124 / 136
124 波長
しおりを挟む
霊的な意味で『波長が合った』話を2つ。
嫁いだ妹が、旦那さんと親戚宅の片づけに行った。
そのお宅は、敷地内にある別宅に高齢主人の弟さんが暮らしていたが、施設に入所。数年後にお亡くなりになり、法要も済んだので、別宅内の荷物の処分をする事になったのだ。
片付けと言っても、数年間施設で生活していたので日用品や身の回り品は無し。荷物の量もそれほど無かった。
(この自家製の果実酒、製造日や飲み頃がラベルにちゃんと書いてある…。マメな人だったんだ)
(釣り道具、きちんとケースに入れて保存してたんだ。大切だったのかな…)
会った事も無く、思い入れも無い人物であったが、故人の暮らしぶりの分かる物品があると、何とも言えない気分となるものだ。
空瓶を外の水道で妹が洗っていると、誰かに話しかけられた。
「それ、捨てるんですかい?」
「え? あ、そうです」
近隣住民に話しかけられたと思い、振り返り返事をした妹だが、そこには誰も居なかった。不思議そうに尋ねるような、年配の男性の声だったという。
「感情移入しちゃったから、多分聞こえたんだよ。怒ってる声じゃなかったから、そこはホッとしてる」
妹は何とも言えない表情で話してくれた。
生きている人同士でも、『感情移入』をきっかけに親しくなる事もある。死者でも『人』には変わりないので、当然だろう。
心霊案件に関して『感情移入』は禁物である。高校の修学旅行先で、ある戦災遺物に行く事になった時に、母方祖母からこんな話をされた。
ある時、某所へ観光に行った祖母は、戦災資料館を見学する事になった。
犠牲者の遺品や母親に宛てた遺書、犠牲となった女学生が着ていた当時の服…。図らずも戦前生まれだった祖母からすれば、当時の若い犠牲者は自分と同世代である。
「この人達は自由も知らずに若くに死んじゃって、本当に可哀想…」
祖母は、資料館の中で思わず涙ぐんだ。
観光から帰宅後、祖母は体調を崩した。妙な夢も同時に見る様になったので、知り合いの拝み屋さんに見て貰った。
「あなた、資料館の中で可哀想って言ったでしょ。『この人にもっと私達の無念を知って貰いたい!』って、いっぱい憑いて来ちゃってるよ」
祖母はお祓いを受けて事なきを得た。
心霊スポットに限らず死者の出た地や祀られている場所では、強い感情移入をすると気に入られたり、くっつかれてしまう事がある。
勿論、茶化したり冒涜などもってのほかだ。
どうしても行かないとならない時は、出来るだけ『無心』を保ち、余計な詮索や感情を抱かないこと。
そう考えると、生きている人間との距離の取り方とあまり変わらないのではないか、そう思えてしまう。
嫁いだ妹が、旦那さんと親戚宅の片づけに行った。
そのお宅は、敷地内にある別宅に高齢主人の弟さんが暮らしていたが、施設に入所。数年後にお亡くなりになり、法要も済んだので、別宅内の荷物の処分をする事になったのだ。
片付けと言っても、数年間施設で生活していたので日用品や身の回り品は無し。荷物の量もそれほど無かった。
(この自家製の果実酒、製造日や飲み頃がラベルにちゃんと書いてある…。マメな人だったんだ)
(釣り道具、きちんとケースに入れて保存してたんだ。大切だったのかな…)
会った事も無く、思い入れも無い人物であったが、故人の暮らしぶりの分かる物品があると、何とも言えない気分となるものだ。
空瓶を外の水道で妹が洗っていると、誰かに話しかけられた。
「それ、捨てるんですかい?」
「え? あ、そうです」
近隣住民に話しかけられたと思い、振り返り返事をした妹だが、そこには誰も居なかった。不思議そうに尋ねるような、年配の男性の声だったという。
「感情移入しちゃったから、多分聞こえたんだよ。怒ってる声じゃなかったから、そこはホッとしてる」
妹は何とも言えない表情で話してくれた。
生きている人同士でも、『感情移入』をきっかけに親しくなる事もある。死者でも『人』には変わりないので、当然だろう。
心霊案件に関して『感情移入』は禁物である。高校の修学旅行先で、ある戦災遺物に行く事になった時に、母方祖母からこんな話をされた。
ある時、某所へ観光に行った祖母は、戦災資料館を見学する事になった。
犠牲者の遺品や母親に宛てた遺書、犠牲となった女学生が着ていた当時の服…。図らずも戦前生まれだった祖母からすれば、当時の若い犠牲者は自分と同世代である。
「この人達は自由も知らずに若くに死んじゃって、本当に可哀想…」
祖母は、資料館の中で思わず涙ぐんだ。
観光から帰宅後、祖母は体調を崩した。妙な夢も同時に見る様になったので、知り合いの拝み屋さんに見て貰った。
「あなた、資料館の中で可哀想って言ったでしょ。『この人にもっと私達の無念を知って貰いたい!』って、いっぱい憑いて来ちゃってるよ」
祖母はお祓いを受けて事なきを得た。
心霊スポットに限らず死者の出た地や祀られている場所では、強い感情移入をすると気に入られたり、くっつかれてしまう事がある。
勿論、茶化したり冒涜などもってのほかだ。
どうしても行かないとならない時は、出来るだけ『無心』を保ち、余計な詮索や感情を抱かないこと。
そう考えると、生きている人間との距離の取り方とあまり変わらないのではないか、そう思えてしまう。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員
眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。
鳴瀬ゆず子の社外秘備忘録 〜掃除のおばさんは見た~
羽瀬川璃紗
経済・企業
清掃員:鳴瀬ゆず子(68)が目の当たりにした、色んな職場の裏事情や騒動の記録。
※この物語はフィクションです。登場する団体・人物は架空のものであり、実在のものとは何の関係もありません。
※ストーリー展開上、個人情報や機密の漏洩など就業規則違反の描写がありますが、正当化や教唆の意図はありません。
注意事項はタイトル欄併記。続き物もありますが、基本的に1話完結、どの話からお読み頂いても大丈夫です。
25年3月限定で毎週金曜22時更新予定。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
終焉の教室
シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。
そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。
提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。
最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。
しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。
そして、一人目の犠牲者が決まった――。
果たして、このデスゲームの真の目的は?
誰が裏切り者で、誰が生き残るのか?
友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる