漆黒の夜は極彩色の夢を 〜夢日記ショート·ショート~

羽瀬川璃紗

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結婚前の秘密

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 私は結婚前にある仕事をしていた。 

 厳密には、婚活の為にその仕事から転職し、夫と出会った。なので夫もその家族も、こっちの仕事の事は知らない。 


 久しぶりにギラついた街を歩き、とあるビルへ私は入った。エレベーターから降りた私に『黒服』が近づく。 

 無理もない。この会員制キャバクラに、パーカー&Gパンという出で立ちの女が来たからだ。(しかも準備中に) 

 『黒服』だが、服装は何代目何ソウルブラザーズ風な黒地に金のラインが施されたジャージだ。それが私の古い知り合いの趣味である事を、私は知っている。
 私は黒服にIDを見せた。 

「バックヤードに通して」 

 スタッフルームは微妙に汚く、休憩中の黒服が『何?あのオバサン』と言いたげに、無遠慮に見てくる。 

(汚いなあ。私が居た時はちゃんと掃除させてたのに) 

 溜息をつく私に、黒服が尋ねる。 

「ご用件は?」 

「近くまで来たから、こちらの…」 

(役職何になったっけか…?) 
 もちろん、此処で本名を出すのは規則違反だ。

「…今はゼネラルマネージャーかな? キリマロに挨拶しに。今日居る?」 

「確認しま…」 

 その時、奥から30歳前後の長身で黒いスーツの男が、急ぎ足でやって来た。 

「姐さん! ご無沙汰しております!!」 

「お、久しぶりだね、フブキ」 

「おめえらシャキッとしろよ! …連絡頂けたらおもてなししますのに!」 

 フブキの反応に、私を怪訝な目で見ていた黒服らは慌ててその場に起立する。フブキは私を先導しつつ、詫びた。 

「若い衆がすみません」 

「いやいや当然だよ。場違いな恰好の上に、アポ無しだったし」 

 ここへ来るのもしばらくぶりだった。きっと私の顔を知るスタッフもほぼ居ないだろう。通された社長室に、キリマロは居た。 

「久しぶりだな、元気そうで何より」 

「おかげ様で。ここも繁盛してるようだね」 

「子供…、女の子だっけ? 今日は預けて来たんか?」 

「うん。近くで車停めて旦那と待ってる。場所バレると心配かけるから、歩いてきた」 

「路駐か? 切符すぐ切られるぞ」 

「いや、コンビニね。顔だけ見て帰るつもりだから」 
(あそこのコンビニも、現役時代には世話になったなあ) 

「都子、これ」 

 キリマロは祝儀を手渡してきた。自分の結婚式でも、見た事の無いグレードの祝儀袋だった。 

「ええ⁈ 受け取れないよ、こんな沢山」 

「いいって。…俺、いっぱい助けてもらったし」 

(懐かしいな。色々あったっけ) 
「分かった! ありがとう。おたくも嬉しい事あったら教えてね」 

 社長室を後にした私に、フブキが黒服1人を連れてやってきた。 

「戻る時の警護にと思いまして」 

「大丈夫だよ。大袈裟な」 

「何かあったら大変ですから。旦那さんもお子さんも居る事ですし」 

「いやいや説明がさ」 

「道案内させたとかでも…」 

「分かったよ、好きにして」 


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