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空席確保
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『派遣』の仕事は、気が楽である。
1番楽と思えるのは、出向先での人間関係にそこまで巻き込まれずに済むからだ。だが人生、意図しない事も時に発生する。
「鳴瀬さん、お尋ねしますが、今日ってここ終わった後に仕事入ってますか?」
出向先の会社にて。そろそろ定時のゆず子に、若手の社員が声を掛けた。ゆず子は腕時計を見る。
「入ってませんよ。どうかしましたか?」
「俺も内容は分からないんですけど、事務部長が用事あるそうで、会議室に来て欲しいそうです」
(何の用事だろう?苦情?)
「分かりました」
事務部長との面識はあるものの、直接話すような間柄でもないので、呼び出しに関しては全く身に覚えが無い。
(何か楽しくない予感するぞ)
「失礼します」
軽く身だしなみを整え、ノックをして入室すると、そこには事務部長の他に事務の古株社員:河北富由美の2名が居た。
(雰囲気、明るくないな。嫌だな)
「お疲れ様です、申し訳ありませんね、呼び出してしまって」
事務部長は軽く頭を下げつつ、そう言った。
「いえいえ、そんな事は。…何か、ありましたでしょうか?」
ゆず子が尋ねると、部長は話を切り出した。
「えーとですね、確認したい事がありまして…、うちの事務部門の霜野咲緒里はご存知ですか?」
「霜野さんですか? 最近、産休に入られた方ですよね?」
霜野の事は知っていた。世間話をした事は何度かある。部長は頷いた。
「あ、そこまでご存じで…。それであと、夏前に退社した紀藤さんの事は?」
「紀藤さん…。どの方だったかしら…?」
紀藤は50代のパートタイマーで、この会社の経営傘下にある飲食店で勤務していた。
ここへ出社する事もあるらしいが、基本は店舗の人間なので、社内で会う事は稀だ。
長くここに出入りしているが、名前しか聞いた事が無い。
部長は更に尋ねた。
「…じゃあ、鳴瀬さんは紀藤さんとは話さないんですかね?」
「そうですね。話した事はないかと」
「分かりました」
部長はそこで息をついた。話が見えない。
(部外者の私が質問していいのか分からないから、聞きたいけど聞けないよね…?)
沈黙を破ったのは、河北だった。
「部長、一応部外者かも知れませんが、鳴瀬さんにも説明した方がいいかと」
「そう…ですね。お時間頂いてる以上はね。実は、鳴瀬さんと河北さんに、霜野さんの妊娠を言いふらしたという、疑いがかかってましてね…」
「え…」
聞いたゆず子は絶句する。
話は、約半年前に遡る。
いつもの様に出社したゆず子は、トイレ掃除を始めた。
この会社のトイレの掃除を終わらせるのにかかる時間は10~15分。その僅かな時間中、2回も駆け込んで来た人間が居た。霜野だ。
短時間で複数回使う者は、だいたい体調不良者と相場が決まってる。あまり優れぬ顔色の霜野へ、ゆず子は尋ねた。
「大丈夫? 顔色悪いわよ」
「…すみませんでした、掃除中に」
霜野は足早にトイレを出て行った。その時を境に、霜野がトイレを使用するのが増加したと思う。
ゆず子の経験上、飲み会シーズンは二日酔いの人、5月くらいは5月病の人間のトイレ使用率が高い。
霜野の場合はどちらにも該当しない。
(病気とか?大丈夫なのかな)
ゆず子はそれとなく、霜野と同期の湯原はるかへ尋ねた。
「霜野さん、最近体調悪そうだけど、大丈夫なの?」
「そうですよね、私も心配で訊いたんだけど、『大丈夫、平気だから』の一点張りで。…絶対大丈夫だと思えないですよね」
「病院、行けてないのかな?」
「いま、特に忙しくないし、一昨日は早退したんですよ。行く時間が無いとは思えないです」
2人で話しても、答えは出なかった。
ところが、ある人から情報がもたらされた。
「あの子、妊娠してるみたい」
河北だ。河北は給与計算や休暇の残数把握もする立場なので、事情を知っていた。ゆず子は納得した。
「そっか、悪阻か。道理で…。あれ? 結婚してたっけ?」
すると河北は、辺りを窺うと小声で言った。
「これ、絶対内緒にしてよ。…未婚なの」
「あら…」
内密、という条件でゆず子は河北から教えられた。河北は苦い顔をしていた。
「何か揉めてるらしくて、籍を入れる予定がまだつかないみたい。もしかしたら、1人で産む事になるかもしれないんだって」
「そうなんだ。何だかねえ…」
「絶対内緒にしておいてよ。じゃないと私もあなたもヤバいから」
「大丈夫、私プロだから。教えてくれてありがとう、絶対言わないからね」
言っちゃなんだが、2人の付き合いは長い。
ゆず子自身も、色んな現場で秘密の事情に触れた事もあるし、漏洩するとどんな事になるかも心得ている。
霜野の妊娠に関して、2人が話題にしたのはその時限りだった。ゆず子の記憶では、当時周囲には2人以外誰も居なかったし、誰も来ないのを河北も確認している。
結局、霜野は妊娠5ヶ月の頃にようやく入籍し、懐妊を社内の皆に報告した。
ややポチャ体型と初めての妊娠でお腹の膨らむスピードが遅いため、誰も妊娠に気づいてなかったようだ(一部の人は『やっぱりあれ悪阻だったか』などと思い返してはいたが)。
某お笑い芸人では無いが、時を戻そう。
ゆず子は口を開いた。
「疑い、ですか…」
「実は霜野さんから、『妊娠初期の頃に、紀藤さんから懐妊おめでとうと言われた事があった。当時河北さんにしか明かしてなかったので、紀藤さんに教えたのは河北さんか、悪阻でトイレをよく使ってたのを知っていた鳴瀬さんではないか?』と、相談を受けたんですね。
僕は『気のせいじゃないか』と言ったんですけど、『個人情報の漏洩を容認するんですか?』ってお怒りで」
事務部長が頭を掻きつつ言うと、河北は尋ねた。
「紀藤さんは、誰に訊いたと?」
「それが、紀藤さんには、直接確認出来てないんです。九州に住む親の介護の為に退職して引っ越して、その時に携帯電話のキャリアも変更したみたいで。
全従業員のうち、誰かは現在の連絡先を知ってるかもしれないけど、そこまでするのは現実的でも無いし…」
事務部長は首を竦めた。河北は言った。
「どちらにせよ、私も鳴瀬さんも紀藤さんに教えた事はありません。それで、よろしいでしょうか?」
「そうですね、お時間頂きすみませんでした」
ゆず子達は、そこで解放された。
「納得するワケないじゃん」
後日、トイレで会った河北はしかめっ面をした。
「私がそんなヘマすると思う? この仕事、何年やってると思うのよ」
河北は末っ子の幼稚園入園から、ずっとここで働き続けている。
仮にそういう事をしてきたのなら、このポジションにはついていないし、社内でも悪評がついているだろう。
ゆず子は息をついた。
「とは言え、お互いちょっと軽率だったかもしれないわね。気を付けないと」
別の日。ゴミ袋を持って移動するゆず子を、湯原が呼び止めた。
「お疲れさまです、鳴瀬さん。河北さんから聞いたんですけど、先日は災難でしたね」
「ええ、お陰さまで仕事の取り組み方、初心に返って反省したわ。長く勤めると惰性が出てきてダメね」
ゆず子は笑って返した。
「そうそう、この前霜野さんと会って、ランチしたんですよ。来月生まれるそうで」
「あら、早いこと。元気だった?」
「うーん、何と言うか…。マタニティブルー真っ只中でした」
湯原は何とも言えない表情をした。
妊娠中期に安定したホルモンバランスが妊娠後期に乱れ、マタニティブルーに陥る事はよくある。
(ああ、あまり楽しくなかったんだな…)
ゆず子は表情から読み取った。湯原は続けた。
「情緒不安定だからか、旦那さんと衝突する事がよくあるみたいで。『産後すぐに離婚するかもしれない』とか言われました」
「まあ、そういう時期もあるから、ね」
「離婚しても大丈夫なように、早く育休終えて復職したいって言ってましたね。『私のポジション無くなるかも』ですって。心配しなくても大丈夫なのに」
(ポジション無くなる、か…)
湯原は続けた。
「そう言えば、紀藤さんの退社時期、気になったので紀藤さんと同じ店舗の人に確認したら、妙な事が分かって」
「妙って?」
湯原は険しい顔で答えた。
「退職が5月31日だったんです。最初は6月末の予定だったんですけど、引っ越しの都合で早める事になって。
霜野さんの妊娠が分かって、河北さんに言ったのは7月半ばらしいんですけど、でもその頃に紀藤さんが会社や店舗に来るする筈がないんです。もう九州だもの。
…霜野さん、本当に紀藤さんに会ったのかな」
ゆず子は少し考えると口を開いた。
「…ぶっちゃけだけど、霜野さんは河北さんと仲良かった?」
湯原は事もなげに言った。
「悪くなかったと思いますよ」
もしかして霜野は、育休後の『居場所』として、河北のポジションを狙っていたのかもしれない。
子供3人を育てながら勤めていた河北だ。その業務は、子育て中の人間でも対応可能だと思ったのでは。
河北を嵌めて失脚(左遷)させ、空いた席に座ろうと考えてなかっただろうか?
ゆず子は河北と付き合いが長く、仲が良い事も多分霜野は知っていた。ゆず子経由にせよ、紀藤への漏洩が認められれば、有責は河北となる。
そういう意味では、物理的に距離があり聴取の困難な紀藤は、都合の良い存在だ。
勘ぐってしまえば終わらない。真相は闇の中である。
あれほど職場復帰に拘った霜野だが、育休4ヶ月目に、夫の転勤について行く決断をして、あっさり退社した。
双方の実家が遠く、0歳児を1人で見ながらの会社勤めは困難と判断したらしい。
職場もだが、家庭内も状況・情勢は日々変化するものなのだ。
1番楽と思えるのは、出向先での人間関係にそこまで巻き込まれずに済むからだ。だが人生、意図しない事も時に発生する。
「鳴瀬さん、お尋ねしますが、今日ってここ終わった後に仕事入ってますか?」
出向先の会社にて。そろそろ定時のゆず子に、若手の社員が声を掛けた。ゆず子は腕時計を見る。
「入ってませんよ。どうかしましたか?」
「俺も内容は分からないんですけど、事務部長が用事あるそうで、会議室に来て欲しいそうです」
(何の用事だろう?苦情?)
「分かりました」
事務部長との面識はあるものの、直接話すような間柄でもないので、呼び出しに関しては全く身に覚えが無い。
(何か楽しくない予感するぞ)
「失礼します」
軽く身だしなみを整え、ノックをして入室すると、そこには事務部長の他に事務の古株社員:河北富由美の2名が居た。
(雰囲気、明るくないな。嫌だな)
「お疲れ様です、申し訳ありませんね、呼び出してしまって」
事務部長は軽く頭を下げつつ、そう言った。
「いえいえ、そんな事は。…何か、ありましたでしょうか?」
ゆず子が尋ねると、部長は話を切り出した。
「えーとですね、確認したい事がありまして…、うちの事務部門の霜野咲緒里はご存知ですか?」
「霜野さんですか? 最近、産休に入られた方ですよね?」
霜野の事は知っていた。世間話をした事は何度かある。部長は頷いた。
「あ、そこまでご存じで…。それであと、夏前に退社した紀藤さんの事は?」
「紀藤さん…。どの方だったかしら…?」
紀藤は50代のパートタイマーで、この会社の経営傘下にある飲食店で勤務していた。
ここへ出社する事もあるらしいが、基本は店舗の人間なので、社内で会う事は稀だ。
長くここに出入りしているが、名前しか聞いた事が無い。
部長は更に尋ねた。
「…じゃあ、鳴瀬さんは紀藤さんとは話さないんですかね?」
「そうですね。話した事はないかと」
「分かりました」
部長はそこで息をついた。話が見えない。
(部外者の私が質問していいのか分からないから、聞きたいけど聞けないよね…?)
沈黙を破ったのは、河北だった。
「部長、一応部外者かも知れませんが、鳴瀬さんにも説明した方がいいかと」
「そう…ですね。お時間頂いてる以上はね。実は、鳴瀬さんと河北さんに、霜野さんの妊娠を言いふらしたという、疑いがかかってましてね…」
「え…」
聞いたゆず子は絶句する。
話は、約半年前に遡る。
いつもの様に出社したゆず子は、トイレ掃除を始めた。
この会社のトイレの掃除を終わらせるのにかかる時間は10~15分。その僅かな時間中、2回も駆け込んで来た人間が居た。霜野だ。
短時間で複数回使う者は、だいたい体調不良者と相場が決まってる。あまり優れぬ顔色の霜野へ、ゆず子は尋ねた。
「大丈夫? 顔色悪いわよ」
「…すみませんでした、掃除中に」
霜野は足早にトイレを出て行った。その時を境に、霜野がトイレを使用するのが増加したと思う。
ゆず子の経験上、飲み会シーズンは二日酔いの人、5月くらいは5月病の人間のトイレ使用率が高い。
霜野の場合はどちらにも該当しない。
(病気とか?大丈夫なのかな)
ゆず子はそれとなく、霜野と同期の湯原はるかへ尋ねた。
「霜野さん、最近体調悪そうだけど、大丈夫なの?」
「そうですよね、私も心配で訊いたんだけど、『大丈夫、平気だから』の一点張りで。…絶対大丈夫だと思えないですよね」
「病院、行けてないのかな?」
「いま、特に忙しくないし、一昨日は早退したんですよ。行く時間が無いとは思えないです」
2人で話しても、答えは出なかった。
ところが、ある人から情報がもたらされた。
「あの子、妊娠してるみたい」
河北だ。河北は給与計算や休暇の残数把握もする立場なので、事情を知っていた。ゆず子は納得した。
「そっか、悪阻か。道理で…。あれ? 結婚してたっけ?」
すると河北は、辺りを窺うと小声で言った。
「これ、絶対内緒にしてよ。…未婚なの」
「あら…」
内密、という条件でゆず子は河北から教えられた。河北は苦い顔をしていた。
「何か揉めてるらしくて、籍を入れる予定がまだつかないみたい。もしかしたら、1人で産む事になるかもしれないんだって」
「そうなんだ。何だかねえ…」
「絶対内緒にしておいてよ。じゃないと私もあなたもヤバいから」
「大丈夫、私プロだから。教えてくれてありがとう、絶対言わないからね」
言っちゃなんだが、2人の付き合いは長い。
ゆず子自身も、色んな現場で秘密の事情に触れた事もあるし、漏洩するとどんな事になるかも心得ている。
霜野の妊娠に関して、2人が話題にしたのはその時限りだった。ゆず子の記憶では、当時周囲には2人以外誰も居なかったし、誰も来ないのを河北も確認している。
結局、霜野は妊娠5ヶ月の頃にようやく入籍し、懐妊を社内の皆に報告した。
ややポチャ体型と初めての妊娠でお腹の膨らむスピードが遅いため、誰も妊娠に気づいてなかったようだ(一部の人は『やっぱりあれ悪阻だったか』などと思い返してはいたが)。
某お笑い芸人では無いが、時を戻そう。
ゆず子は口を開いた。
「疑い、ですか…」
「実は霜野さんから、『妊娠初期の頃に、紀藤さんから懐妊おめでとうと言われた事があった。当時河北さんにしか明かしてなかったので、紀藤さんに教えたのは河北さんか、悪阻でトイレをよく使ってたのを知っていた鳴瀬さんではないか?』と、相談を受けたんですね。
僕は『気のせいじゃないか』と言ったんですけど、『個人情報の漏洩を容認するんですか?』ってお怒りで」
事務部長が頭を掻きつつ言うと、河北は尋ねた。
「紀藤さんは、誰に訊いたと?」
「それが、紀藤さんには、直接確認出来てないんです。九州に住む親の介護の為に退職して引っ越して、その時に携帯電話のキャリアも変更したみたいで。
全従業員のうち、誰かは現在の連絡先を知ってるかもしれないけど、そこまでするのは現実的でも無いし…」
事務部長は首を竦めた。河北は言った。
「どちらにせよ、私も鳴瀬さんも紀藤さんに教えた事はありません。それで、よろしいでしょうか?」
「そうですね、お時間頂きすみませんでした」
ゆず子達は、そこで解放された。
「納得するワケないじゃん」
後日、トイレで会った河北はしかめっ面をした。
「私がそんなヘマすると思う? この仕事、何年やってると思うのよ」
河北は末っ子の幼稚園入園から、ずっとここで働き続けている。
仮にそういう事をしてきたのなら、このポジションにはついていないし、社内でも悪評がついているだろう。
ゆず子は息をついた。
「とは言え、お互いちょっと軽率だったかもしれないわね。気を付けないと」
別の日。ゴミ袋を持って移動するゆず子を、湯原が呼び止めた。
「お疲れさまです、鳴瀬さん。河北さんから聞いたんですけど、先日は災難でしたね」
「ええ、お陰さまで仕事の取り組み方、初心に返って反省したわ。長く勤めると惰性が出てきてダメね」
ゆず子は笑って返した。
「そうそう、この前霜野さんと会って、ランチしたんですよ。来月生まれるそうで」
「あら、早いこと。元気だった?」
「うーん、何と言うか…。マタニティブルー真っ只中でした」
湯原は何とも言えない表情をした。
妊娠中期に安定したホルモンバランスが妊娠後期に乱れ、マタニティブルーに陥る事はよくある。
(ああ、あまり楽しくなかったんだな…)
ゆず子は表情から読み取った。湯原は続けた。
「情緒不安定だからか、旦那さんと衝突する事がよくあるみたいで。『産後すぐに離婚するかもしれない』とか言われました」
「まあ、そういう時期もあるから、ね」
「離婚しても大丈夫なように、早く育休終えて復職したいって言ってましたね。『私のポジション無くなるかも』ですって。心配しなくても大丈夫なのに」
(ポジション無くなる、か…)
湯原は続けた。
「そう言えば、紀藤さんの退社時期、気になったので紀藤さんと同じ店舗の人に確認したら、妙な事が分かって」
「妙って?」
湯原は険しい顔で答えた。
「退職が5月31日だったんです。最初は6月末の予定だったんですけど、引っ越しの都合で早める事になって。
霜野さんの妊娠が分かって、河北さんに言ったのは7月半ばらしいんですけど、でもその頃に紀藤さんが会社や店舗に来るする筈がないんです。もう九州だもの。
…霜野さん、本当に紀藤さんに会ったのかな」
ゆず子は少し考えると口を開いた。
「…ぶっちゃけだけど、霜野さんは河北さんと仲良かった?」
湯原は事もなげに言った。
「悪くなかったと思いますよ」
もしかして霜野は、育休後の『居場所』として、河北のポジションを狙っていたのかもしれない。
子供3人を育てながら勤めていた河北だ。その業務は、子育て中の人間でも対応可能だと思ったのでは。
河北を嵌めて失脚(左遷)させ、空いた席に座ろうと考えてなかっただろうか?
ゆず子は河北と付き合いが長く、仲が良い事も多分霜野は知っていた。ゆず子経由にせよ、紀藤への漏洩が認められれば、有責は河北となる。
そういう意味では、物理的に距離があり聴取の困難な紀藤は、都合の良い存在だ。
勘ぐってしまえば終わらない。真相は闇の中である。
あれほど職場復帰に拘った霜野だが、育休4ヶ月目に、夫の転勤について行く決断をして、あっさり退社した。
双方の実家が遠く、0歳児を1人で見ながらの会社勤めは困難と判断したらしい。
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