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『お前100までわしゃ99まで、ともに白髪が生えるまで』…。
誰が言った言葉なのだろう。そもそも歌だったっけ、何の時に聞いた文言だっただろうか。うろ覚えだが、いい言葉である。
ゆず子には、最近気になるものがある。ひと月くらい前から、退勤途中でよく見かける老夫婦がいるのだ。
「ミツトシさん、いい天気ね」
「そうだね」
「お洗濯物が、よく乾きそうね」
「そうだね、いっぱい干してきたからね」
妻の乗った車椅子を押す夫が、2人で仲睦まじく散歩しているのだ。
(2人とも80代くらいかな。何か、見てると癒されるなあ)
妻はいつも明るい声で夫に話しかけ、夫はにこやかに相槌を打っている。
(こういう熟年夫婦って憧れるわね。とても仲がいいのね)
2人はいつも信号を渡り、その先の突き当りへ行き、黒い屋根に薄茶色の壁の2階建ての一軒家へ入っていくのだ。
(2人暮らしかな。洗濯物は2階のベランダではなく、1階の庭先に干している。奥さん車椅子って事は、家の中の事は旦那さんやヘルパーさんがやってるのかな)
年配の人間は、歩けても階段の昇り降りが年々辛くなってくるものだ。
干したり取り込む必要のある洗濯物は、移動距離の少ない1階部分に干すようになる。
(どの程度ヘルパーさんに任せているか知らないけど、旦那さんも献身的にやっている家なのかな。この年代で珍しいこと)
80歳代くらいだと『男は台所に入らず思考』が1番濃かった年代なので、妻が倒れたとしても夫が家事をやる事はほとんど無く、家事代行を外注(娘に来てもらう&食事の宅配サービス利用)するのが多いかもしれない。
(まあむしろ、男が家事をやると逆に非難された時代だからね。それにかまける事なく、変化に合わせて対応するのはすごい事よね)
感心するのは、妻の服装にもある。妻自身が選んでいるのかもしれないが、いつも可愛らしい服を着ていて、その服もちゃんと手入れが行き届いてるのだ。
(男の人が服を管理する場合、『取りあえず着れる状態にすりゃOK』って感じだから、毛玉とかシワや裾ほつれは二の次なんだけど、奥様ちゃんとした物を着てるのね。旦那さんもそうだわ)
もしかしたら外での移動が車椅子なだけで、屋内では妻が自力で動けるのかもしれない。衣服の管理は妻か、或いは夫が几帳面な性格か。
(まあ、どちらにせよ、このご夫婦の仲が良いのは確かね。羨ましいわ)
ゆず子は2人を見かける度、そう思うのだった。
「たまに帰る時にね、とっても仲が良いご夫婦を見かけるのよ。何か、見てるだけで癒されるって言うか」
「へえ」
マンションの清掃業務後、管理人室でのお茶を頂きながらゆず子が例の夫婦の話をすると、津山と善市郎は感心して聞いていた。
津山は言った。
「この齢になって『夫婦円満』が羨ましいって、ようやく思えるようになってきたわ。少し前までは『あんなの嘘ばっか』ってやさぐれてたんだけどね」
バツイチ独身の津山は笑った。定年直前に妻を亡くし、その後独身の善市郎も言った。
「仲いい人達は、本当に最初から最期まで仲いいよな。逆に、色々あったから晩年に仲が良くなった夫婦も居るわな。俺の知り合いも居たわ、負債を抱えたのがきっかけで仲が良くなった夫婦」
「何それ、逆じゃない?」
津山がキョトンとすると、善市郎は言った。
「子供の教育費と商売の負債がかさんでさ。『家と土地売って、アパート借りるか』って、査定したら全然安くて、むしろアパート借りる方が高くつくってなって。
だから、家に住み続けた状態で、夫婦一丸でお金関係を徹底的に調べて、節約して仕事も頑張って何とかしたんだと」
「そういうケースもあるんだ。売らない方が良いのもあるのね」
ゆず子はかりんとうを口にした。津山は言った。
「私達とか、それより上の年代って、『理不尽に耐えそのんでこその結婚生活』ってのが美徳とされたでしょ? 今の夫婦が羨ましいよ。
言いたいこと言っていいし、男女も平等だし、子供居ようが居まいが、親と同居するしないも選び放題だもん」
「そうよねえ。私達の時代と真逆よね~」
津山は茶を啜った後、口を開いた。
「そう言えばさ、あたしの小っちゃい頃に、近所であったらしいよ」
「何が?」
「『種』を貰って、離婚を回避したかもしれない夫婦」
津山のニヤニヤ顔が、『種』がどういう意味かを物語っている。津山は続けた。
「結婚してから3年経っても、子宝に恵まれない夫婦が居てさ。その頃って『嫁して三年、子無きは去れ』なんて、子供出来ないだけで一方的に嫁に、離婚告げていい時代だったじゃない?
だから嫁さん、肩身の狭い思いしていてさ」
「…今でもあるけどな、そういう家」
「そうね、完全に無くなってはいないよね」
善市郎とゆず子がそう言うと、津山は頷いた。
「そうだね。多分、そこの夫婦は旦那に原因があったんじゃないかな? 昔は一律、女性側の問題ってされてたけどさ。
とにかく、旦那側の親戚が『子供出来ないなら養子貰え』とか『新しい嫁貰え』って言い始めて。そしたら、嫁さんが妊娠したの。結局、子供は2人生まれたのよ」
「へえ、その子供って言うのが、旦那さんの子供じゃないって感じ?」
「そうなの、旦那と似てなくて。…相手が、隣の家の旦那さんじゃないかって」
ゆず子と善市郎は吹き出した。
「ちょっと、近すぎるよ!」
「『醬油貸して』のノリで『貰った』んかよ!」
「言うのも何だけどさ、隣の旦那さんって『イイ男』だったらしいの。あたしが子供の頃は、そりゃあ『オジサン』だったけど、父親似だったそこの家の娘は美人だったし、年取っても『イイ男』だった頃の名残はあった。
…今はもう死んでるけどさ、その『イイ男』」
津山にゆず子は質問した。
「生きてたら何歳くらい? そのイイ男」
「90越えてるんじゃないかな? んで、子供なかなか生まれなかった隣の嫁さんも、結構な美人さんでね。『ソース顔』って言うの? 目鼻立ちハッキリした人だったのよ」
津山の言葉に、ゆず子は感心した。
「『ソース顔』って、久々に聞いたわ。あったね、日本人特有な『醬油顔』と外国人的な『ソース顔』って」
津山も頷いた。
「そうなんだよ。生まれた子供、2人とも『ソース』な感じでさ。『醤油』な旦那さんの要素が無いっていうか。
…それで、そこの嫁さんが隣の旦那さんとデキてるって噂もあってね。手を繋いで歩いていた、とか手編みのセーターを贈っていた、とか」
善市郎が口を挟む。
「相手の奥さん、何も言わねえの? いくら『田舎の表沙汰出来ない慣習』とは言え、嫌じゃねえ?」
「相手の奥さん、若くして死んでるのよ。子供出来なかった嫁さんが嫁いだ、その年に。1番下の子供が、小学校入ったぐらいだったかな?
まだ子供小さいし、時代的にも後妻を取る時代だったんだけど、隣の旦那さんは後妻を拒否した」
「…美人な新婚のお嫁さんに、恋した?」
ゆず子の言葉に、津山はニンマリした。
「真相は分からないよ。隣同士だから、子供を預かる事もあったし、料理のお裾分けで自宅に上がる事もあったみたいね。ただ隣同士ってだけなのに、かなり仲良かったのは確か。
旦那さん同士で特に諍いあったとかは聞いてないな。…合意なのかな、『寝取られ』が」
「…昼間の話題かよ」
善市郎は引きながらも笑っていた。ゆず子は言った。
「旦那さん、何で自分の嫁さんの『寝取られ』に納得いってたんだろ。普通嫌よね、他人の子を育てたり、嫁さんが他の男とそうなっちゃうの」
「うーん、『新しい嫁を!』って言う親戚を宥められない性格か、もしくは性癖かね。昔って、『個々の感情』より『家の存続』が重要だったしね」
津山は新しい菓子の封を切りつつ、返事した。
今日の帰りも、ゆず子は例の夫婦と出くわした。絵に描いた様な幸せそうな熟年夫婦だ。
「ミツトシさん、今日の夜ご飯は何かしら?」
「今日の夜はね、えーと、何だったかな」
2人は笑いながら、自宅へ入っていく。門の表札には、『渡邉常郎・キヨコ』と書いてある。
老いて記憶があやふやになってしまったキヨコは、今日も『ミツトシさん』とデート出来てご満悦だ。
常郎は残り少ない人生、キヨコの傍に居られればそれだけで幸せなのだろう。
『うまく行ってるかの様に見えるよね、本当は2人しか知らない』。誰の歌だっただろう、うろ覚えだが核心をついている。
夫婦の事なんて、当人だけしか知りえないし、他人の口出しは無用なのだ。
誰が言った言葉なのだろう。そもそも歌だったっけ、何の時に聞いた文言だっただろうか。うろ覚えだが、いい言葉である。
ゆず子には、最近気になるものがある。ひと月くらい前から、退勤途中でよく見かける老夫婦がいるのだ。
「ミツトシさん、いい天気ね」
「そうだね」
「お洗濯物が、よく乾きそうね」
「そうだね、いっぱい干してきたからね」
妻の乗った車椅子を押す夫が、2人で仲睦まじく散歩しているのだ。
(2人とも80代くらいかな。何か、見てると癒されるなあ)
妻はいつも明るい声で夫に話しかけ、夫はにこやかに相槌を打っている。
(こういう熟年夫婦って憧れるわね。とても仲がいいのね)
2人はいつも信号を渡り、その先の突き当りへ行き、黒い屋根に薄茶色の壁の2階建ての一軒家へ入っていくのだ。
(2人暮らしかな。洗濯物は2階のベランダではなく、1階の庭先に干している。奥さん車椅子って事は、家の中の事は旦那さんやヘルパーさんがやってるのかな)
年配の人間は、歩けても階段の昇り降りが年々辛くなってくるものだ。
干したり取り込む必要のある洗濯物は、移動距離の少ない1階部分に干すようになる。
(どの程度ヘルパーさんに任せているか知らないけど、旦那さんも献身的にやっている家なのかな。この年代で珍しいこと)
80歳代くらいだと『男は台所に入らず思考』が1番濃かった年代なので、妻が倒れたとしても夫が家事をやる事はほとんど無く、家事代行を外注(娘に来てもらう&食事の宅配サービス利用)するのが多いかもしれない。
(まあむしろ、男が家事をやると逆に非難された時代だからね。それにかまける事なく、変化に合わせて対応するのはすごい事よね)
感心するのは、妻の服装にもある。妻自身が選んでいるのかもしれないが、いつも可愛らしい服を着ていて、その服もちゃんと手入れが行き届いてるのだ。
(男の人が服を管理する場合、『取りあえず着れる状態にすりゃOK』って感じだから、毛玉とかシワや裾ほつれは二の次なんだけど、奥様ちゃんとした物を着てるのね。旦那さんもそうだわ)
もしかしたら外での移動が車椅子なだけで、屋内では妻が自力で動けるのかもしれない。衣服の管理は妻か、或いは夫が几帳面な性格か。
(まあ、どちらにせよ、このご夫婦の仲が良いのは確かね。羨ましいわ)
ゆず子は2人を見かける度、そう思うのだった。
「たまに帰る時にね、とっても仲が良いご夫婦を見かけるのよ。何か、見てるだけで癒されるって言うか」
「へえ」
マンションの清掃業務後、管理人室でのお茶を頂きながらゆず子が例の夫婦の話をすると、津山と善市郎は感心して聞いていた。
津山は言った。
「この齢になって『夫婦円満』が羨ましいって、ようやく思えるようになってきたわ。少し前までは『あんなの嘘ばっか』ってやさぐれてたんだけどね」
バツイチ独身の津山は笑った。定年直前に妻を亡くし、その後独身の善市郎も言った。
「仲いい人達は、本当に最初から最期まで仲いいよな。逆に、色々あったから晩年に仲が良くなった夫婦も居るわな。俺の知り合いも居たわ、負債を抱えたのがきっかけで仲が良くなった夫婦」
「何それ、逆じゃない?」
津山がキョトンとすると、善市郎は言った。
「子供の教育費と商売の負債がかさんでさ。『家と土地売って、アパート借りるか』って、査定したら全然安くて、むしろアパート借りる方が高くつくってなって。
だから、家に住み続けた状態で、夫婦一丸でお金関係を徹底的に調べて、節約して仕事も頑張って何とかしたんだと」
「そういうケースもあるんだ。売らない方が良いのもあるのね」
ゆず子はかりんとうを口にした。津山は言った。
「私達とか、それより上の年代って、『理不尽に耐えそのんでこその結婚生活』ってのが美徳とされたでしょ? 今の夫婦が羨ましいよ。
言いたいこと言っていいし、男女も平等だし、子供居ようが居まいが、親と同居するしないも選び放題だもん」
「そうよねえ。私達の時代と真逆よね~」
津山は茶を啜った後、口を開いた。
「そう言えばさ、あたしの小っちゃい頃に、近所であったらしいよ」
「何が?」
「『種』を貰って、離婚を回避したかもしれない夫婦」
津山のニヤニヤ顔が、『種』がどういう意味かを物語っている。津山は続けた。
「結婚してから3年経っても、子宝に恵まれない夫婦が居てさ。その頃って『嫁して三年、子無きは去れ』なんて、子供出来ないだけで一方的に嫁に、離婚告げていい時代だったじゃない?
だから嫁さん、肩身の狭い思いしていてさ」
「…今でもあるけどな、そういう家」
「そうね、完全に無くなってはいないよね」
善市郎とゆず子がそう言うと、津山は頷いた。
「そうだね。多分、そこの夫婦は旦那に原因があったんじゃないかな? 昔は一律、女性側の問題ってされてたけどさ。
とにかく、旦那側の親戚が『子供出来ないなら養子貰え』とか『新しい嫁貰え』って言い始めて。そしたら、嫁さんが妊娠したの。結局、子供は2人生まれたのよ」
「へえ、その子供って言うのが、旦那さんの子供じゃないって感じ?」
「そうなの、旦那と似てなくて。…相手が、隣の家の旦那さんじゃないかって」
ゆず子と善市郎は吹き出した。
「ちょっと、近すぎるよ!」
「『醬油貸して』のノリで『貰った』んかよ!」
「言うのも何だけどさ、隣の旦那さんって『イイ男』だったらしいの。あたしが子供の頃は、そりゃあ『オジサン』だったけど、父親似だったそこの家の娘は美人だったし、年取っても『イイ男』だった頃の名残はあった。
…今はもう死んでるけどさ、その『イイ男』」
津山にゆず子は質問した。
「生きてたら何歳くらい? そのイイ男」
「90越えてるんじゃないかな? んで、子供なかなか生まれなかった隣の嫁さんも、結構な美人さんでね。『ソース顔』って言うの? 目鼻立ちハッキリした人だったのよ」
津山の言葉に、ゆず子は感心した。
「『ソース顔』って、久々に聞いたわ。あったね、日本人特有な『醬油顔』と外国人的な『ソース顔』って」
津山も頷いた。
「そうなんだよ。生まれた子供、2人とも『ソース』な感じでさ。『醤油』な旦那さんの要素が無いっていうか。
…それで、そこの嫁さんが隣の旦那さんとデキてるって噂もあってね。手を繋いで歩いていた、とか手編みのセーターを贈っていた、とか」
善市郎が口を挟む。
「相手の奥さん、何も言わねえの? いくら『田舎の表沙汰出来ない慣習』とは言え、嫌じゃねえ?」
「相手の奥さん、若くして死んでるのよ。子供出来なかった嫁さんが嫁いだ、その年に。1番下の子供が、小学校入ったぐらいだったかな?
まだ子供小さいし、時代的にも後妻を取る時代だったんだけど、隣の旦那さんは後妻を拒否した」
「…美人な新婚のお嫁さんに、恋した?」
ゆず子の言葉に、津山はニンマリした。
「真相は分からないよ。隣同士だから、子供を預かる事もあったし、料理のお裾分けで自宅に上がる事もあったみたいね。ただ隣同士ってだけなのに、かなり仲良かったのは確か。
旦那さん同士で特に諍いあったとかは聞いてないな。…合意なのかな、『寝取られ』が」
「…昼間の話題かよ」
善市郎は引きながらも笑っていた。ゆず子は言った。
「旦那さん、何で自分の嫁さんの『寝取られ』に納得いってたんだろ。普通嫌よね、他人の子を育てたり、嫁さんが他の男とそうなっちゃうの」
「うーん、『新しい嫁を!』って言う親戚を宥められない性格か、もしくは性癖かね。昔って、『個々の感情』より『家の存続』が重要だったしね」
津山は新しい菓子の封を切りつつ、返事した。
今日の帰りも、ゆず子は例の夫婦と出くわした。絵に描いた様な幸せそうな熟年夫婦だ。
「ミツトシさん、今日の夜ご飯は何かしら?」
「今日の夜はね、えーと、何だったかな」
2人は笑いながら、自宅へ入っていく。門の表札には、『渡邉常郎・キヨコ』と書いてある。
老いて記憶があやふやになってしまったキヨコは、今日も『ミツトシさん』とデート出来てご満悦だ。
常郎は残り少ない人生、キヨコの傍に居られればそれだけで幸せなのだろう。
『うまく行ってるかの様に見えるよね、本当は2人しか知らない』。誰の歌だっただろう、うろ覚えだが核心をついている。
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