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禁断の恋 ※教師による未成年への淫行?表現あり
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『禁断の恋』というものがある。許されざる者同士の恋、というものは色んな作品の一ジャンルとして、太古の昔から現代に至るまで、多種多様な物語が生み出されてきた。
昨今は人同士だけではなく、人と人ならざる者、人と動物、人と幽霊など、ファンタジーじみた作品も多い。もはや、人と恋愛の出来ない対象は存在しないのではないか。
そのジャンルの何が、人をこんなに惹きつけるのだろう。
「…何か、モヤる話があってさぁ」
カフェテリア白樫。ボックス席のゆず子の前の席、カフェオレ色のヘアクリップをつけた若い女が、向かいに座る大学生くらいの女子2人に問うた。
アイスティー色の髪色をした女が口を開く。
「何かあったの?」
アイスティーの隣に座る、キャラメル色をしたフレームの眼鏡をかけた女も言った。
「バ先か何か?」
「高校の時の先生絡みなんだ。気になる話聞いて、いま思うとあれ?って感じのやつ」
カフェオレの女は笑って答えた。
(顔は見えないけど、大学生くらいかな?そんなに昔の話でも無さそうね)
ゆず子は耳だけ集中し、無関心な顔で珈琲を口にした。
「えー、気になる。どんなん?」
アイスティーの女が言うと、カフェオレの女は一瞬黙り込んだ後、口を開いた。
「高2の時に、数学の先生が産休になるからって、途中で新しい先生になったのね。非常勤講師として所属していた先生で。教員採用試験に落ちていて、次年度の試験待ちの状態って言うのかな? 結局、次の年に試験受かって、正規採用になった、そういう先生だったんだ」
「あー。聞くよね、そういう話。非常勤で入ってた高校で正規になったの?」
「まあ、定年とかで辞めた人も居たから、そうなったんだろうね」
カフェオレの女は飲み物を飲んで、更に続けた。
「その先生…、ハシモト先生ってのが、お笑い芸人のAに似た感じでさ。背もあまり高くなくて、夜に外を出歩いていると、お巡りさんに未成年と勘違いされて話かけられるタイプなの」
するとアイスティーとキャラメルは笑って頷いた。
「あー、何か分かる。ザ・中学生って感じなんだ」
「確かに、Aみたいなおじさんもたまに居るね」
「そうなの。Aは芸風のせいか『芋』だけど、ハシモト先生はもうちょっと垢抜けてるっていうか、女子受け意識してるって言うか。だから、ハシモト先生の熱心なファンも居たんだよね」
「母性本能強い人とか、好きそうな顔立ちではあるかな? ハルはどうだったの?」
キャラメルが尋ねると、カフェオレは首を竦めた。
「まさか。あたしはずっと例の男性アイドル推し。…何かね、その先生の事、あまりいい気がしなくてさ」
「おや、フラグですか?」
アイスティーがカップを持ちつつ言うと、カフェオレは笑って続けた。
「アハハ! …それで、高校の時に仲良かった子が居て、その子が見事先生にハマっちゃってさ。色々付き合わされたよ~。
『先生に分からないとこ、聞きに行こ!』『テスト範囲の事を質問に行こ!』で、休み時間中ずっとその子が先生と話してるの、傍で立ってただ待つっていう」
(高校生の女子なんて、集団行動の生き物だから、付き合わされるのよね。自分は何とも思わない友達の思い人を一緒に待ち伏せしたり、恋敵を出し抜く方法を考える会議をしたり)
自分の青春時代を回想し、ゆず子は少し微笑んだ。
アイスティーが苦笑した。
「『何なんだろう、この時間』ってなるよね」
「好きなのは自分なんだから、1人でやってよ~ってなるね」
キャラメルも言うと、カフェオレは頷いた。
「本当、それ。しまいには先生からも『今日は相方休みか?』なんて、顔を覚えられるしさ。友達はあんたを好きでも、あたしは興味無いんだから放っておいてよ! って感じ」
(この彼女の友達は、彼女と一緒に行く事で顔を覚えて貰う作戦なのね。賢いというか幼いというか)
ゆず子は記入の手を止め、頬杖をついた。
カフェオレは言った。
「それで、年度が変わって正規採用になった。で、書道部の副顧問になったかな。そしたら3年なのに友達は入部したの。勿論、ハシモト先生目当てでね」
アイスティーとキャラメルは苦笑した。
「まあ、そうなるよね」
「『一緒に入ろ』って誘われたり?」
「バイトしてたし断ったよ。そんでしばらく楽しく部活してたけど、ある時に切羽詰まった感じで言われてさ。『書道展が近いけど、どうしても今日は休みたい。顧問に休むって言いに行くの、一緒に付き合って』って」
ゆず子は拍子抜けした。
(今まで、付き添いがなくても部活動に行ってたのに?副顧問の先生と話しすぎて、正顧問に怒られたのかしら?)
キャラメルは首を傾げた。
「顧問、怖い先生なの?」
「いや。生徒指導も兼ねてるけど、比較的ルール守ってる生徒には優しいよ。だから、あたしもどうしたの? って聞いたんだけど、『ほんとごめん、どうしてもついてきて欲しい』ばっかりでさ。だから一緒について行って、その子が顧問に言うの見届けた」
「何か怒られて気まずかったのかな?」
アイスティーが言うと、カフェオレは言った。
「で、連絡し終えて戻る時に友達が『…昨日、ハシモト先生と教室に居るの、あの先生に見られたんだ』って、ボソッと言ったの」
(ん?)
思わずゆず子の手が止まる。アイスティーも言った。
「どういう事?」
「あたしも一瞬意味が分からなくて、『え?教室?部活動なら当然でしょ?』って返したら、黙り込んじゃって」
何かを察したキャラメルが目を鋭くさせる。
「…生徒指導も兼ねてる顧問は、その後どうしたの?」
「普通。何も言ってこない。休みの連絡をした時も、特に何か言うでもなく『おう、分かった。大丈夫か?無理すんなよ』みたいな感じだった」
「…そっか」
キャラメルは、何かを思案する表情を浮かべていた。カフェオレは口を開いた。
「休んだのはその日だけで、次の日からまた普通になった。でも変わったのが、それからあまり部活に行かなくなったんだ。
書道部自体が、夏前の書道展が終わったら3年は引退って形式なのもあるけど、引退後も入り浸る人も居るし、副顧問が好きなのにどうしたんだろ?って思ってたんだよね。
そしたら『バイト始めて、年上の彼氏が出来た』って言われたんだよね」
アイスティーが首を竦める。
「『乗り換え』かぁ。おおかた告白してフラれて、それを顧問に見られてたのかな?」
キャラメルとアイスティーは顔を見合わせて笑った。カフェオレは頷きつつ話を続けた。
「新しい彼氏は会った事ないけど、まあ上手く行ってたのかな。
『彼氏と旅行に行くから、親への口裏合わせをして!』って頼まれたけど、行く前に親バレして中止。そしたら『ハルがもっとちゃんとしてくれたら、キャンセルにならなかったのに!』って八つ当たりされて、それであたしもキレて、それっきり。
3年の秋からずっと連絡も取って無いし、SNSもフォローも全解除したんだ」
アイスティーは前のめりで言った。
「当たりたい気持ちは分かるけど、それはハルのせいじゃないよね。親に内緒でやる方が悪いに決まってるじゃん?」
「切って正解の相手だよ。そんなん、友達じゃない」
キャラメルも両手で飲み物を持って口を添えた。カフェオレは身体を背もたれに預けた。
「…ありがとう。切ってすぐは『あたしも悪いとこあったかな』って凹んでたけどさ。やっぱ、これで良かったんだね」
「そんで、その子。その後どうなったの?」
アイスティーの問いに、カフェオレは事も無げに答えた。
「学校、休みがちになっちゃったんだ。連絡取らなくなったからよくわからないけど、バイトと彼氏に精を出し過ぎて、体調崩して入院したとか。
出席日数ギリギリで、何とか卒業したみたいで、今は何してるか知らない。SNSの検索でもすれば出て来るかもだけど」
(青春を注いだ彼氏と、まだ仲良くしているといいけどね)
ゆず子は珈琲を口にした。すると、カフェオレは自身のスマホを弄り、アイスティーとキャラメルに何かを見せた。
「ん? これ何?」
「『県立高校の教諭が、教え子の女子生徒と性的関係を持ち、懲戒免職』?」
アイスティーが読み上げると、カフェオレは言った。
「後輩から、この記事の教師ってハシモト先生だよって教えられたの」
アイスティーとキャラメルは、ドン引きの悲鳴を小さく上げた。
「えー、あのフラグ、これだったんだ…」
「ガチなの? まさか相手って」
カフェオレは腕組みをした。
「後輩が言うには、『体調不良のためハシモト先生はしばらく休みます』って通達があって、半月後に『回復の目途がつかないので、退職します』って言われたんだって。
でも、後輩の間では『距離の近過ぎるお気に入り女子生徒が卒業生に居た』って前から噂があったみたいで、実質クロ認定されてるみたい」
カフェオレは飲み物を口にした後、更に続けた。
「発覚は『付き合っている彼女が高校生の時に、通ってた高校の先生と男女の関係だったらしく、教育委員会に交際相手が情報提供した』って話なんだ。
色々調べたけど、懲戒になる対象って事の発端から3年以内らしくて、そうすると友達のおかしくなった時期と被るし、計算も合うんだよね」
(『嫉妬』が発端か…。事が事だから懲戒免職になるよね)
ゆず子は眉根を寄せた。
アイスティーはふと口を開く。
「友達の言ってた『年上彼氏』って、その先生? それとも密告した彼氏?」
「わっかんないだよね。ただ、その先生は友達が部活休みがちになった少し後に『8年付き合った彼女』と結婚してるんだ」
「えー、何それ。付き合って長い彼女も居ながら、教え子にも手を出してたの?」
キャラメルが口を尖らす。
「そこもちょっとねえ。『彼女の存在』を知って、ショックで行かなくなったとも考えられるし、『付き合う』事になったから、わざわざ部活に行って会う必要無くなった、とも考えられるから。
…まさか旅行誘ったの、先生じゃないよね? ってあたしはモヤモヤしてるけど」
「まあ、その女子生徒がハルの友達って確定した訳でもないしね」
アイスティーが言うと、3人は頷いて飲み物を口にした。
友達は、その時教室で件の教師と何があったのか。それを目撃しただろう、生徒の生活指導役も務めていた顧問は、何故に何も言わなかったのか。
目撃されたと焦ったのは勘違いで、顧問は何も見たり聞いたりしていなかったのかも?もしくは、友達がこれ以上の深入りを避けてくれると信じて、顧問は敢えて黙認したのか?
いま考えれば黙認は、2人の人間の人生を予想外に変えてしまった、誤った選択だったのではないか?
『禁断の恋』。現実には、手を1度でも出してしまえば、例え終わった後でも非常にリスクの高いものなのである。
昨今は人同士だけではなく、人と人ならざる者、人と動物、人と幽霊など、ファンタジーじみた作品も多い。もはや、人と恋愛の出来ない対象は存在しないのではないか。
そのジャンルの何が、人をこんなに惹きつけるのだろう。
「…何か、モヤる話があってさぁ」
カフェテリア白樫。ボックス席のゆず子の前の席、カフェオレ色のヘアクリップをつけた若い女が、向かいに座る大学生くらいの女子2人に問うた。
アイスティー色の髪色をした女が口を開く。
「何かあったの?」
アイスティーの隣に座る、キャラメル色をしたフレームの眼鏡をかけた女も言った。
「バ先か何か?」
「高校の時の先生絡みなんだ。気になる話聞いて、いま思うとあれ?って感じのやつ」
カフェオレの女は笑って答えた。
(顔は見えないけど、大学生くらいかな?そんなに昔の話でも無さそうね)
ゆず子は耳だけ集中し、無関心な顔で珈琲を口にした。
「えー、気になる。どんなん?」
アイスティーの女が言うと、カフェオレの女は一瞬黙り込んだ後、口を開いた。
「高2の時に、数学の先生が産休になるからって、途中で新しい先生になったのね。非常勤講師として所属していた先生で。教員採用試験に落ちていて、次年度の試験待ちの状態って言うのかな? 結局、次の年に試験受かって、正規採用になった、そういう先生だったんだ」
「あー。聞くよね、そういう話。非常勤で入ってた高校で正規になったの?」
「まあ、定年とかで辞めた人も居たから、そうなったんだろうね」
カフェオレの女は飲み物を飲んで、更に続けた。
「その先生…、ハシモト先生ってのが、お笑い芸人のAに似た感じでさ。背もあまり高くなくて、夜に外を出歩いていると、お巡りさんに未成年と勘違いされて話かけられるタイプなの」
するとアイスティーとキャラメルは笑って頷いた。
「あー、何か分かる。ザ・中学生って感じなんだ」
「確かに、Aみたいなおじさんもたまに居るね」
「そうなの。Aは芸風のせいか『芋』だけど、ハシモト先生はもうちょっと垢抜けてるっていうか、女子受け意識してるって言うか。だから、ハシモト先生の熱心なファンも居たんだよね」
「母性本能強い人とか、好きそうな顔立ちではあるかな? ハルはどうだったの?」
キャラメルが尋ねると、カフェオレは首を竦めた。
「まさか。あたしはずっと例の男性アイドル推し。…何かね、その先生の事、あまりいい気がしなくてさ」
「おや、フラグですか?」
アイスティーがカップを持ちつつ言うと、カフェオレは笑って続けた。
「アハハ! …それで、高校の時に仲良かった子が居て、その子が見事先生にハマっちゃってさ。色々付き合わされたよ~。
『先生に分からないとこ、聞きに行こ!』『テスト範囲の事を質問に行こ!』で、休み時間中ずっとその子が先生と話してるの、傍で立ってただ待つっていう」
(高校生の女子なんて、集団行動の生き物だから、付き合わされるのよね。自分は何とも思わない友達の思い人を一緒に待ち伏せしたり、恋敵を出し抜く方法を考える会議をしたり)
自分の青春時代を回想し、ゆず子は少し微笑んだ。
アイスティーが苦笑した。
「『何なんだろう、この時間』ってなるよね」
「好きなのは自分なんだから、1人でやってよ~ってなるね」
キャラメルも言うと、カフェオレは頷いた。
「本当、それ。しまいには先生からも『今日は相方休みか?』なんて、顔を覚えられるしさ。友達はあんたを好きでも、あたしは興味無いんだから放っておいてよ! って感じ」
(この彼女の友達は、彼女と一緒に行く事で顔を覚えて貰う作戦なのね。賢いというか幼いというか)
ゆず子は記入の手を止め、頬杖をついた。
カフェオレは言った。
「それで、年度が変わって正規採用になった。で、書道部の副顧問になったかな。そしたら3年なのに友達は入部したの。勿論、ハシモト先生目当てでね」
アイスティーとキャラメルは苦笑した。
「まあ、そうなるよね」
「『一緒に入ろ』って誘われたり?」
「バイトしてたし断ったよ。そんでしばらく楽しく部活してたけど、ある時に切羽詰まった感じで言われてさ。『書道展が近いけど、どうしても今日は休みたい。顧問に休むって言いに行くの、一緒に付き合って』って」
ゆず子は拍子抜けした。
(今まで、付き添いがなくても部活動に行ってたのに?副顧問の先生と話しすぎて、正顧問に怒られたのかしら?)
キャラメルは首を傾げた。
「顧問、怖い先生なの?」
「いや。生徒指導も兼ねてるけど、比較的ルール守ってる生徒には優しいよ。だから、あたしもどうしたの? って聞いたんだけど、『ほんとごめん、どうしてもついてきて欲しい』ばっかりでさ。だから一緒について行って、その子が顧問に言うの見届けた」
「何か怒られて気まずかったのかな?」
アイスティーが言うと、カフェオレは言った。
「で、連絡し終えて戻る時に友達が『…昨日、ハシモト先生と教室に居るの、あの先生に見られたんだ』って、ボソッと言ったの」
(ん?)
思わずゆず子の手が止まる。アイスティーも言った。
「どういう事?」
「あたしも一瞬意味が分からなくて、『え?教室?部活動なら当然でしょ?』って返したら、黙り込んじゃって」
何かを察したキャラメルが目を鋭くさせる。
「…生徒指導も兼ねてる顧問は、その後どうしたの?」
「普通。何も言ってこない。休みの連絡をした時も、特に何か言うでもなく『おう、分かった。大丈夫か?無理すんなよ』みたいな感じだった」
「…そっか」
キャラメルは、何かを思案する表情を浮かべていた。カフェオレは口を開いた。
「休んだのはその日だけで、次の日からまた普通になった。でも変わったのが、それからあまり部活に行かなくなったんだ。
書道部自体が、夏前の書道展が終わったら3年は引退って形式なのもあるけど、引退後も入り浸る人も居るし、副顧問が好きなのにどうしたんだろ?って思ってたんだよね。
そしたら『バイト始めて、年上の彼氏が出来た』って言われたんだよね」
アイスティーが首を竦める。
「『乗り換え』かぁ。おおかた告白してフラれて、それを顧問に見られてたのかな?」
キャラメルとアイスティーは顔を見合わせて笑った。カフェオレは頷きつつ話を続けた。
「新しい彼氏は会った事ないけど、まあ上手く行ってたのかな。
『彼氏と旅行に行くから、親への口裏合わせをして!』って頼まれたけど、行く前に親バレして中止。そしたら『ハルがもっとちゃんとしてくれたら、キャンセルにならなかったのに!』って八つ当たりされて、それであたしもキレて、それっきり。
3年の秋からずっと連絡も取って無いし、SNSもフォローも全解除したんだ」
アイスティーは前のめりで言った。
「当たりたい気持ちは分かるけど、それはハルのせいじゃないよね。親に内緒でやる方が悪いに決まってるじゃん?」
「切って正解の相手だよ。そんなん、友達じゃない」
キャラメルも両手で飲み物を持って口を添えた。カフェオレは身体を背もたれに預けた。
「…ありがとう。切ってすぐは『あたしも悪いとこあったかな』って凹んでたけどさ。やっぱ、これで良かったんだね」
「そんで、その子。その後どうなったの?」
アイスティーの問いに、カフェオレは事も無げに答えた。
「学校、休みがちになっちゃったんだ。連絡取らなくなったからよくわからないけど、バイトと彼氏に精を出し過ぎて、体調崩して入院したとか。
出席日数ギリギリで、何とか卒業したみたいで、今は何してるか知らない。SNSの検索でもすれば出て来るかもだけど」
(青春を注いだ彼氏と、まだ仲良くしているといいけどね)
ゆず子は珈琲を口にした。すると、カフェオレは自身のスマホを弄り、アイスティーとキャラメルに何かを見せた。
「ん? これ何?」
「『県立高校の教諭が、教え子の女子生徒と性的関係を持ち、懲戒免職』?」
アイスティーが読み上げると、カフェオレは言った。
「後輩から、この記事の教師ってハシモト先生だよって教えられたの」
アイスティーとキャラメルは、ドン引きの悲鳴を小さく上げた。
「えー、あのフラグ、これだったんだ…」
「ガチなの? まさか相手って」
カフェオレは腕組みをした。
「後輩が言うには、『体調不良のためハシモト先生はしばらく休みます』って通達があって、半月後に『回復の目途がつかないので、退職します』って言われたんだって。
でも、後輩の間では『距離の近過ぎるお気に入り女子生徒が卒業生に居た』って前から噂があったみたいで、実質クロ認定されてるみたい」
カフェオレは飲み物を口にした後、更に続けた。
「発覚は『付き合っている彼女が高校生の時に、通ってた高校の先生と男女の関係だったらしく、教育委員会に交際相手が情報提供した』って話なんだ。
色々調べたけど、懲戒になる対象って事の発端から3年以内らしくて、そうすると友達のおかしくなった時期と被るし、計算も合うんだよね」
(『嫉妬』が発端か…。事が事だから懲戒免職になるよね)
ゆず子は眉根を寄せた。
アイスティーはふと口を開く。
「友達の言ってた『年上彼氏』って、その先生? それとも密告した彼氏?」
「わっかんないだよね。ただ、その先生は友達が部活休みがちになった少し後に『8年付き合った彼女』と結婚してるんだ」
「えー、何それ。付き合って長い彼女も居ながら、教え子にも手を出してたの?」
キャラメルが口を尖らす。
「そこもちょっとねえ。『彼女の存在』を知って、ショックで行かなくなったとも考えられるし、『付き合う』事になったから、わざわざ部活に行って会う必要無くなった、とも考えられるから。
…まさか旅行誘ったの、先生じゃないよね? ってあたしはモヤモヤしてるけど」
「まあ、その女子生徒がハルの友達って確定した訳でもないしね」
アイスティーが言うと、3人は頷いて飲み物を口にした。
友達は、その時教室で件の教師と何があったのか。それを目撃しただろう、生徒の生活指導役も務めていた顧問は、何故に何も言わなかったのか。
目撃されたと焦ったのは勘違いで、顧問は何も見たり聞いたりしていなかったのかも?もしくは、友達がこれ以上の深入りを避けてくれると信じて、顧問は敢えて黙認したのか?
いま考えれば黙認は、2人の人間の人生を予想外に変えてしまった、誤った選択だったのではないか?
『禁断の恋』。現実には、手を1度でも出してしまえば、例え終わった後でも非常にリスクの高いものなのである。
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