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エッチって痛いですか?怖いです…

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俺が後輩のきゅーが好きなことは100歩譲って認めよう。っていうか、高橋に嫉妬してしまった俺はきゅーが好きだと認めざるをえない。
でも好きって認めるってことは正式に付き合うってことで、体の関係も発生するってことだよな?
体の関係ってどうなんだ…男となんか経験したことがない。女の子ともあまりないけど。

男ってケツでやるんだよな?それは絶対痛いよな?
いや、待てよ。なんで俺が入れられるほうになるんだ?俺がいれるって考え方もあるよな。それならなんとかなりそうだけど、そのままぐさっていれちゃっていいの?
ってか、女の子のお尻だっていれたことないぞ。前に失敗してお尻に入りそうになったとき「痛い!」って大きな声で騒がれた。男だからっていれていいもんでもないだろう。
…ここはやっぱり経験してそうな藤野に相談だな。藤野はかわいい顔をしているし、好きな男がいるからきっと経験済みに違いない。

電話だとうまく言えなさそうな気がして、会社の終わりに藤野を呼び出した。俺は藤野が男とデートしてるのを見たという弱みを握っているから、藤野は素直に応じてやってきた。場所は会社からはちょっと離れたドトールにした。やっぱりこういう相談をしてるのを会社のやつにきかれるのは嫌だ。藤野は仕事が長引いたらしくて少し遅れてやってきた。
「すみません、なかなか終われなくて」
いつもペコペコしている藤野は今日も謝りながら現れた。
「いいよいいよ。それよりな、今日は俺としてもききにくいことなんだけど、お前しかきけるやつがいなくて…」
「…はい」
俺は藤野に詰め寄った。藤野はいぶかしげにこっちを見た。明らかになんか警戒している。まあいい。ストレートにいっとこう。
「藤野は男とやったことあるの?」
藤野の手が止まった。そして顔が赤くなっていった。
「あるな?」
何も答えなかった。
「あるんだよな?」
やっぱり答えないけど、これは確実にやっている。赤い顔がそれを物語っている。
「なあ、お前やられるほうなの?そういうの、どんな感じで決まんの?」
「…俺、最初からやられてました。決まるとかそんなんじゃなかったです」
藤野、女の子みたいでかわいいもんな。自然とそうなるんだろうな。でもこいつも男なんだから、自分がやりたいとかなかったのかな。それに怖いとか…
「藤野は相手をやりたいとか、やられるの怖いとか思わないの?思わかなった?」
藤野はコーヒーを吹き出しそうになっていた。そんなきわきわなこときいたかな?
「相手をやりたいとかありえないです。なんか俺がやるほうが怖いです」
そうなの?やられっぱなしってこと?俺はそれは嫌だなー…
「怖いは…怖かったけど…まあ…うん、よくなりました」
「なんで?なんでよくなったの?」
藤野はさっきから赤くなったりキョドってたけど、ますますキョドりはじめた。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとそれは言えないです」
なんだよ、それ。そこがききたいんだよ。それはカップルの秘密的なことなの?気になるなー。でもま、いっか。プライベートな部分だし。
「なー、やられるの、痛い?」
「いや、でも…。ひとそれぞれだし。痛い人も痛くない人もいますから」
なんだか訳のわからない返事だ。そりゃそうだろうよ。一般論論がききたいんじゃない。
「で、藤野は痛いの?」
藤野の手がぴたっと止まった。何か考えている。
「…痛いです」
ええーーー!!!そうなの!?やっぱ痛いの!?藤野慣れてそうなのに??こわー!!!
「でもでも!優しくされたら痛くないですよ。やり方次第です」
「そんなの余計ドキドキするよ。やり方次第って、下手だったら痛いってこと??」
藤野はちょっと考えた。
「下手っていうか…うまくても乱暴にされたら痛いです。優しさです」
痛いってことは藤野は乱暴にされて優しくないの?ユニクロで見た藤野の彼氏(?)は優しくてきれいなイケメンだったけど、人はみかけによらないんだな。
「お前の相手って優し気できれいなのに乱暴なんだ…」
藤野はぴたっと止まって俺のほうを見た。
「…あの人きれいですか?」
「うん。すごくきれいだった」
「きれいってよりかっこよくないです?」
「一回しか見てないから違ってたのかな。でもきれいだったよ」
藤野はじーっと俺を見た。なんかある?
「中川さん、俺の相手って背高かったですか?」
「そんな高いってふうでもなかったな。普通くらい」
すると藤野は大きなため息をついた。どうしたんだろう。
「…なんか心配して損しました。中川さんが見たの、俺の好きな人じゃないです。それ、知り合いの人です。あの人、背高いですから」
えー…そうだったの?なんか残念だな。でも藤野に好きな男がいるってことは間違いないし、そいつとやってるのも間違いない。俺からしたら藤野は大先輩だ。藤野は俺の勘違いで変な弱みを握られたわけだ。なんか得した気分になった。
「なんだ。俺の勘違いか。でも俺の相談には乗ってくれよ。こんなのきけるの藤野しかいないんだよ。俺さ、相手に『やろう』って言われて困ってんの。男となんかやったことないし、どうしていいかわかんないんだよ」
「それはぜんぜん大丈夫です。でも俺の話なんてほんっと参考にならないですよ」
まったく藤野は腰が低いな。
「そんなこと言っても藤野しかきけないんだよ。痛いの?痛いの怖い…」
藤野はくすっと笑った。笑った藤野は俺が見てもかわいい。
「無理にしなかったら大丈夫ですよ」
「マジで?どう考えても怖いんだけど…」
「あの、俺は、なんですけど…」
藤野がゆっくり話し始めた。なんか真面目な顔をしている。
「ちゃんと側にいてくれるって言ってくれたから怖くなくなりました。安心感とか信頼感とかそういうのなんじゃないかな」
照れたように、コービーをかき混ぜながら藤野は言った。藤野はその相手との間に安心感や信頼感があるんだ。だから痛いのも怖くないんだ。なんか藤野強いな。
俺はそういう信頼ってきゅーにあるのかな。きゅーはしょちゅう俺のことを好き好き言ってるけど、俺の気持ちは、信頼とかってどうなんだろう。
藤野とはそこで別れて俺は実家に帰った。
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