漆黒の夜は極彩色の夢を 〜夢日記ショート·ショート~

羽瀬川璃紗

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王子と姫

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 私は、あるテーマパークに行く事になった。 

 そこは、新しいイベントが話題となっていた。従来、閉演20分前にキャラクターやダンサー達のパレードが行われていたが、雨天中止だった。
 新しいイベントは、雨の憂鬱や寒さの心配の無い屋内でやる仕様になったのだ。 

 来場者はレストランや店舗内のスペースで待機。するとそこに『王子』に扮した男性ダンサーや人気キャラクターがやって来て、ダンスをする。
 最初はキャラクターだけだが、途中から『王子』が来場者の中から希望者を選出し、エスコートして一緒に踊ってくれるという参加型イベントなのだ。 

 だが、このイベントは少々曲者である。どうやら『王子』の選出対象には厳しい基準があるらしい。 

 まず、カップル客の『彼女』とは踊らない。相手の男性に、不快な思いをさせるからだ。
 同様に、家族と一緒の『母親』とも踊らない。やはり夫や子供に、他の男と楽しそうに踊る母の姿を見せない配慮をするため。
 基本的に対象は『女の子供』、『女友達同士や単独で来たパートナーの居ない女性』に限られてくるのだ。 

 そしてネットやSNSでは、『王子と踊る女性』の外見が専ら笑いのタネとなっている。
 『このダイナミックボディに釣り合う男性は、王子以外見つかりませんでした』『王子様が40代〇女に一夜限りの素敵な夢をプレゼント!』など、一部で酷い書き込みをする輩が居るのだ。 

 そしてこのテーマパークの新たな都市伝説が完成。『某テーマパークの王子タンゴで、選ばれなければ結婚出来る』…。 


 そして今日この雨の日に、自分はたまたまここに来てしまい、このイベントに対峙する羽目になってしまった。 

 係員の誘導を受けつつ、私は必死にネットのカキコミを思い出し、条件を満たそうと辺りを見渡していた。それは、『選ばれない方法』だった。 

 

①子供優先なので、子供や修学旅行生の多い時期に行きましょう。 

②奥の方など、王子様から遠い位置に居ましょう。 

③①や②の条件をクリア出来なかった場合は、超絶ブスの隣か家族連れの傍にひっそり居ましょう。 

 

 よりによって今日も明日も平日なので、小学生の家族連れは見当たらない。修学旅行生もなく人が少ないので、観覧スペースの奥へ行けない。
 かといって、『超絶』に残念な外見の女性の近くに行くのは気が引ける(③を知ってる人だったら尚更無礼だ)。 

 私は何とか見つけた、3歳児くらいの子を連れた夫婦の後ろに立った。 

(王子様、私はこの子の叔母ですよ) 

 私の心配は杞憂に終わり、今宵もおめかしした妙齢の女性やふくよか過ぎる女性らが選ばれ、楽しいダンスタイムとなった。


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