漆黒の夜は極彩色の夢を 〜夢日記ショート·ショート~

羽瀬川璃紗

文字の大きさ
上 下
32 / 117

住民の記憶

しおりを挟む
 言うや、ディオメデスは、先ほどメロペが触れたリィウスの太腿の内側を撫であげた。どこかで、これは俺のものだ、という意思表示の気持ちもあったかもしれない。
 正直、メロペがリィウスの身体に触れた瞬間、ディオメデスはかなり不快に思ったのだ。
「まぁ、今夜はまず俺にまかせておけ。俺が一晩かけてしっかりと仕込んでやる。おまえたちが楽しむのはそれからだ」
 あまりにも屈辱的な暴言に、リィウスは耳朶まで恥辱に燃やして、ディオメデスを睨みつけた。いつもは怜悧な青い瞳は、今は火を吹きそうに燃えている。
「出ていけ! 下種ども!」
 その言葉はメロペとアウルスに向けたものだった。さすがに客となるディオメデスを拒絶することはできない身だとリィウスも身に染みているのだろうが、メロペたちにたいしては別だった。
「わ、私を買ったのはディオメデスだろう? おまえたちがここにいる権利はないはず!」
「いーや、実はそうじゃない」
 身を起こしてわめきたてるリィウスの上半身を軽く抱きしめ、ディオメデスはなだめるように告げた。
「ちゃんと、それだけの金はタルペイアに払っているさ。こいつらはここにいて、花嫁が純潔かどうか見届ける証人になるんだ」
 リィウスは怒りに真っ赤になり、次に恐怖にか真っ青になった。薄紅のたゆたうようなほのかな光のなかで感情をたぎらすリィウスからは、以前の取り澄ました冷たい雰囲気が消え、感情むきだしで、ディオメデスを興奮させた。
「こ、こんなこと……許されていいわけがない! あ、あんまりだ!」
 ディオメデスは吹き出したいのをこらえた。
 可哀想なリィウス。純情なリィウス。世の中に、こんなことはいくらでもあることを、この歳になるまで知らなかったとは。
初心うぶだな……。可愛い」
 小馬鹿にしたように、リィウスのこわばった白い頬に音をたてて接吻する。メロペがのけぞって笑う。
「では、可愛い花嫁の身体をとくと拝見させていただくとするか」
 人並みはずれて聡明なはずのリィウスの、思いもよらぬ幼稚さを見て、ディオメデスは悪い癖だが嗜虐心をたかめられた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...