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鬼の嫁
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(あら?この看板の苗字…)
出向先へ向かう途中のゆず子は、道端にある葬儀の案内看板の前で足を止めた。
看板には故人と思われる『故 鬼木倫幸』の氏名と、葬儀会館名が告別式の時間と共に記されていたのだが。
(気のせいかな。この前もこの苗字、書かれていた気がするんだけど…)
書かれている葬儀会館は、ゆず子の出向先へのルート上には無く、この看板の設置されている主要幹線道路を少し行った場所にある。
(鬼木って苗字、この辺りで多いのかな?)
鈴木や佐藤などよくある苗字なら、すぐに忘れただろう。
『鬼』がつく苗字は何より珍しいし、インパクト大だ。ゆず子は何となく気になった。
「え⁈ 鬼木さんの葬儀看板出てたって?」
目を丸くしたのは、津山。ゆず子は尋ねた。
「お知り合い?」
「いや、知り合いってほどでは無いけど、1月にお嫁さん、5月にお母さん亡くなってるんだよ。えー、亡くなったの誰だろ」
「名前忘れたけど、男性の名前だったわよ」
「て、事はお兄ちゃんか弟か。…実は鬼木さんちの次男坊と、うちの鞠子が同級生なの。一緒に遊んだとかはないけど、そこの家の人なら知ってる」
津山の言葉に、善市郎が口を挟む。
「何だよその家。今年になってから3人も死んでんのか?」
「私の見間違いでなければ、そうなるわね」
ゆず子がそう答えると、津山はスマホを取り出した。
「ちょっと、知り合いにも訊いてみるわ」
メッセージを作成する津山に、ゆず子は尋ねた。
「…鬼木さんって、どんな人だったの?」
「お父さんがちり紙交換とか、廃品回収のお仕事をしてたんだけど、末っ子である次男坊が3歳の時に、急性心臓麻痺だかで死んじゃったんだ。それからお母さんがパートしながら女手一つで子供3人を育てたの」
「大変ね…」
津山はメッセージを送信し終えたのか、老眼鏡を外すと続けた。
「まあ、近所でも有名な放置子供の家だったけどね」
「うーん。しゃあねえな、母ちゃん1人でなら」
善市郎が目を細めると、津山も頷いた。
「そういう時代だからね。中学校で、次男坊がうちの鞠子と同じクラスになってね。片親で生活大変だから、酷いいじめに遭ったみたい。1年の2学期から学校に来なくなっちゃった」
「登校拒否かぁ」
「そうなの。高校行かずに中卒で働き始めたけど、何処行っても長く続かなくて、結局20歳になる前から引きこもり。上のお兄ちゃんは何とか定時制高校を卒業して就職したけど、真ん中のお姉ちゃんは17歳で子供が出来ちゃった。しかも相手に逃げられて、シングルマザーで水商売しながら実家暮らし」
「うわあ、母ちゃん大変やな」
「比較的まともなのは長男だけかあ」
ゆず子と善市郎は顔をしかめた。津山も肩を竦めた。
「うちもシングルマザーだけど、ジジババと兄貴居たからね。絶縁状態で実家に頼れなかった鬼木家は、相当大変だったと思うよ。お姉ちゃんは子供が小学校上がる前に再婚して出て行ったけど、毎週末実家に帰ってきて、ゴハン食べて泊まっていてさ。親になったくせに親離れ出来てないって言うか。
だからお母さんはお姉ちゃんが再婚相手との間に出来た子も含めて、毎週末には8人分のゴハン作ったり、子供の世話してあげたみたい」
ゆず子は口を尖らせた。
「えー、何たって毎週末? お母さん、仕事の他に普段の家事もしてるんでしょ? 過労死しちゃうわよ」
「でしょ? 結局、定年を前に身体壊して倒れちゃってさ。病気のお母さん、引きこもりの弟、生活を働いて支えるお兄ちゃんで暮らしていたんだよね。で、お兄ちゃんが40過ぎに結婚して、お嫁さんが来たの」
「へー、同居? 嫁さんも義理の弟や母親が居る状態で、よく嫁いだもんだな」
善市郎が言うと、津山は答えた。
「お嫁さんも40近かったからね。いい歳だし、結婚のために妥協したんだろうね」
「成程」
津山は煎茶を振舞うと、一口飲んで続けた。
「お嫁さんはよく働く人だったのよ。平日は仕事していて、毎週末に義妹と甥姪が来ても、文句言わずに飯炊きしたし、お母さんの通院も率先してやってたし。近所の評判も悪くなかったよ」
「へえ、いいお嫁さんで良かったね」
ゆず子が言うと、津山は続けた。
「それで、2年位前かな。お嫁さんが流産したらしいの」
「あら…」
「そもそも遅い結婚だったからね。仕事も続けていたし、相変わらず週末に義妹親子はやって来るし、身体に負担かかったのかも。で、流産してから鬱になったみたいなの」
ゆず子と善市郎は渋い顔をした。
「無理も無いわよね。それは…」
「期待してなくても、立ち直れねえよ」
津山も息をついて茶を口にした。
「仕事も辞めて、ずっと家で臥せっていたみたい。それまで、家の敷地の草むしりとかもマメにやっていたのに、やらなくなって荒れ放題になっちゃった」
「1月に死んだって言ってたわよね? 病気?」
ゆず子が尋ねると、津山は首を振った。
「いいや、自殺よ。家の中で首くくっちゃったらしい」
「いやぁ…、結婚して10年も経ってないのにな」
善市郎が言うと、津山は頷いた。
「うん。その後、5月にお母さんも急死した。こっちは急に持病が悪化したからみたいだけど。でね、知り合いからちょっと嫌な話聞いてさぁ」
ゆず子はこわごわ尋ねる。
「嫌な話って?」
「お嫁さんの葬式の時に、お母さんが『せめてお嫁さんが流産しないで子供産んでたら、うちのテツヤのお世話を将来してもらえたかもしれないのに』って、言ってたんだって」
その話に、ゆず子と善市郎は憤慨した。
「はあ⁈ 何それ」
「孫は出来損ないの息子のお世話要員なのかよ⁈」
津山もジト目で頷いた。
「本当、それよ。自分の娘の子供にはお世話させたくないんだって、『叔父さんのお世話させるとか可哀そうだから』って。次男を引きこもりを放置して助長したのは自分のせいだってのに、どの口が言ってるんだよ」
「…その、引きこもりの次男は『テツヤ』って名前なの?」
ゆず子が尋ねると、津山は頷いた。
「うん。他の兄弟の名前は知らないけど、そうだよ」
「私が見た看板、テツヤって名前じゃなかった気がする」
津山は目を丸くした。
「そうなの?…じゃあ、亡くなったのはお兄ちゃんの方か。どっちにしろ、まだ若いのに」
善市郎は茶を啜ると口を開いた。
「じゃあその次男坊、これからどうやって生活するんだ? 嫁いだ姉ちゃんが家に行って世話すんのか?」
「さあね、まだ年金貰える齢でも無いよね」
「何ちゅうか…、『呪い』みたいだな。次々と引っ張られるように、家族が亡くなっている家なんて」
善市郎が言うと、津山は口を尖らせた。
「うーん、でも呪いだとしたら、お嫁さんもお母さんも息子も、みんな結局あの世で会うじゃない。憎いのにすぐ会ってどうすんのよ? あたしだったらすぐ会いたくないな」
「…亡くなった皆さんは天国に行けたのかな? それとも…」
ゆず子はかりんとうドーナツを片手に、しばし考える。
「あの世の事ってよくわからないけど、死んでる者同士なのに会えないとしたら、天国と地獄に分かれてる場合かな?」
ゆず子の言葉に、津山は皮肉な笑みを浮かべてこう言った。
「やれやれ、何も出来ない次男1人が残されたんじゃ、生き地獄じゃないの」
ゆず子が次に出向で通りかかった時、看板は撤去され影も形も無くなっていた。まあ、終わった葬儀の案内をいつまでも出しておかないだろう。
その家族にゆず子は勿論会った事すら無いのだが、こんな想像をしてしまう。
昔、ある所に天涯孤独な生まれの女が居た。施設で生まれ育ち、必死で勉強して職に就き、何とか人並みの暮らしをしていた。
結婚など考えてなかったが、運命の出会いを果たし、ある男性と結婚する事になった。病気の義母、引きこもりの義弟、実家離れの出来ない義姉。
それでも女にとって、夢にも見た『家族との生活』が始まった。
仕事と家庭生活の両立は目が回る忙しさだったが、そんな折、新しい命がやって来た。だが、新しい命は呆気なく消えた。
女は絶望のさなか死んだ。向かったあの世で、我が子と再会した。喜ぶ女。『ここだったら、思い描いていた家族との生活が出来る』…。
女は現世から、1人ずつ家族を連れて来る事にした。
(うーん。文才が無い。イマイチね)
自転車を走らせるゆず子の反対側の通りには、葬儀の案内看板があった。
そんな事を知る由もないゆず子は、その看板に見覚えのある苗字がまた書かれている事も、全く知らないのであった。
出向先へ向かう途中のゆず子は、道端にある葬儀の案内看板の前で足を止めた。
看板には故人と思われる『故 鬼木倫幸』の氏名と、葬儀会館名が告別式の時間と共に記されていたのだが。
(気のせいかな。この前もこの苗字、書かれていた気がするんだけど…)
書かれている葬儀会館は、ゆず子の出向先へのルート上には無く、この看板の設置されている主要幹線道路を少し行った場所にある。
(鬼木って苗字、この辺りで多いのかな?)
鈴木や佐藤などよくある苗字なら、すぐに忘れただろう。
『鬼』がつく苗字は何より珍しいし、インパクト大だ。ゆず子は何となく気になった。
「え⁈ 鬼木さんの葬儀看板出てたって?」
目を丸くしたのは、津山。ゆず子は尋ねた。
「お知り合い?」
「いや、知り合いってほどでは無いけど、1月にお嫁さん、5月にお母さん亡くなってるんだよ。えー、亡くなったの誰だろ」
「名前忘れたけど、男性の名前だったわよ」
「て、事はお兄ちゃんか弟か。…実は鬼木さんちの次男坊と、うちの鞠子が同級生なの。一緒に遊んだとかはないけど、そこの家の人なら知ってる」
津山の言葉に、善市郎が口を挟む。
「何だよその家。今年になってから3人も死んでんのか?」
「私の見間違いでなければ、そうなるわね」
ゆず子がそう答えると、津山はスマホを取り出した。
「ちょっと、知り合いにも訊いてみるわ」
メッセージを作成する津山に、ゆず子は尋ねた。
「…鬼木さんって、どんな人だったの?」
「お父さんがちり紙交換とか、廃品回収のお仕事をしてたんだけど、末っ子である次男坊が3歳の時に、急性心臓麻痺だかで死んじゃったんだ。それからお母さんがパートしながら女手一つで子供3人を育てたの」
「大変ね…」
津山はメッセージを送信し終えたのか、老眼鏡を外すと続けた。
「まあ、近所でも有名な放置子供の家だったけどね」
「うーん。しゃあねえな、母ちゃん1人でなら」
善市郎が目を細めると、津山も頷いた。
「そういう時代だからね。中学校で、次男坊がうちの鞠子と同じクラスになってね。片親で生活大変だから、酷いいじめに遭ったみたい。1年の2学期から学校に来なくなっちゃった」
「登校拒否かぁ」
「そうなの。高校行かずに中卒で働き始めたけど、何処行っても長く続かなくて、結局20歳になる前から引きこもり。上のお兄ちゃんは何とか定時制高校を卒業して就職したけど、真ん中のお姉ちゃんは17歳で子供が出来ちゃった。しかも相手に逃げられて、シングルマザーで水商売しながら実家暮らし」
「うわあ、母ちゃん大変やな」
「比較的まともなのは長男だけかあ」
ゆず子と善市郎は顔をしかめた。津山も肩を竦めた。
「うちもシングルマザーだけど、ジジババと兄貴居たからね。絶縁状態で実家に頼れなかった鬼木家は、相当大変だったと思うよ。お姉ちゃんは子供が小学校上がる前に再婚して出て行ったけど、毎週末実家に帰ってきて、ゴハン食べて泊まっていてさ。親になったくせに親離れ出来てないって言うか。
だからお母さんはお姉ちゃんが再婚相手との間に出来た子も含めて、毎週末には8人分のゴハン作ったり、子供の世話してあげたみたい」
ゆず子は口を尖らせた。
「えー、何たって毎週末? お母さん、仕事の他に普段の家事もしてるんでしょ? 過労死しちゃうわよ」
「でしょ? 結局、定年を前に身体壊して倒れちゃってさ。病気のお母さん、引きこもりの弟、生活を働いて支えるお兄ちゃんで暮らしていたんだよね。で、お兄ちゃんが40過ぎに結婚して、お嫁さんが来たの」
「へー、同居? 嫁さんも義理の弟や母親が居る状態で、よく嫁いだもんだな」
善市郎が言うと、津山は答えた。
「お嫁さんも40近かったからね。いい歳だし、結婚のために妥協したんだろうね」
「成程」
津山は煎茶を振舞うと、一口飲んで続けた。
「お嫁さんはよく働く人だったのよ。平日は仕事していて、毎週末に義妹と甥姪が来ても、文句言わずに飯炊きしたし、お母さんの通院も率先してやってたし。近所の評判も悪くなかったよ」
「へえ、いいお嫁さんで良かったね」
ゆず子が言うと、津山は続けた。
「それで、2年位前かな。お嫁さんが流産したらしいの」
「あら…」
「そもそも遅い結婚だったからね。仕事も続けていたし、相変わらず週末に義妹親子はやって来るし、身体に負担かかったのかも。で、流産してから鬱になったみたいなの」
ゆず子と善市郎は渋い顔をした。
「無理も無いわよね。それは…」
「期待してなくても、立ち直れねえよ」
津山も息をついて茶を口にした。
「仕事も辞めて、ずっと家で臥せっていたみたい。それまで、家の敷地の草むしりとかもマメにやっていたのに、やらなくなって荒れ放題になっちゃった」
「1月に死んだって言ってたわよね? 病気?」
ゆず子が尋ねると、津山は首を振った。
「いいや、自殺よ。家の中で首くくっちゃったらしい」
「いやぁ…、結婚して10年も経ってないのにな」
善市郎が言うと、津山は頷いた。
「うん。その後、5月にお母さんも急死した。こっちは急に持病が悪化したからみたいだけど。でね、知り合いからちょっと嫌な話聞いてさぁ」
ゆず子はこわごわ尋ねる。
「嫌な話って?」
「お嫁さんの葬式の時に、お母さんが『せめてお嫁さんが流産しないで子供産んでたら、うちのテツヤのお世話を将来してもらえたかもしれないのに』って、言ってたんだって」
その話に、ゆず子と善市郎は憤慨した。
「はあ⁈ 何それ」
「孫は出来損ないの息子のお世話要員なのかよ⁈」
津山もジト目で頷いた。
「本当、それよ。自分の娘の子供にはお世話させたくないんだって、『叔父さんのお世話させるとか可哀そうだから』って。次男を引きこもりを放置して助長したのは自分のせいだってのに、どの口が言ってるんだよ」
「…その、引きこもりの次男は『テツヤ』って名前なの?」
ゆず子が尋ねると、津山は頷いた。
「うん。他の兄弟の名前は知らないけど、そうだよ」
「私が見た看板、テツヤって名前じゃなかった気がする」
津山は目を丸くした。
「そうなの?…じゃあ、亡くなったのはお兄ちゃんの方か。どっちにしろ、まだ若いのに」
善市郎は茶を啜ると口を開いた。
「じゃあその次男坊、これからどうやって生活するんだ? 嫁いだ姉ちゃんが家に行って世話すんのか?」
「さあね、まだ年金貰える齢でも無いよね」
「何ちゅうか…、『呪い』みたいだな。次々と引っ張られるように、家族が亡くなっている家なんて」
善市郎が言うと、津山は口を尖らせた。
「うーん、でも呪いだとしたら、お嫁さんもお母さんも息子も、みんな結局あの世で会うじゃない。憎いのにすぐ会ってどうすんのよ? あたしだったらすぐ会いたくないな」
「…亡くなった皆さんは天国に行けたのかな? それとも…」
ゆず子はかりんとうドーナツを片手に、しばし考える。
「あの世の事ってよくわからないけど、死んでる者同士なのに会えないとしたら、天国と地獄に分かれてる場合かな?」
ゆず子の言葉に、津山は皮肉な笑みを浮かべてこう言った。
「やれやれ、何も出来ない次男1人が残されたんじゃ、生き地獄じゃないの」
ゆず子が次に出向で通りかかった時、看板は撤去され影も形も無くなっていた。まあ、終わった葬儀の案内をいつまでも出しておかないだろう。
その家族にゆず子は勿論会った事すら無いのだが、こんな想像をしてしまう。
昔、ある所に天涯孤独な生まれの女が居た。施設で生まれ育ち、必死で勉強して職に就き、何とか人並みの暮らしをしていた。
結婚など考えてなかったが、運命の出会いを果たし、ある男性と結婚する事になった。病気の義母、引きこもりの義弟、実家離れの出来ない義姉。
それでも女にとって、夢にも見た『家族との生活』が始まった。
仕事と家庭生活の両立は目が回る忙しさだったが、そんな折、新しい命がやって来た。だが、新しい命は呆気なく消えた。
女は絶望のさなか死んだ。向かったあの世で、我が子と再会した。喜ぶ女。『ここだったら、思い描いていた家族との生活が出来る』…。
女は現世から、1人ずつ家族を連れて来る事にした。
(うーん。文才が無い。イマイチね)
自転車を走らせるゆず子の反対側の通りには、葬儀の案内看板があった。
そんな事を知る由もないゆず子は、その看板に見覚えのある苗字がまた書かれている事も、全く知らないのであった。
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