上 下
9 / 17

第9話 ステータス

しおりを挟む


「・・・・・・ところが、妾が封印されてからは、『七つの大罪』以外は愚かなバカ共のせいで世界に散らばってしまった。覇王具は危険じゃ。心なき者達が使えば、なかなかにヤバいことになる。」

「え、でも今は大半がユステイツが管理してるからその心配はないだろ?」

「ばかもん、ユステイツは全魔族を滅ぼすことを最終目的としておるのじゃぞ? 我が覇王具で民草を殺される可能性だって大いにあるのじゃ。故に、妾は覇王具を全て取り返す。・・・・・・妾の目的は、全て話したぞ?」

「えーっと・・・・・・」

 頭をかきながら目をそらす。

 どうしよう。

 本当にどうしよう。

 エアリの考えていることは特にイカレてはいない。民の身の安全を心配するのは王様として当然だろうしね。

 ・・・・・・だが、問題は人族の中で最大規模の国を相手にすると言うことだ。

 もし、僕がエアリの味方であることがユステイツにバレたら、非常にアカンことになる。

 裏切り者のレッテルを貼られ、絞首刑台まっしぐらだ。

 こんなやりとりをするのは3回目だけど、具体的な目的を聞いたら、さらに恐怖が増してきた。うん、普通に死ぬだろコレ。

「・・・・・・あのーもし断ったら?」

「泣くぞ。」

 真顔で言われた。

「泣いてやる、妾は年相応の女子のようにびーびー泣くぞ。」

「おまえ外見年齢13歳くらいだろ!? びーびー泣くなや!」

 がばっっと足にしがみついてきたエアリを、必死に引きはがしにかかる。

「しょうがないではないか! ここは妾の国からもんのすごく離れておるし! 頼れるヤツは蛍しかおらんのじゃ! どんな手を使っても協力してもらわなくては困るのじゃ! それに、願いも叶えてやったであろう!?」

 筋力値は僕の方が上の筈なのに、エアリはがっちり腕を回して、簡単にはがれない。

 て言うか、先程から何か当たっているんですけど!?

「願いってったて、エアリって呼び捨てOKってだけだろ!? そんなケチ臭いことで命張れるかい!」

「お主は死なぬ! 妾が守るからの!」

「エヴァネタ!?」

 そうか、アニメはこの世界にも浸透しているのか・・・・・・

「・・・・・・ぐぬぬ、強情な奴め。王たる妾の言うことが聞けんというのか。」

「涙目ですがりついてくる王様って聞いたことねえよ・・・・・・」

「びええええええええん!」

「泣くなー!」

 予告通り泣き出したエアリに、酷く狼狽した。

 女の子を泣かせたとかそんなことではない。

 問題は、エアリの音量だ。

 こいつ、泣くときの声がものすげーうるさい。

 絶対、外に聞こえている!

「お願いじゃあ~! えっぐひっぐ、何でもするから~!」

「オイィィィィィィィィィ! なんかヤバいことみたいに聞こえるから黙れえェェェェェェ!」



 数分後。



 結局、根負けした。

 優柔不断だの流されやすいだの、前の世界で妹に言われてたけど、今回ばかりはそれを否定できないな・・・・・・

「・・・・・・分かったよ。協力してやる。」

「本当か!?」

 ぱあっとエアリの表情が輝いた。

「本当本当・・・・・・断り続けてたら一生ひっついたままのような気がしたからな。」

「ふっふっふ、分かっておるではないか。」

「自慢すんな。腕を組むな。不敵に笑うな!」

 そういうのは強敵に立ち向かうとか、そんなシリアスなシチュエーションでするものであって、駄々をこねた後にするものでは断じてない。

「でも、さすがに条件はつけるぞ。」

 折れたとは言え、僕にも絶対に譲れないものはある。

「ほほう? なんじゃ言うてみい。」

「僕は人族の捕虜として表向きでは扱って欲しい。」

「は?」

 ぽかんと、エアリは口を呆けた顔で開けている。

 虫入るぞー?

「僕が捕まっても、捕虜扱いだったら、要するに脅されて協力してましたーってことになったら一応、僕の身の安全は確保されるだろ?」

 少し、いやかなりクズい条件だが、こればっかりはしょうがないよな。

 我が身大事。

「ふむう・・・・・・まあそれくらいは致し方ないの。合い分かった、お主に万が一のことがあったら、捕虜という形で扱えば良いのじゃな。ふふ、蛍。お主も、悪よのぉ。」

「いやいや、エアリ様程では・・・・・・」

「ふっふっふ。」

「へっへっへ。」

 と、どこぞの悪代官と、そいつに賄賂を渡す商人の会話みたいになっていた。

「さて、お主を完全に引き入れたのはいいんじゃが、ここで少し困ったことがあるんじゃ。」

「はい? 困ったこと?」

 うむ、とエアリは首肯した。

「困ったことばかりじゃ。困ったことしかない。困らないことが無くて困っちゃう~みたいな感じじゃ。」

 何回困った言うつもりだ?

「その1は、活動するための資金じゃ。」

 やっぱり金か。

 まあ予想はしていたけど。

「そうだな。金無くちゃ何も出来ないし。」

 残念ながら、僕は自分のことで精一杯な状態なので、この件に関しては余り力になれそうもない。

「あ、でもさ、エアリが高難度のクエストをこなしていけば、かなり良い稼ぎにはなるんじゃないかな。」

「そんなこと知っとるわ。問題は、お主なんじゃよ。蛍。」

「僕?」

 びしっと指されても、心当たりが無い。

「これは困ったことその2なんじゃが、それは蛍、お主の冒険者としての実力じゃ。お主の今のステータスではのう・・・・・・なかなかに難しいぞ?」

「ぐっ・・・・・・」

 痛いところを突かれた。

 今の僕のステータスは、 筋力D(24) 耐久E(13) 敏捷C(41) 魔力E(5) 幸運D(12) 知力B(74)と、お世辞にも強いとは言えない。

 ステータスを上昇させるには、モンスターを倒すか、身体を鍛えるかの2通りあって、効率が良いのは強いモンスターを狩ることなんだけど、小型モンスターを狩ってばっかりの僕はそこまで上昇していないのだ。

「・・・・・・ていうか、エアリだってそこまで強くないだろ? 人のこと言えないじゃないか。」

「妾には覇王具があるからいいんじゃ! それに妾の場合、もう限界が来てしまっているしの、これ以上の上昇は望めんのじゃ。」

 ステータスが上がるからと言って、それにも限界がある。

 その限界には個人差があるが、エアリはそれに達してしまっているらしい。

「じゃが、妾は武具強化スキルと達人スキルを持っておるぞ? それで十分じゃ。」

「うそだろ!? 両方、稀少スキルじゃん!」

「本当じゃ、ほれ見てみよ。」

 エアリから手渡されたメモリアの画面を眺める。 



エアリーズ・ソルレヴェンテ 

 種族 魔族・夢魔

 クラス 魔王

 レベル5

 筋力E(14) 耐久E(12) 敏捷C(42) 魔力D(31) 幸運A(94) 知力C(60) 

 武具強化スキル 自身の武器の威力を数倍に跳ね上がらせることが出来るスキル

 達人スキル 1回も扱ったことの無い武器を使いこなすことが可能になるスキル。これは、数多の武器の修練をした者に発現する

 幻惑スキル  夢魔の共通スキル、エロい夢は元よりショック死するレベルの悪夢を見せることができる。幻を見せることが出来ないので、夢魔としてはあまりこの能力は高いとは言えない。



「うへー・・・・・・」

 驚きが過ぎて言葉も出ない。

 ステータスは僕の方が上なのに、スキルは圧倒的に敗北している。しかもさらっと、レベルが最高の5だし。

 僕が持ってるのは、隠密スキルと逃げ足スキル、そして短剣スキルという、今ひとつぱっとしない者ばかりだ。

「そうかの? 逃げ足スキルは逃げるときのみ敏捷がAに上昇するやつじゃろ? かなり便利ではないか。」

「それはそうなんだけどさあ・・・・・・」

 逃げ足スキルを発現させるのは簡単、モンスターから何回も逃げるだけ。そのような条件のため、冒険者の恥スキルトップ3に食い込んでいる代物だ。

「ま、お主のステータスは中々に伸びしろがありそうじゃ。明日から、妾がみっちり鍛えてやるわい。」

「はい?」

 な、なんだろう、この背筋を這い回るような嫌な予感は・・・・・・!

「蛍、明日から、歯ごたえのあるモンスターを討伐してもらうぞ!」

「嫌だ。」

 予想通りの言葉を、タイムラグゼロで撃墜した。

「駄目じゃ。」

 と思ったら今度はこっちが撃墜。

「やっぱそういうのは、もう少し易しめのクエストで地道にやっていったほうが良いと思うんだけど・・・・・・」

 ささやかな抵抗を試みるが、やる気マックスの魔王様の耳には届かない。

「甘い! お主も妾の臣下ならば、それくらいは耐えないと務まらんぞ!」

今にも竹刀を取り出しそうな勢いのエアリは、再びベッドに飛び乗ると、僕をにらみ据え、宣言した。

「覇王具の回収の第一段階として、お主を午の月までにレベル2に上げる。覚悟いたせ? 妾はなかなかに厳しいぞ?」

 うひゃー!

 と、悲痛な叫びが夜の宿にこだました。

 ……次回から、スポ根ものになります。(泣)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

処理中です...