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128 呪術廻夢
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娘が幼稚園の年少の頃のこと。
道路工事のため、2学期の間だけ暫定的に1ブロック先で園のバスを乗降する事になった。そこは向かいに単身者向けアパートのある、コンビニの駐車場だった。
そのアパートの2階の角に、とある住民が居た。その人は私と同世代ぐらいの女性で、バスの送り迎えの頃になるとある事をするので、何となく覚えていたのだ。
彼女はいつも、行きのバスが来る朝8時頃に洗濯物を干し、帰りのバスが来る15時頃に洗濯物を取り込む。
雨の日は洗濯物を干さないが、8時頃にカーテンを開け、15時頃に換気のためか窓を開け閉めするのである。
(あの人、何の仕事してるんだろう?しかも何故か送迎時間と、あの人の行動のタイミング被るのよね)
私は不思議に思っていた。
9月の終わり、私は夢を見た。
夫から『実は不倫をしている』と打ち明けられた。『はあ?んな訳ないでしょ?』、鼻で笑うと夢は終わった。
「娘の送迎バス乗り場あるじゃん。向かいのアパートの1番端の2階の部屋、女の人住んでるでしょ? あの人変じゃない?」
たまにしか送迎しない夫も、流石に気づいた。私は言った。
「あー、あの人。いつもこっちの送迎に合わせた様に窓開けたりするよね」
「何でだろ?」
娘の声がうるさいかと思い、私語を控えて乗降したが、彼女の『監視?』は止まない。かと言って、彼女は声を掛けてきたり外に出て来る事は、しないのである。
10~11月にかけて、夫は風邪が長引いた。病院に行っても治りきらない。
そして私は『自宅に向かってロケット花火を投げて来る誰かの夢』や、『買い物中に後を付け回される夢』などを続けて見ていた。
(何かありそうだな、これ)
心当たりはあの住民。だが確証は無い。
朝から眩暈のしたある日、娘を送り終えた後、横になった私はこんな夢を見た。
夢の中で、私はトイレの窓を開け外を見ていた。すると、何か巨大なモノが後ろから前へ飛んで行った。モノ、は赤っぽくてヌメヌメした、巨大なミートボールの様だった。
夢から覚めると眩暈は消失、何故か夫の風邪も2日後には治ったのだ。
夫の風邪が治った翌日。バスの時間になっても、彼女は窓を開けずカーテンも閉めたまま。
その後数日、カーテンを閉めたままの日が続き、以降彼女と出くわす事は無くなった。
(そう言えばトイレの窓、彼女のアパートの方を向いてるな)
ふと思ったが、私はホッとした。
11月下旬のある日、私と夫は同日に妙な夢を見た。
第117話にも書いた、『髪の長いトレンチコートの女』が出て来る夢だった。
幼稚園が午前保育のある日。15時前にバス乗り場の所のコンビニへ行った私は、立ち竦んだ。
イートインスペースに彼女が居たのだ。彼女は私に気づかず飲み物片手にスマホを見ているが、そこはバス待ちをする私達がよく見える席だった。
(『やめた』んじゃない、『後ろ』から見てたんだ…)
私は寒気がした。
12月に入り、夫と娘が交互に体調を崩した。私も『歩いていたら矢を打たれる夢』や『手に針が大量に刺さる夢』を見た。
(確証は無い。けど、あの人だ)
モヤモヤしつつ2学期の終わる頃、私はこんな夢を見た。
結婚した友人から『私がお世話している守り神を見せたい』と言われ、家の裏へ案内された。そこには石塔と、カラフルな着物(大陸風の唐衣みたいな)を着た女性が立っていた。
何で生身の人が居るの?と驚いていると、女性から強めの風が吹き、『あなたについていた悪い者は全て祓いました』と言われた。
私は『(やった!)ありがとうございます!!』と感謝し、夢は終わった。
クリスマスの翌日。ゴミ出しに行った私は、彼女のアパート前に救急車が止まっているのを見かけた。
町内会も違うし、その区画に仲の良いご近所さんも居ないので、誰が搬送されたのかは分からなかった。
3学期。工事が終わり乗降場所が戻ると、当然の様に彼女との接点は無くなった。妙な体調不良と悪夢も見なくなり、平穏な日々に戻った。
彼女は何故、私達に固執していたのだろう。場所を変えてでも監視していた理由は、一体何なのか。
念を飛ばすのを止めた彼女だが、何かのきっかけでまた始まらないか、今はそれが気がかりだ。
彼女はまだ、あのアパートで暮らしている。そして私達は、現在もその1ブロック先で生活をしているのである。
道路工事のため、2学期の間だけ暫定的に1ブロック先で園のバスを乗降する事になった。そこは向かいに単身者向けアパートのある、コンビニの駐車場だった。
そのアパートの2階の角に、とある住民が居た。その人は私と同世代ぐらいの女性で、バスの送り迎えの頃になるとある事をするので、何となく覚えていたのだ。
彼女はいつも、行きのバスが来る朝8時頃に洗濯物を干し、帰りのバスが来る15時頃に洗濯物を取り込む。
雨の日は洗濯物を干さないが、8時頃にカーテンを開け、15時頃に換気のためか窓を開け閉めするのである。
(あの人、何の仕事してるんだろう?しかも何故か送迎時間と、あの人の行動のタイミング被るのよね)
私は不思議に思っていた。
9月の終わり、私は夢を見た。
夫から『実は不倫をしている』と打ち明けられた。『はあ?んな訳ないでしょ?』、鼻で笑うと夢は終わった。
「娘の送迎バス乗り場あるじゃん。向かいのアパートの1番端の2階の部屋、女の人住んでるでしょ? あの人変じゃない?」
たまにしか送迎しない夫も、流石に気づいた。私は言った。
「あー、あの人。いつもこっちの送迎に合わせた様に窓開けたりするよね」
「何でだろ?」
娘の声がうるさいかと思い、私語を控えて乗降したが、彼女の『監視?』は止まない。かと言って、彼女は声を掛けてきたり外に出て来る事は、しないのである。
10~11月にかけて、夫は風邪が長引いた。病院に行っても治りきらない。
そして私は『自宅に向かってロケット花火を投げて来る誰かの夢』や、『買い物中に後を付け回される夢』などを続けて見ていた。
(何かありそうだな、これ)
心当たりはあの住民。だが確証は無い。
朝から眩暈のしたある日、娘を送り終えた後、横になった私はこんな夢を見た。
夢の中で、私はトイレの窓を開け外を見ていた。すると、何か巨大なモノが後ろから前へ飛んで行った。モノ、は赤っぽくてヌメヌメした、巨大なミートボールの様だった。
夢から覚めると眩暈は消失、何故か夫の風邪も2日後には治ったのだ。
夫の風邪が治った翌日。バスの時間になっても、彼女は窓を開けずカーテンも閉めたまま。
その後数日、カーテンを閉めたままの日が続き、以降彼女と出くわす事は無くなった。
(そう言えばトイレの窓、彼女のアパートの方を向いてるな)
ふと思ったが、私はホッとした。
11月下旬のある日、私と夫は同日に妙な夢を見た。
第117話にも書いた、『髪の長いトレンチコートの女』が出て来る夢だった。
幼稚園が午前保育のある日。15時前にバス乗り場の所のコンビニへ行った私は、立ち竦んだ。
イートインスペースに彼女が居たのだ。彼女は私に気づかず飲み物片手にスマホを見ているが、そこはバス待ちをする私達がよく見える席だった。
(『やめた』んじゃない、『後ろ』から見てたんだ…)
私は寒気がした。
12月に入り、夫と娘が交互に体調を崩した。私も『歩いていたら矢を打たれる夢』や『手に針が大量に刺さる夢』を見た。
(確証は無い。けど、あの人だ)
モヤモヤしつつ2学期の終わる頃、私はこんな夢を見た。
結婚した友人から『私がお世話している守り神を見せたい』と言われ、家の裏へ案内された。そこには石塔と、カラフルな着物(大陸風の唐衣みたいな)を着た女性が立っていた。
何で生身の人が居るの?と驚いていると、女性から強めの風が吹き、『あなたについていた悪い者は全て祓いました』と言われた。
私は『(やった!)ありがとうございます!!』と感謝し、夢は終わった。
クリスマスの翌日。ゴミ出しに行った私は、彼女のアパート前に救急車が止まっているのを見かけた。
町内会も違うし、その区画に仲の良いご近所さんも居ないので、誰が搬送されたのかは分からなかった。
3学期。工事が終わり乗降場所が戻ると、当然の様に彼女との接点は無くなった。妙な体調不良と悪夢も見なくなり、平穏な日々に戻った。
彼女は何故、私達に固執していたのだろう。場所を変えてでも監視していた理由は、一体何なのか。
念を飛ばすのを止めた彼女だが、何かのきっかけでまた始まらないか、今はそれが気がかりだ。
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