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回想の小箱 ※ストーカー的表現あり
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特に親しくもない人から、同様に特に親しくない別の人の事を訊かれた時、あなたはどの辺まで教えるだろうか。
『あの人って何が好物なんですか?』
食の好みぐらいなら、知ってたら教えるだろうか。
『あの人って結婚してましたっけ?』
離婚歴ならともかく、既婚は伏せる必要もないだろうか。
『あの人ってどちらにお住まいでしょうかね?』
その辺りから、少々気遣いが要るだろうか。
(まあ、前後の話の内容にもよるかしら。1番は他人の個人情報は発信しないこと、なのよね)
個人情報もへったくれも無さそうに思われるが、『個人情報の取り扱い』と言う言葉を聞くと、ゆず子はある人物を思い出す。
以前出入りしていた職場に、入社4年目の女子社員:魚沼凪沙が居た。
魚沼はハッとするような美人で、齢の割に落ち着いたミステリアスな雰囲気のある女性だった。
(目力が強いわね。サスペンスドラマの主役に居そうな顔立ちだわ)
美人な魚沼だがあまり男性人気は無く、彼女を慕うのは後輩の女子ばかりだった。
(あー、頼れるお姉様的な?うーん、でも普通に男性がちょっかいかけそうな魅力もあると思うんだけど)
「魚沼さんて、すっごく美人よね。彼氏さん居るのかしら?」
「居ますよ。萬木チーフです」
喫煙所清掃の時に、ゆず子が若手男性社員に話しかけると、こんな返事が返ってきた。
「へえ、社内恋愛なんだ。どちらから申し込んだの?」
すると、男性社員は苦笑いして答えた。
「魚沼さんの方から告ったみたいで、最初はみんなも『美男美女カップルだね!』とか『お似合いだよ』とか、好意的だったんですけど、色々ヤバいんですよ。
休日に連絡つかないと鬼電したり、自殺ほのめかしたりするとか。飲み会とかでうっかりチーフの隣に他の女子社員配置すると、めっちゃ機嫌悪くなるし。みんな苦笑いしてますよ」
魚沼は愛が非常に重たいタイプで、それが社内にも知れているという。
参っている萬木が、時にゆず子へ相談してくる事もあった。
「いやあ、あの時の自分をぶん殴りたいわぁ。酔っていたとは言え、顔だけ見て即答しちゃった訳だし」
「結婚は考えてないの?」
「無い無い!! 生涯一緒とかどんな罰ゲームすか! …ここだけの話、最近ね『避妊しなくていいよ』なんて言って来るんすよ。いいのはあいつだけ、俺は良くない!」
「あらまあ」
魚沼の狂気じみた愛は、交際3年目を前に終焉を迎えた。
「俺、異動する事になりました」
「あら、そうなの」
萬木の表情は暗くなかった。
「まあ、悪く言えば『逃げるため』の異動ですけどね。逃げないと、俺の人生終わってしまいますから」
「…そうね、逃げる事が必要な時もあるわね」
ゆず子が答えると、萬木は吹っ切れた様な顔をして、煙草に火を点けた。
「…あいつね、避妊具に穴開けてたんですよ。たまたまその現場を見ちゃって、それで完全に冷めたんです」
魚沼の執念は、それだけで無かった。
「萬木さんの引っ越し先?」
ゆず子が思わず聞き返すと、魚沼は小さく頷いた。
「はい。お世話になったので、せめて手紙を送りたいと思ったんです」
萬木は異動してから、携帯番号やメルアドなどを全て一新したらしい。勿論、魚沼には教えてなかった。ゆず子は丁寧に諭した。
「私の会社、出向先の個人さんと連絡先交換しちゃいけない決まりなの。だから連絡先は何も知らないんだ、ごめんなさいね」
「…では、異動先の事は何も訊いてませんか?」
「異動先?」
「はい。東日本側か、西日本か。何か、ヒントになるような話はしてませんでしたか?」
魚沼は社内の人間に聞きまわり、ゆず子にまで連絡先を訊いてきた。
「魚沼さん、掃除のおばちゃんにまで聞いたらしいよ」
「ヤバいね、ストーカーになっちゃうんじゃないの?」
社内の人間は、魚沼のヤバさを知り震え上がった。
それから4ヶ月後、動きがあった。
「魚沼さん、彼氏が出来たらしいよ」
「あー、美人だものね。事情を知らない人は放って置かないでしょう」
(まあ、彼氏が出来れば萬木さんへの執着も薄れるよね。お互い、良かったわ)
魚沼も私生活が充実してきたか、萬木の思い出話を口にする事も、徐々に無くなって行った。年が明け、風の便りで萬木が結婚したとの知らせが届いた。
警戒していたのか、挙式披露宴など全て終了してからの事後報告だったが、話を耳にした魚沼も特に何の反応も示していない様子だった。
ゆず子すらも魚沼と萬木の『泥沼恋愛』の事を、すっかり忘れてしまった頃だ。若手の男性社員から、こんな話をされた。
「鳴瀬さん、萬木さんて覚えてます? お子さん生まれたらしいですよ」
「萬木さん…。あー、思い出した。何か久しぶりに訊いたわね、お子さん生まれたんだ?」
「そうなんですよ。女の子。シモヤマさんのとこと同い年ですね~」
それから半月後。女子トイレの掃除をしていると、魚沼が話しかけてきた。
「萬木さん、お子さんが生まれたらしいですね」
「え? ああ、そうね。女の子らしいわね」
「そうなんですか? お詳しいですね」
「いいえー、たまたま聞いただけですよ」
会話はそこで終わった。
別の日。ゴミ袋をまとめていると、湯沸室から魚沼と同期の男性社員の話し声が聞こえてきた。
「萬木さんのとこ、お子さん生まれたって聞いたけど、いつ生まれたの?」
「え? いつだっけ…。今月の、4日だっけ? 8日だっけ? …何で?」
「なんとなく。ていうか、イワイくん連絡取り合ってたんだなーって思って」
「取り合ってねえよ。機種変して新しいメッセージアプリ入れたら、『知り合いかも』に上がってて、登録したら向こうがメッセージ寄越してきただけだし」
(何か、尋問してるように聞こえるぞ…?)
ゆず子は不穏な予感がした。
「何か、萬木さんのお子さんの事、根掘り葉掘り訊かれた」
「気になるんじゃない? 元彼の子供のこと」
「お祝いあげる気だったりして。あたしは名前聞かれたよ」
「彼氏居ても元彼気になるもんなの?」
「まあ、人によるけどね~」
(男には分からない女の事情ってあるわよね。あたしもちょっと気になるタイプだけど)
噂話を聞きつつ、ゆず子は少し笑った。
「…鳴瀬さん、女の子の名前で、『ず』と『づ』、どっちを使うのが一般的ですか?」
女子トイレ掃除の時、たまたま顔を合わせた魚沼は妙な事を口走った。
「え、どういう事?」
「友達がお産を控えてましてね、女の子らしいんですよ。だから平仮名の名前がいいって、友達が言ってて、候補にあるのが『いずみ』と『いづみ』らしいんですね。どっちかで決めかねてるんですって。私なんかに聞いてこられて」
魚沼は肩を竦めてみせた。ゆず子も返す。
「『ず』と『づ』ねえ…。漢字だったらまだしも、平仮名だったら私も分からないな」
「ですよね! うーん、出産祝いどうしようかなぁ」
魚沼はトイレを後にした。
魚沼は、その数か月後に転職のために会社を辞めた。結婚で辞めたかと思ったが、違うようだった。
魚沼の退職した翌週、掃除に入ったゆず子はゴミ箱の中に、変な物が入ってる事に気づいた。
(紙に包まれた小箱が2つ。に、しても重いな)
その小箱は、ご丁寧にも紙で二重に包まれ、ガムテープで封がされていた。振ると金属音が微かにする。
(ネジか何かの部品かな。確認しよう)
中を見たゆず子は、ゾッとした。
2センチ位の針が、無数に打ち付けられた、親指くらいの紙粘土が入っていたのだ。もう1つも、同様の状態だった。
(何これ。気持ち悪い!)
針を抜いて分別しようかと思ったゆず子は、あるものを見つけた。文字だった。
(『萬木みづき』ってあったな。確認してないけど、多分もう1個には『萬木みずき』って書いてあったんでしょうね)
ゆず子は、誰にも言わずに箱を処分した。きっと、箱を作成した本人も、まさか人に見られるとは思わなかっただろう。
(まあ、彼氏が居るのに元彼を気にし始めた段階で、予兆があったんでしょう。辞める理由が結婚でないのが、それを物語っているわ)
ゆず子はその会社の担当を外れたので、萬木の現在も娘の安否も知る由がない。
(いまどき、『呪い』みたいな物を信じる人がいることにびっくりよ。ネットで調べるのかしら?)
古今東西、呪いは第三者に見られると効力を失うと聞く。あの呪いは、恐らく効いてないのではないか。
(『人を呪わば穴二つ』って言うわね。魚沼さんも、元気でいらっしゃるといいけど)
ゆず子は人知れず、彼女の事を思い出した。
『あの人って何が好物なんですか?』
食の好みぐらいなら、知ってたら教えるだろうか。
『あの人って結婚してましたっけ?』
離婚歴ならともかく、既婚は伏せる必要もないだろうか。
『あの人ってどちらにお住まいでしょうかね?』
その辺りから、少々気遣いが要るだろうか。
(まあ、前後の話の内容にもよるかしら。1番は他人の個人情報は発信しないこと、なのよね)
個人情報もへったくれも無さそうに思われるが、『個人情報の取り扱い』と言う言葉を聞くと、ゆず子はある人物を思い出す。
以前出入りしていた職場に、入社4年目の女子社員:魚沼凪沙が居た。
魚沼はハッとするような美人で、齢の割に落ち着いたミステリアスな雰囲気のある女性だった。
(目力が強いわね。サスペンスドラマの主役に居そうな顔立ちだわ)
美人な魚沼だがあまり男性人気は無く、彼女を慕うのは後輩の女子ばかりだった。
(あー、頼れるお姉様的な?うーん、でも普通に男性がちょっかいかけそうな魅力もあると思うんだけど)
「魚沼さんて、すっごく美人よね。彼氏さん居るのかしら?」
「居ますよ。萬木チーフです」
喫煙所清掃の時に、ゆず子が若手男性社員に話しかけると、こんな返事が返ってきた。
「へえ、社内恋愛なんだ。どちらから申し込んだの?」
すると、男性社員は苦笑いして答えた。
「魚沼さんの方から告ったみたいで、最初はみんなも『美男美女カップルだね!』とか『お似合いだよ』とか、好意的だったんですけど、色々ヤバいんですよ。
休日に連絡つかないと鬼電したり、自殺ほのめかしたりするとか。飲み会とかでうっかりチーフの隣に他の女子社員配置すると、めっちゃ機嫌悪くなるし。みんな苦笑いしてますよ」
魚沼は愛が非常に重たいタイプで、それが社内にも知れているという。
参っている萬木が、時にゆず子へ相談してくる事もあった。
「いやあ、あの時の自分をぶん殴りたいわぁ。酔っていたとは言え、顔だけ見て即答しちゃった訳だし」
「結婚は考えてないの?」
「無い無い!! 生涯一緒とかどんな罰ゲームすか! …ここだけの話、最近ね『避妊しなくていいよ』なんて言って来るんすよ。いいのはあいつだけ、俺は良くない!」
「あらまあ」
魚沼の狂気じみた愛は、交際3年目を前に終焉を迎えた。
「俺、異動する事になりました」
「あら、そうなの」
萬木の表情は暗くなかった。
「まあ、悪く言えば『逃げるため』の異動ですけどね。逃げないと、俺の人生終わってしまいますから」
「…そうね、逃げる事が必要な時もあるわね」
ゆず子が答えると、萬木は吹っ切れた様な顔をして、煙草に火を点けた。
「…あいつね、避妊具に穴開けてたんですよ。たまたまその現場を見ちゃって、それで完全に冷めたんです」
魚沼の執念は、それだけで無かった。
「萬木さんの引っ越し先?」
ゆず子が思わず聞き返すと、魚沼は小さく頷いた。
「はい。お世話になったので、せめて手紙を送りたいと思ったんです」
萬木は異動してから、携帯番号やメルアドなどを全て一新したらしい。勿論、魚沼には教えてなかった。ゆず子は丁寧に諭した。
「私の会社、出向先の個人さんと連絡先交換しちゃいけない決まりなの。だから連絡先は何も知らないんだ、ごめんなさいね」
「…では、異動先の事は何も訊いてませんか?」
「異動先?」
「はい。東日本側か、西日本か。何か、ヒントになるような話はしてませんでしたか?」
魚沼は社内の人間に聞きまわり、ゆず子にまで連絡先を訊いてきた。
「魚沼さん、掃除のおばちゃんにまで聞いたらしいよ」
「ヤバいね、ストーカーになっちゃうんじゃないの?」
社内の人間は、魚沼のヤバさを知り震え上がった。
それから4ヶ月後、動きがあった。
「魚沼さん、彼氏が出来たらしいよ」
「あー、美人だものね。事情を知らない人は放って置かないでしょう」
(まあ、彼氏が出来れば萬木さんへの執着も薄れるよね。お互い、良かったわ)
魚沼も私生活が充実してきたか、萬木の思い出話を口にする事も、徐々に無くなって行った。年が明け、風の便りで萬木が結婚したとの知らせが届いた。
警戒していたのか、挙式披露宴など全て終了してからの事後報告だったが、話を耳にした魚沼も特に何の反応も示していない様子だった。
ゆず子すらも魚沼と萬木の『泥沼恋愛』の事を、すっかり忘れてしまった頃だ。若手の男性社員から、こんな話をされた。
「鳴瀬さん、萬木さんて覚えてます? お子さん生まれたらしいですよ」
「萬木さん…。あー、思い出した。何か久しぶりに訊いたわね、お子さん生まれたんだ?」
「そうなんですよ。女の子。シモヤマさんのとこと同い年ですね~」
それから半月後。女子トイレの掃除をしていると、魚沼が話しかけてきた。
「萬木さん、お子さんが生まれたらしいですね」
「え? ああ、そうね。女の子らしいわね」
「そうなんですか? お詳しいですね」
「いいえー、たまたま聞いただけですよ」
会話はそこで終わった。
別の日。ゴミ袋をまとめていると、湯沸室から魚沼と同期の男性社員の話し声が聞こえてきた。
「萬木さんのとこ、お子さん生まれたって聞いたけど、いつ生まれたの?」
「え? いつだっけ…。今月の、4日だっけ? 8日だっけ? …何で?」
「なんとなく。ていうか、イワイくん連絡取り合ってたんだなーって思って」
「取り合ってねえよ。機種変して新しいメッセージアプリ入れたら、『知り合いかも』に上がってて、登録したら向こうがメッセージ寄越してきただけだし」
(何か、尋問してるように聞こえるぞ…?)
ゆず子は不穏な予感がした。
「何か、萬木さんのお子さんの事、根掘り葉掘り訊かれた」
「気になるんじゃない? 元彼の子供のこと」
「お祝いあげる気だったりして。あたしは名前聞かれたよ」
「彼氏居ても元彼気になるもんなの?」
「まあ、人によるけどね~」
(男には分からない女の事情ってあるわよね。あたしもちょっと気になるタイプだけど)
噂話を聞きつつ、ゆず子は少し笑った。
「…鳴瀬さん、女の子の名前で、『ず』と『づ』、どっちを使うのが一般的ですか?」
女子トイレ掃除の時、たまたま顔を合わせた魚沼は妙な事を口走った。
「え、どういう事?」
「友達がお産を控えてましてね、女の子らしいんですよ。だから平仮名の名前がいいって、友達が言ってて、候補にあるのが『いずみ』と『いづみ』らしいんですね。どっちかで決めかねてるんですって。私なんかに聞いてこられて」
魚沼は肩を竦めてみせた。ゆず子も返す。
「『ず』と『づ』ねえ…。漢字だったらまだしも、平仮名だったら私も分からないな」
「ですよね! うーん、出産祝いどうしようかなぁ」
魚沼はトイレを後にした。
魚沼は、その数か月後に転職のために会社を辞めた。結婚で辞めたかと思ったが、違うようだった。
魚沼の退職した翌週、掃除に入ったゆず子はゴミ箱の中に、変な物が入ってる事に気づいた。
(紙に包まれた小箱が2つ。に、しても重いな)
その小箱は、ご丁寧にも紙で二重に包まれ、ガムテープで封がされていた。振ると金属音が微かにする。
(ネジか何かの部品かな。確認しよう)
中を見たゆず子は、ゾッとした。
2センチ位の針が、無数に打ち付けられた、親指くらいの紙粘土が入っていたのだ。もう1つも、同様の状態だった。
(何これ。気持ち悪い!)
針を抜いて分別しようかと思ったゆず子は、あるものを見つけた。文字だった。
(『萬木みづき』ってあったな。確認してないけど、多分もう1個には『萬木みずき』って書いてあったんでしょうね)
ゆず子は、誰にも言わずに箱を処分した。きっと、箱を作成した本人も、まさか人に見られるとは思わなかっただろう。
(まあ、彼氏が居るのに元彼を気にし始めた段階で、予兆があったんでしょう。辞める理由が結婚でないのが、それを物語っているわ)
ゆず子はその会社の担当を外れたので、萬木の現在も娘の安否も知る由がない。
(いまどき、『呪い』みたいな物を信じる人がいることにびっくりよ。ネットで調べるのかしら?)
古今東西、呪いは第三者に見られると効力を失うと聞く。あの呪いは、恐らく効いてないのではないか。
(『人を呪わば穴二つ』って言うわね。魚沼さんも、元気でいらっしゃるといいけど)
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