漆黒の夜は極彩色の夢を 〜夢日記ショート·ショート~

羽瀬川璃紗

文字の大きさ
上 下
16 / 118

プロミス  ※犯罪被害表現あり

しおりを挟む

 私は占い師になって、生計を立てていた。 

 きらびやかなネオン街。
 セレブと夢追い人とマフィアがごちゃ混ぜになったこの街で、頑張ってる者からは少額、成功者からはそれなりに金を貰い、どんな人間に対しても、生きるヒントを尋ねられれば教えてきた。 


 実力を買われ、有力者から専属にならないかと誘われた事もあったが、この街の人間全員に平等に接するのが私のモットーなので、断った。 

 現在の仕事場は貸しビルの一角。常に周りの状況を伺い、有事の発生を常に警戒していた頃に比べれば、屋根も冷暖房も完備で素晴らしい環境である。 

 とは言え、この街の治安が悪い事に変わりはないので、ビルの裏口のセキュリティは強固。
 4桁の暗証番号を入れたが、弾かれた。これは、不定期にある一定のルールに沿って番号が変わるためだ。 

(例のアレか。久しぶりだな、何番だっけ?) 

 しばし考え、番号を打ち直した時だ。人の気配が背後に。私は懐の護身用の警棒を抜いて、後ろも見ずに振り上げた。 

「うっ」 

 軽い手ごたえと同時に人の声。振り向く私が早いか、肩をさすりつつ、見覚えのある袋を手に逃げる若い男。 

(しまった!ひったくられた!!) 

 仕事で着るドレスを盗まれた。後を追おうとしたが、ドアを開けたままには出来ない。とりあえずビルに入り、自分のとこの向かいのテナントへ。 


「マスター! ひったくられた!!」 

 30代の強面の男が、仕込みをしつつ、カウンターの奥で苦笑いする。 

「はあ? 何年ココで暮らしてんの?」 

 行くと賄いをくれるビルオーナー兼マスターは、このビル内の皆から兄の様に頼られている。 

「暗証番号入れる時にやられたよー! 最悪!! 今日、『ギンガ』来た?」 

 私が顔見知りの情報屋の事を聞くと、マスターは首を振った。 

「まだ来てないけど、いつ来るかは…」 

「だよね。マジどうするかな? ギンガ来てから探してもらうか、もう仕事の準備始めちゃうか」 

(探してもらうにしても、見つかる保証は無いし…) 

 迷う私に、マスターが提案する。 

「占いで、今どこにあるか調べたりは?」 

「いやいや、そういうの出来ないし」 

「盗んだ奴もさ、まさか都子さんのモノ盗ったなんて思ってないだろうよ、きっと」 

「本当だよ! イイ度胸してるよ、あの盗人は」 

 マスターが出してくれた飲み物を口にしつつ、私は同じビルのクラブのママか洋品店に、仕事用の衣装を融通して貰えないか思案する。
 マスターが茶化すように言った。 

「都子さん、盗んだ奴に呪いかけれない? 腹痛くさせたり」 

「出来るもんならやりたいねえ。寧ろそんなの出来たら、あちこちから引っ張りだこだね」 

「カッコイイ! ははは!」 

 状況は変わってないが、心は軽くなった。 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...