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終了の男 ※子無し&妊活&マリッジハラスメント的表現あり
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「え、宝沢さんのとこ、不妊治療されていたんですか?」
「うん、やったよ」
ゆず子が会話の主を見やると、そこにはインテリアショップの店長:宝沢と副店長の近藤が居た。宝沢はカップ麵を啜り、続けた。
「嫁さん俺の5個上でさ。結婚当時34歳だから、籍入れると同時に病院行ったんだよ。妊娠出来るかどうかの検査ね。結果的に1年半で子供出来たんだけど、色々やったよ。漢方薬とか排卵日調べたりとか。勿論、俺の方の検査もやったしね」
かつて『試験管ベビー』と呼ばれた不妊治療は、近年は身近でも増えてよく聞く話となりつつある。統計ではこの2~3年は生まれた子の14人に1人は不妊治療で妊娠した子供、というぐらい割合が増えているとか。
(医療技術は発達してるのに、出生率は低いのよね。色々と要因はあるんだけども)
思いつつゆず子はゴミ袋を取り出す。
「検査とか、抵抗無かったんですか?友達のとこも、旦那さんが検査嫌がるから先に進めないみたいなんですよ」
近藤がそう言うと、宝沢は顔をしかめた。
「そりゃあ嫌だったよ。検査するブツ持って行くのも、数値が出るのもさ。でも子供欲しかったし、嫁さんも頑張ってた訳だし。俺からすりゃ、その旦那ダメだよ。覚悟足んな過ぎるし、他人事じゃん」
(お、珍しくまともでイイ事言ってる。経験者は違うのね)
ゆず子が感心していると、宝沢はこんな事を言った。
「西木もだな! あいつも頑張んないとダメだ」
(西木くん…、結婚でもしたのかしら)
西木と話す時は宝沢の愚痴がほとんどで、あまり込み入った自分の話はされた事がない。だとしても『結婚』ならば、他の同僚も口に出すだろう。
(あんまり自分の事は話したがらないタイプだから、直接聞くのは避けようかな)
そんな事を考えつつ仕事をしていると、休憩上がりの宝沢に出くわした。宝沢はゆず子を見ると、不機嫌そうな笑いを浮かべて話しかけてきた。
「お疲れさんです~。…鳴瀬さんて、うちの西木、分かりますっけ?」
「西木くん? ええ、知ってるけど」
「あいつ、本郷ちゃんと付き合ってるんだよ。こっそりと」
「へえ、付き合ってたんだ。いいわねえ」
すると、宝沢は苦虫を嚙み潰したような表情でまくし立てた。
「よくねえの! あいつ、仕事は適当するくせにやる事だけはいっちょ前だから、困るんだよ。コソコソと、4ヵ月も前から付き合ってたらしいよ! 職場でしれっとお互いに仕事してさぁ!」
(この人は何に怒っているの?秘密にされたこと?弟分に彼女が出来たこと?)
ゆず子は怒りの意味が分からず口を開いた。
「え、そちらって社内恋愛禁止なの? それに、2人とも別に未成年でもないでしょ? 仕事中に社内恋愛持ち込んでグダグダの職場、見た事いっぱいあるけど、互いにしれっと仕事してたんなら、ちゃんとわきまえててすごいじゃない」
「うんうん、確かに社内恋愛禁止でもないし、未成年でもないよ。でも一言いうべきじゃない? 仮でも『仲間』なんだよ!」
宝沢の言い分は、ゆず子には理解出来なかった。
「まあ、就業規則に『社内恋愛禁止』とか『社内恋愛は必ず報告』なんて項目があるなら、別だけど。プライベートのこと、口出しするのもねえ」
ゆず子が言うと、宝沢は釈然としない顔で去って行った。
社内恋愛には、鉄則が存在する。仕事に恋愛事情を持ち込まないことだ。上司と部下カップルなど上下関係があると、仕事の評価が依怙贔屓に繋がりやすい。
上手く行ってる時はいいが、恋愛でゴタゴタが起こると、わざと評価を下げるなどの腹いせにも繋がる。
そうでなくとも周囲の人に気を遣わせたり、職場のモラル低下を招くなどするので、『持ち込まない=内密にする』のが望ましい。
(宝沢店長が4ヵ月も気づかなかったって事は、若いのにそこら辺ちゃんとしてるって事よね。店長はそれが面白くないのかしら)
単純に、『お気に入り』だった本郷を取られての怒りなのかもしれないが。そんな折、ゆず子はある現場に居合わせる事となった。
バック通路の掃除をしていると、どこからか一方的に話す男の声が聞こえた。
「お前、いつ結婚すんの?」
「決めてませんが、その内にでもと考えてます」
窺うと、廊下の角の向こう、インテリアショップの店舗裏口辺りに宝沢と西木が居る様だ。2人はゴミ出しの準備か段ボール箱をまとめている。宝沢が言った。
「お前、中途半端だけはすんなよ。B店の鈴木さんみたいに、『結婚するする詐欺』で10年以上籍入れないとか、絶対やめろよ」
「しませんよ、そんな事。ちゃんと考えてますから」
いつものように、まくし立てる宝沢に対し、西木は淡々と答えている。すると宝沢はこんな事を口にした。
「じゃあ、いつするんだ? 今日の帰りか?…帰りに役場行って、とっとと用紙取って来いよ!」
(何という説教をしているのよ、宝沢店長ってば)
呆れるゆず子だが、見えない西木の様子が気にかかる。西木の声は聞こえない。宝沢は更に言う。
「…お前、今27だっけ? 俺、お前と同じ齢にカミさんと付き合い始めたんだよ」
(なになに?)
急な身の上話に、ゆず子は耳の神経を尖らせる。
「5個上じゃん?『こりゃあ、もたもたしてるとダメだな』ってんで、早々に結婚決めたよ。でないと子供産めなくなっから」
(う、うん)
「正直結婚してもいいけど子供作らねえとか、あり得ないっしょ。さっさと結婚して子供作れよ。本郷ちゃんを秋田さんとこみたいに、晩婚で子無しにするつもりか? 可哀想だろ、本郷ちゃん29なんだから、早くしないと産めなくなるぞ! 本郷ちゃんだって『子供産めたら産んでみたいです』言ってたぞ」
(ちょっと…)
ゆず子の眉間に皺が寄る。宝沢は続けた。
「お前次第なんだからさ、結婚も子供も。分かったらさっさと籍入れろよ、親にも会わせてさあ」
店舗にでも戻ったのか、ドアの閉まる音。西木はまだそこで作業しているのか、音は続いている。
(…何という言い草なのよ)
清掃業務のため、角の向こうへ足を踏み出すと、西木は持っていたボールペンをポケットにしまう所だった。
「お疲れ様です」
ゆず子に気づいた西木は顔色も変えず、いつものように淡々と挨拶をすると、重ねた段ボールをカートに載せて、ゴミ出しに向かった。
翌週。トイレ掃除中に本郷に会ったゆず子は、それとなく話しかけてみた。
「宝沢店長って、西木くんに結構当たり強いよね。この前見かけてびっくりしちゃった」
本郷は笑って答えた。
「まあ、唯一の男子ですから。仕方ないっすね!」
「そう? あたし見ててハラハラしたよ」
「あいつなら、ああ見えて図太いんで大丈夫ですよ~」
本郷は手を振ってトイレを後にした。
(多分、宝沢店長が西木くんにマリッジハラスメントしてるのは、彼女が居ない時だろうしね…)
楽天的な本郷と言えども、あの場に居合わせたら宝沢の言動を許すとは思えないのだが。
ゆず子が『それ』に気づいたのは、それから2か月ぐらいの頃だ。
(あれ?最近、彼を見かけない…?)
バック通路の掃除をしていると、ゴミ運搬中らしい西木を見つけたので、ゆず子は声を掛けた。
「お疲れさまです。…最近、おたくの店長見かけないけど、お休み?」
「店長すか? 根岸店長なら、いま店舗ですけど」
「ネギシさん?…宝沢さんは?」
ゆず子の言葉に、西木は少し皮肉な感じで鼻で笑った。
「ああ、前のね。異動になりました。…ヒラに降格です」
「降格…」
西木は足を止めると、ゆず子に言った。
「問題発言、多いのご存じですよね。身から出た錆で、処分を受けたんです」
「あら、そうだったのね」
ゆず子の脳裏に、数々の名言が浮かんで消える。西木はどこか遠くを見る様に言った。
「俺の父親、最低な男だったんですよ」
「え?」
「人に説明するのも嫌になるくらい、実の息子である俺や母親に、沢山酷い事してきたんです。簡単に言えば『虐待』ってのかな」
(何の話だろう?)
思いつつ、ゆず子は黙って耳を傾けた。
「俺、結婚しても、子供は持ちたくないんです。親になったら父親にされた事と同じような事、子供にしちゃいそうだから。俺の彼女は、その考えを受け入れて尊重してくれる、とてもいい人なんです」
西木はポケットからボールペンを取り出し、弄り始める。ゆず子は頷いた。
「そうなの。尊重してくれるのは、とてもいいわね」
西木はも頷いた。
「ええ。彼女にはとても救われています。だから、そんな彼女に『結婚しても子供要らないって考え方はおかしい』とかいちゃもんつけられるの、とても嫌だったんです。…不思議っすよね、何言われても右から左だったのに」
西木は少し笑った。
(もしかして…、懺悔なの?)
「…大切な人の為に何かしたいって言うのは、悪い事とは思わないよ。あなたが行動しなかったとしても、彼はそれ相応の事が起こったと思う」
ゆず子が言うと、西木は弄っていたペンをポケットに戻した。
「…ありがとうございます。では」
万事に無気力そうで、何も行動を起こさなそうに見える若者だが、スイッチが無いわけではない。その勇気は、愛する人を守れる強さに変わるのだ。
「うん、やったよ」
ゆず子が会話の主を見やると、そこにはインテリアショップの店長:宝沢と副店長の近藤が居た。宝沢はカップ麵を啜り、続けた。
「嫁さん俺の5個上でさ。結婚当時34歳だから、籍入れると同時に病院行ったんだよ。妊娠出来るかどうかの検査ね。結果的に1年半で子供出来たんだけど、色々やったよ。漢方薬とか排卵日調べたりとか。勿論、俺の方の検査もやったしね」
かつて『試験管ベビー』と呼ばれた不妊治療は、近年は身近でも増えてよく聞く話となりつつある。統計ではこの2~3年は生まれた子の14人に1人は不妊治療で妊娠した子供、というぐらい割合が増えているとか。
(医療技術は発達してるのに、出生率は低いのよね。色々と要因はあるんだけども)
思いつつゆず子はゴミ袋を取り出す。
「検査とか、抵抗無かったんですか?友達のとこも、旦那さんが検査嫌がるから先に進めないみたいなんですよ」
近藤がそう言うと、宝沢は顔をしかめた。
「そりゃあ嫌だったよ。検査するブツ持って行くのも、数値が出るのもさ。でも子供欲しかったし、嫁さんも頑張ってた訳だし。俺からすりゃ、その旦那ダメだよ。覚悟足んな過ぎるし、他人事じゃん」
(お、珍しくまともでイイ事言ってる。経験者は違うのね)
ゆず子が感心していると、宝沢はこんな事を言った。
「西木もだな! あいつも頑張んないとダメだ」
(西木くん…、結婚でもしたのかしら)
西木と話す時は宝沢の愚痴がほとんどで、あまり込み入った自分の話はされた事がない。だとしても『結婚』ならば、他の同僚も口に出すだろう。
(あんまり自分の事は話したがらないタイプだから、直接聞くのは避けようかな)
そんな事を考えつつ仕事をしていると、休憩上がりの宝沢に出くわした。宝沢はゆず子を見ると、不機嫌そうな笑いを浮かべて話しかけてきた。
「お疲れさんです~。…鳴瀬さんて、うちの西木、分かりますっけ?」
「西木くん? ええ、知ってるけど」
「あいつ、本郷ちゃんと付き合ってるんだよ。こっそりと」
「へえ、付き合ってたんだ。いいわねえ」
すると、宝沢は苦虫を嚙み潰したような表情でまくし立てた。
「よくねえの! あいつ、仕事は適当するくせにやる事だけはいっちょ前だから、困るんだよ。コソコソと、4ヵ月も前から付き合ってたらしいよ! 職場でしれっとお互いに仕事してさぁ!」
(この人は何に怒っているの?秘密にされたこと?弟分に彼女が出来たこと?)
ゆず子は怒りの意味が分からず口を開いた。
「え、そちらって社内恋愛禁止なの? それに、2人とも別に未成年でもないでしょ? 仕事中に社内恋愛持ち込んでグダグダの職場、見た事いっぱいあるけど、互いにしれっと仕事してたんなら、ちゃんとわきまえててすごいじゃない」
「うんうん、確かに社内恋愛禁止でもないし、未成年でもないよ。でも一言いうべきじゃない? 仮でも『仲間』なんだよ!」
宝沢の言い分は、ゆず子には理解出来なかった。
「まあ、就業規則に『社内恋愛禁止』とか『社内恋愛は必ず報告』なんて項目があるなら、別だけど。プライベートのこと、口出しするのもねえ」
ゆず子が言うと、宝沢は釈然としない顔で去って行った。
社内恋愛には、鉄則が存在する。仕事に恋愛事情を持ち込まないことだ。上司と部下カップルなど上下関係があると、仕事の評価が依怙贔屓に繋がりやすい。
上手く行ってる時はいいが、恋愛でゴタゴタが起こると、わざと評価を下げるなどの腹いせにも繋がる。
そうでなくとも周囲の人に気を遣わせたり、職場のモラル低下を招くなどするので、『持ち込まない=内密にする』のが望ましい。
(宝沢店長が4ヵ月も気づかなかったって事は、若いのにそこら辺ちゃんとしてるって事よね。店長はそれが面白くないのかしら)
単純に、『お気に入り』だった本郷を取られての怒りなのかもしれないが。そんな折、ゆず子はある現場に居合わせる事となった。
バック通路の掃除をしていると、どこからか一方的に話す男の声が聞こえた。
「お前、いつ結婚すんの?」
「決めてませんが、その内にでもと考えてます」
窺うと、廊下の角の向こう、インテリアショップの店舗裏口辺りに宝沢と西木が居る様だ。2人はゴミ出しの準備か段ボール箱をまとめている。宝沢が言った。
「お前、中途半端だけはすんなよ。B店の鈴木さんみたいに、『結婚するする詐欺』で10年以上籍入れないとか、絶対やめろよ」
「しませんよ、そんな事。ちゃんと考えてますから」
いつものように、まくし立てる宝沢に対し、西木は淡々と答えている。すると宝沢はこんな事を口にした。
「じゃあ、いつするんだ? 今日の帰りか?…帰りに役場行って、とっとと用紙取って来いよ!」
(何という説教をしているのよ、宝沢店長ってば)
呆れるゆず子だが、見えない西木の様子が気にかかる。西木の声は聞こえない。宝沢は更に言う。
「…お前、今27だっけ? 俺、お前と同じ齢にカミさんと付き合い始めたんだよ」
(なになに?)
急な身の上話に、ゆず子は耳の神経を尖らせる。
「5個上じゃん?『こりゃあ、もたもたしてるとダメだな』ってんで、早々に結婚決めたよ。でないと子供産めなくなっから」
(う、うん)
「正直結婚してもいいけど子供作らねえとか、あり得ないっしょ。さっさと結婚して子供作れよ。本郷ちゃんを秋田さんとこみたいに、晩婚で子無しにするつもりか? 可哀想だろ、本郷ちゃん29なんだから、早くしないと産めなくなるぞ! 本郷ちゃんだって『子供産めたら産んでみたいです』言ってたぞ」
(ちょっと…)
ゆず子の眉間に皺が寄る。宝沢は続けた。
「お前次第なんだからさ、結婚も子供も。分かったらさっさと籍入れろよ、親にも会わせてさあ」
店舗にでも戻ったのか、ドアの閉まる音。西木はまだそこで作業しているのか、音は続いている。
(…何という言い草なのよ)
清掃業務のため、角の向こうへ足を踏み出すと、西木は持っていたボールペンをポケットにしまう所だった。
「お疲れ様です」
ゆず子に気づいた西木は顔色も変えず、いつものように淡々と挨拶をすると、重ねた段ボールをカートに載せて、ゴミ出しに向かった。
翌週。トイレ掃除中に本郷に会ったゆず子は、それとなく話しかけてみた。
「宝沢店長って、西木くんに結構当たり強いよね。この前見かけてびっくりしちゃった」
本郷は笑って答えた。
「まあ、唯一の男子ですから。仕方ないっすね!」
「そう? あたし見ててハラハラしたよ」
「あいつなら、ああ見えて図太いんで大丈夫ですよ~」
本郷は手を振ってトイレを後にした。
(多分、宝沢店長が西木くんにマリッジハラスメントしてるのは、彼女が居ない時だろうしね…)
楽天的な本郷と言えども、あの場に居合わせたら宝沢の言動を許すとは思えないのだが。
ゆず子が『それ』に気づいたのは、それから2か月ぐらいの頃だ。
(あれ?最近、彼を見かけない…?)
バック通路の掃除をしていると、ゴミ運搬中らしい西木を見つけたので、ゆず子は声を掛けた。
「お疲れさまです。…最近、おたくの店長見かけないけど、お休み?」
「店長すか? 根岸店長なら、いま店舗ですけど」
「ネギシさん?…宝沢さんは?」
ゆず子の言葉に、西木は少し皮肉な感じで鼻で笑った。
「ああ、前のね。異動になりました。…ヒラに降格です」
「降格…」
西木は足を止めると、ゆず子に言った。
「問題発言、多いのご存じですよね。身から出た錆で、処分を受けたんです」
「あら、そうだったのね」
ゆず子の脳裏に、数々の名言が浮かんで消える。西木はどこか遠くを見る様に言った。
「俺の父親、最低な男だったんですよ」
「え?」
「人に説明するのも嫌になるくらい、実の息子である俺や母親に、沢山酷い事してきたんです。簡単に言えば『虐待』ってのかな」
(何の話だろう?)
思いつつ、ゆず子は黙って耳を傾けた。
「俺、結婚しても、子供は持ちたくないんです。親になったら父親にされた事と同じような事、子供にしちゃいそうだから。俺の彼女は、その考えを受け入れて尊重してくれる、とてもいい人なんです」
西木はポケットからボールペンを取り出し、弄り始める。ゆず子は頷いた。
「そうなの。尊重してくれるのは、とてもいいわね」
西木はも頷いた。
「ええ。彼女にはとても救われています。だから、そんな彼女に『結婚しても子供要らないって考え方はおかしい』とかいちゃもんつけられるの、とても嫌だったんです。…不思議っすよね、何言われても右から左だったのに」
西木は少し笑った。
(もしかして…、懺悔なの?)
「…大切な人の為に何かしたいって言うのは、悪い事とは思わないよ。あなたが行動しなかったとしても、彼はそれ相応の事が起こったと思う」
ゆず子が言うと、西木は弄っていたペンをポケットに戻した。
「…ありがとうございます。では」
万事に無気力そうで、何も行動を起こさなそうに見える若者だが、スイッチが無いわけではない。その勇気は、愛する人を守れる強さに変わるのだ。
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