上 下
7 / 112

王からの授かりもの

しおりを挟む

 私は妹と共に逃げていた。 

 追いかけて来る者が居た。馬に乗り刀を振るその敵は、大陸風の者に見える。馬が苦手そうな道を選び、私は逃げた。
 山の中や茂みの合間を縫って走ったが、追いつかれてしまった。 

 私は咄嗟に武術を用いて追っ手を倒した。数年前、遊びの延長で身につけた棍棒術だった。まさか私の一撃で倒れるとは思わなかったが、次に襲ってくる相手を倒す事に必死だった。 

 私が強いわけではなく、まぐれなのだが、倒した追っ手は7~8人だろうか。もっと奥へ逃げなくてはと妹の手を引いた私は、ある人物に凍り付いた。 

 追っ手達の後から現れたその人物は、立派な身なりに甲冑を付け、手入れされた馬に乗っていた。隣には、従者と思しき者が数人。 

(追っ手のボスだ。やつける所を見られた。きっとタダでは済まされない) 

 戦うか逃げるか。踏んだ場数は比べ物にならないほど、向こうが上に違いない。けれど、妹を守るため、私は構えた。 

 従者が武器を構えたが、『王』はそれを制すると、馬から降り私達の前まで歩いてきた。 

「…倒したのは妹を守る為か?」 

 構えたままジリジリ後ずさると、妹が半泣きで訴える。 

「お姉ちゃん、もうやめて」 

 妹の声に緊張の糸が切れた私は、膝をつくと首を垂れた。『王』は言った。 

「顔を上げろ。女人がこれ程の人数を倒すのは見事なり。お前に褒美を与えよう」 

 顔を上げると、『王』は何かキラキラ輝く物を持っていた。指輪より大きく、ブレスレットより小さいその輪っかを、『王』は私の眉間にのせた。 

 それはとても温かくて、私は瞳を閉じた。 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

始業式で大胆なパンチラを披露する同級生

サドラ
大衆娯楽
今日から高校二年生!…なのだが、「僕」の視界に新しいクラスメイト、「石田さん」の美し過ぎる太ももが入ってきて…

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

二分後にオチがわかるショートストーリー

佐賀かおり
ライト文芸
二分で読めるお話です。全ての話にオチや種明かしがあります。最新話【大売出し】投稿中

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

処理中です...