21 / 121
結婚前の秘密
しおりを挟む私は結婚前にある仕事をしていた。
厳密には、婚活の為にその仕事から転職し、夫と出会った。なので夫もその家族も、こっちの仕事の事は知らない。
久しぶりにギラついた街を歩き、とあるビルへ私は入った。エレベーターから降りた私に『黒服』が近づく。
無理もない。この会員制キャバクラに、パーカー&Gパンという出で立ちの女が来たからだ。(しかも準備中に)
『黒服』だが、服装は何代目何ソウルブラザーズ風な黒地に金のラインが施されたジャージだ。それが私の古い知り合いの趣味である事を、私は知っている。
私は黒服にIDを見せた。
「バックヤードに通して」
スタッフルームは微妙に汚く、休憩中の黒服が『何?あのオバサン』と言いたげに、無遠慮に見てくる。
(汚いなあ。私が居た時はちゃんと掃除させてたのに)
溜息をつく私に、黒服が尋ねる。
「ご用件は?」
「近くまで来たから、こちらの…」
(役職何になったっけか…?)
もちろん、此処で本名を出すのは規則違反だ。
「…今はゼネラルマネージャーかな? キリマロに挨拶しに。今日居る?」
「確認しま…」
その時、奥から30歳前後の長身で黒いスーツの男が、急ぎ足でやって来た。
「姐さん! ご無沙汰しております!!」
「お、久しぶりだね、フブキ」
「おめえらシャキッとしろよ! …連絡頂けたらおもてなししますのに!」
フブキの反応に、私を怪訝な目で見ていた黒服らは慌ててその場に起立する。フブキは私を先導しつつ、詫びた。
「若い衆がすみません」
「いやいや当然だよ。場違いな恰好の上に、アポ無しだったし」
ここへ来るのもしばらくぶりだった。きっと私の顔を知るスタッフもほぼ居ないだろう。通された社長室に、キリマロは居た。
「久しぶりだな、元気そうで何より」
「おかげ様で。ここも繁盛してるようだね」
「子供…、女の子だっけ? 今日は預けて来たんか?」
「うん。近くで車停めて旦那と待ってる。場所バレると心配かけるから、歩いてきた」
「路駐か? 切符すぐ切られるぞ」
「いや、コンビニね。顔だけ見て帰るつもりだから」
(あそこのコンビニも、現役時代には世話になったなあ)
「都子、これ」
キリマロは祝儀を手渡してきた。自分の結婚式でも、見た事の無いグレードの祝儀袋だった。
「ええ⁈ 受け取れないよ、こんな沢山」
「いいって。…俺、いっぱい助けてもらったし」
(懐かしいな。色々あったっけ)
「分かった! ありがとう。おたくも嬉しい事あったら教えてね」
社長室を後にした私に、フブキが黒服1人を連れてやってきた。
「戻る時の警護にと思いまして」
「大丈夫だよ。大袈裟な」
「何かあったら大変ですから。旦那さんもお子さんも居る事ですし」
「いやいや説明がさ」
「道案内させたとかでも…」
「分かったよ、好きにして」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる