当初は全て埋まっていたテナントが、現在稼働しているのは3店舗のみ。私は、その内の1つの店に勤めていた。
「そう言えば、おたくのおばあちゃん、この学校の先生だったんだって?」
私と同僚は、閉店後の戸締りをしつつ歩いた。同僚が答える。
「厳密にはね、ひいお祖父ちゃんが初代の校長。この学校を作るのに携わった」
「そうなんだ! すごーい」
「…本当はね、ここは何かを建ててはいけないんだって」
「どういう事?」
「土地が悪い」
渡り廊下を通り、ふと見た空き店舗。片側が屋外になっている廊下に、双子用ベビーカーが、照明の下で揺れている。
「何あれ。何で勝手に動いてるの?」
「余計な物見ないで! あの区画通電してないから、明かりは点かない。『出てる』のよ!」
「え?」
「急ぐよ!」
よせばいいのに再度ベビーカーを見ると、子供をあやすように揺れていた動きが止まり、電灯が瞬きだす。私と同僚は駆けだすと、廊下を抜けて、戸のカギをかけた。
同僚は言った。
「ここの噂知ってるよね?」
「うん。『出る』って」
「正しくは違うね。危ない道が通ってるから、何を建てても衰退するのよ。それでも小学校はまだいい方だったわ。若くてエネルギッシュな力が毎日やって来るでしょ?」
同僚は窓越しに後ろを見つつ、言う。
「危ない道は力を吸うの。商業施設になった後も、力を求め続けた。客足に翳りの出て来た店舗から、具合悪くなる人が増えたと思わない?」
(そう言えば、あそこもそっちのテナントも、店長さんとかが体調崩して撤退していったっけ)
「危ない道って、どこにあるの?」
「あそこよ。丁度ベビーカーが通ろうとしている」
言われて私も見ると、ある地点に動く無人のベビーカーがやって来ると、いきなり動きが止まった。同僚は言った。
「ごらん。吸われたわ。幽霊すら吸われてしまうんだよ」
「何それ。私達、こんなとこ来てて平気なの?」
「…平気な訳ないでしょ。沢木も早く辞めた方がいいよ」
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