漆黒の夜は極彩色の夢を 〜夢日記ショート·ショート～

カウントダウン

　私はホラー映画を見ていた。怨霊との戦いを描いた映画だった。 

　ある大学の『心霊研究サークル』が、ある都市伝説を探る。すると探ったメンバーが次々と怨霊に襲われ、殺される。 

(あー、そういう系ですか) 

　最初の1人は原因不明のアクシデントで死亡。2人目が死亡時に、『あの都市伝説が原因では？』となる。 

(よくある展開だな) 

　3人目は悪あがきの末、怨霊が原因である事を突き止め死亡する。4人目と5人目はカップルだった。 

(よくある残し方だな。最後くっつくか、男が犠牲になって女を助けるかな…？) 

　カップルは、3人目が死ぬ前にある程度残してくれていたデータから、倒す方法を突き止めていた。さあ、2人は怨霊に勝てるのか。 

(3人目がいい人過ぎて、逆にこのカップルムカつくわ。据え膳上げ膳かよ) 

　激闘の果てに、2人は怨霊を倒す事が出来た。だが、怨霊は消え去る寸前に、ある言葉を口にする。 

『これで終わりだと思うな！18分後にお前らを不幸が襲うだろう…』 

　思わず私は手元の時計を見る。午後6時35分だった。 

(いやいや、何やってんの。演出じゃん) 

　カップルはその場で18分待った。何も起こらない。勝った。2人は喜んで抱き合い、映画はそこでスタッフロールが始まった。 

(おいおい、何だよこの終わり…) 

　スタッフロールの奥では、映画の映像が引き続き流れている。2人はどっちかの実家に行き、家族に恋人を紹介していた。寿司を取り、他にも美味しそうな手料理が振舞われ、楽しい夕食会が延々と流れている。 

(まさか最後の最後に結婚式じゃないよね？) 

　スタッフロールが終わる頃、右下にタイマー表示が現れた。タイマーは『1．00』から『0．1』ずつ数が減る。 

(1分前？) 

　残り10秒を切った頃、訪問者があったらしい。母親が席を立ち、玄関へと向かって行く。 

　残り1秒で停電した。カップルと家族達が顔を見合わせ、立ち上がろうとする。その時、『不幸』が2人を襲った。 

(おおー、バッドエンド…) 

　何気なく時計を見ると、午後6時53分。 

　思わず、私は笑ってしまった。