23 / 136
23 御雛様
しおりを挟む
今ぐらいの時期になると思い出す、母から聞いた話。
私が小学5年の正月。従兄弟が遊びに来て、かくれんぼをした。
その際誰かが、物置部屋に仕舞っていたガラスケースに入った雛人形の上に乗ったらしく、ケースが割れてしまったそうだ。
人形は無事だったが、割れたガラスの一部は人形の近くに落下していた。
当時は正月休みで、ガラスの発注が即座に出来なかったのですっかり忘れてしまい、修理に出したのは2月になってからだった。
そんなある時、母が事故に遭った。
車を運転中に、信号無視した車に横から衝突されたのだ。
奇しくもその日は3月3日。ひな祭りのちらし寿司の材料を買いに行った帰りであった。
母の怪我は擦り傷で済んだが、車は廃車。母は『お雛様のケースを早く直さなかった祟りだ』と恐れおののいた。
そして月日は流れ。
アラサーで未婚だった私と妹を案じ、母は雛人形を毎年飾り続けていた。
娘の行き遅れを防ぐゲン担ぎの為、3月3日が過ぎたら即座に仕舞うようにしていた。
ある年のこと。
3月3日に祖母(母の母)が体調を崩した。
大事には至らなかったが、2,3日は忙しくなりそうなので、雛人形はガラスケースごと収納用の箱に入れるだけにして、物置部屋に仕舞うのを先送りにした。
その後も、町内会の行事へ急に参加する事になったり、愛車の調子が悪く修理工場とのやり取りで1日潰れたりして、お雛様をなかなか仕舞えなくなった。
そうこうしてる内に、もう11日になってしまった。
午前中に確定申告を終わらせて、自宅に戻り、遅い昼食を摂っていた母は『ああ、やっとお雛様を仕舞える。遅いから怒ってないかな』などと思ったらしい。
すると。
1000年に1度、などと後世に語り継がれる大規模な自然災害が発生した。自宅も家族もみんな何とか無事であったが。
雛人形を例年仕舞っていたスペースは、転倒防止を怠っていた家具が倒れ込んでいた。
もし期日通りに仕舞っていたら、雛人形は潰れていただろう。
「お雛様はあの災害を予見していて、仕舞われないように妨害していたのでは?」
と、母は言っていた。
大それた力を持つかは不明だが、雛人形は私と妹が嫁いだ現在も、変わらず桃の節句に合わせて母が飾っている。
私が小学5年の正月。従兄弟が遊びに来て、かくれんぼをした。
その際誰かが、物置部屋に仕舞っていたガラスケースに入った雛人形の上に乗ったらしく、ケースが割れてしまったそうだ。
人形は無事だったが、割れたガラスの一部は人形の近くに落下していた。
当時は正月休みで、ガラスの発注が即座に出来なかったのですっかり忘れてしまい、修理に出したのは2月になってからだった。
そんなある時、母が事故に遭った。
車を運転中に、信号無視した車に横から衝突されたのだ。
奇しくもその日は3月3日。ひな祭りのちらし寿司の材料を買いに行った帰りであった。
母の怪我は擦り傷で済んだが、車は廃車。母は『お雛様のケースを早く直さなかった祟りだ』と恐れおののいた。
そして月日は流れ。
アラサーで未婚だった私と妹を案じ、母は雛人形を毎年飾り続けていた。
娘の行き遅れを防ぐゲン担ぎの為、3月3日が過ぎたら即座に仕舞うようにしていた。
ある年のこと。
3月3日に祖母(母の母)が体調を崩した。
大事には至らなかったが、2,3日は忙しくなりそうなので、雛人形はガラスケースごと収納用の箱に入れるだけにして、物置部屋に仕舞うのを先送りにした。
その後も、町内会の行事へ急に参加する事になったり、愛車の調子が悪く修理工場とのやり取りで1日潰れたりして、お雛様をなかなか仕舞えなくなった。
そうこうしてる内に、もう11日になってしまった。
午前中に確定申告を終わらせて、自宅に戻り、遅い昼食を摂っていた母は『ああ、やっとお雛様を仕舞える。遅いから怒ってないかな』などと思ったらしい。
すると。
1000年に1度、などと後世に語り継がれる大規模な自然災害が発生した。自宅も家族もみんな何とか無事であったが。
雛人形を例年仕舞っていたスペースは、転倒防止を怠っていた家具が倒れ込んでいた。
もし期日通りに仕舞っていたら、雛人形は潰れていただろう。
「お雛様はあの災害を予見していて、仕舞われないように妨害していたのでは?」
と、母は言っていた。
大それた力を持つかは不明だが、雛人形は私と妹が嫁いだ現在も、変わらず桃の節句に合わせて母が飾っている。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員
眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。
鳴瀬ゆず子の社外秘備忘録 〜掃除のおばさんは見た~
羽瀬川璃紗
経済・企業
清掃員:鳴瀬ゆず子(68)が目の当たりにした、色んな職場の裏事情や騒動の記録。
※この物語はフィクションです。登場する団体・人物は架空のものであり、実在のものとは何の関係もありません。
※ストーリー展開上、個人情報や機密の漏洩など就業規則違反の描写がありますが、正当化や教唆の意図はありません。
注意事項はタイトル欄併記。続き物もありますが、基本的に1話完結、どの話からお読み頂いても大丈夫です。
25年3月限定で毎週金曜22時更新予定。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
終焉の教室
シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。
そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。
提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。
最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。
しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。
そして、一人目の犠牲者が決まった――。
果たして、このデスゲームの真の目的は?
誰が裏切り者で、誰が生き残るのか?
友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる