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飛頭蛮  ※ホラー表現あり

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 私は、夢の中で眠りから目を覚ました。 

 とても明るい月夜だった。私はふわふわ浮かび、雲一つ無い夜空と、月明かりの家々を眺めていた。 

(夢だから飛べるのか。天気もいいし最高の夜間飛行日和だな) 

 普段見ないものを見ようと思った私は、自宅裏手に回り、門の脇の電信柱のてっぺんへ上った。
 高い。自宅の2階がすぐ目の前だ。カーテンが閉まってはいるが。 

(ここからだと、部屋で着替えてるの丸見えだな。まあ、こんなとこよじ登る人、居ないけど) 

 そこから降りた時、丁度道路を猛スピードでトラックが通りかかった。少し道路側にせり出しすぎていた私は、慌ててかわす。 

 フロントガラス越しに、驚き顔の運転手と目が合う。接触は免れたが、恐怖を覚える程の風圧を感じた。 


 気を取り直し、私はふわふわと自宅から200メートル先にある集会所へ向かった。
 小学生時代は子供会で何度も来たが、大人になってからは1度も無い。 

 懐かしくなり、入口へ行こうとしたが、行けなかった。何かに引っかかっている。振り返ったが、何も見えない。断念した。 

(これ以上近づけないけど、雨どいに落ち葉が溜まってるのだけ見えるな。そうだ、上から見よう) 

 集会所の1軒手前の民家の、2階部分と同じ高さになってみる。そう言えばこの家の2階からは、向かいにある近所の寺と墓地が丸見えだ。家人は怖くないのだろうか?
 何となく、その2階の窓ガラスへ近づいてみる。 


 月明かりに照らされた自分が、鏡の様に反射していた。勝手知ったる自分の顔。ところがある事に気付いた。 

(あれ?顔、映っているのに、身体は映って無くない?) 

 顔は映ってるのに、自分の顎から下の部分は無かった。手を動かそうとしたが、動いた感覚は無いし、どこにも見当たらない。 

(ちょっと待って?幽体離脱の夢だと思っていたけど、そう言えばあの運転手、私の姿見ていたよね?こうして鏡にも映っているって事は、コレ実体なの?えぇ⁈) 


 そう思った瞬間、私は後ろ向きに何かに引っ張られた。まるで、伸びたゴムが元に戻るかのようだった。 

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