異世界転移したら至高の最強魔導士に愛されました〜貴方を殺せる唯一の私〜

二章 覚悟

第27話 彼の屋敷

　再び王都での生活が始まった。以前は宮殿で過ごしていたが、今回はローウェンの屋敷に住むことになった。彼の家もまた豪華な邸宅であり、その大きさに圧倒される。

　ローウェンは至高サプリームの現当主であり、その地位は王族と同等、あるいはそれ以上の権力を持つと言われている。彼の住まいがこれほど豪華なのも納得だ。しかし、ノヴェリアの二王制に近い体制は、私にはまだ理解しづらい。

　朝食のために私はダイニングルームへ向かった。長いダイニングテーブルには豪華な朝食が並び、その中心に座っていたローウェンが、私の到着を待って椅子を引いてくれた。その行動は彼の身分を考えると恐れ多いが、彼はいつも変わらぬ優しさで接してくれる。

「おはよう。待たせてごめん。」

「おはようございます。今日も変わらず美しいですね。あなたのすべてが愛おしい。」

　今まで男性にこんなにストレートな愛情表現をされたことがなく、自然と顔が赤くなる。私は恥ずかしくなって下を向いた。

「えっと⋯⋯ありがとう。」

　ふと視線がスカートの裾に移ると、そこに小さな汚れが目に入った。このスカートもかなり安物で、履き古している。私は咄嗟にスカートの汚れを隠し、話題を変えた。

「ところでこの料理、どれも美味しそうだけど、何も入ってないよね？」

「はい。しかし今後のことを考えると、生命エネルギーは摂取した方がいいと思います。」

「そうなの？でももう私の精神をコントロールする必要はないと思ったんだけど。」

　以前、彼は私が食べるものすべてに彼の生命エネルギーを含ませていた。

　生命エネルギーは魔力の源であると言っていたが、それはいまいち理解できていない。だが、それらがないおかげで私は他人の魔法を無効化でき、ローウェンの魔法も例外ではなかった。そのため彼は、他者を操る魔法を私にかけることができなかったため、私は知らず知らずのうちに彼のエネルギーを享受させられていたのだ。

　しかし、全てを知った今、その必要はもうないはずである。

「生命エネルギーが極端に少ない人間は悪目立ちしてしまいます。一般人には見分けがつかなくても、それを見抜ける者も少なくはありません。特に首都ノヴァーレにはそのような者が多くいます。」

「その生命エネルギーとか魔力とかいまいちよくわからない。私に魔力がないのは知ってるけど、”生命エネルギー”もないの？」

「すみれも生命エネルギーは持っていますが、それは生きるために最低限必要な量だけです。生命エネルギーは魔力の源となるものであり、この世界の人々はそのエネルギーを余分に生み出すことができる。その余分なエネルギーで魔力を生み出すことができるのです。」

「つまり生命エネルギーの絶対量がこの国の人と私では違うんだね。じゃあ、生命エネルギーの多さがそのまま魔力の強さに繋がるの？」

「基本的にはそうですが、実はそれだけではありません。生命エネルギーを魔力に変換する技術も必要です。うまく習得できない者は、たとえ生命エネルギーが多くても、魔力を多く生み出すことはできない。」

「それなら、初めて会った人の魔力の強さは分からないってこと？さっきローウェンは”生命エネルギー”を感知することができるって言ってたよね？」

「その通りです。なので、魔法を使う状況にならない限り、魔力の量は誤魔化せます。生命エネルギーさえ保有していれば、街中で出会う程度なら誰にも怪しまれることはありません。なので、すみれは変換技術まで身につける必要はないですが、もちろんあなたが望むなら教えることもできます。それができるようになれば魔法も使えるようになります。」

　最低でも、あと1ヶ月はここで過ごす予定だ。やはり彼の言う通りに生命エネルギーを摂取した方がトラブルに巻き込まれる可能性を減らせるかもしれない。

「わかった。でも、私の唯一の取り柄である魔法の無力化ってのはできなくなるんだよね？」

「そうなりますね。この国に馴染むために目立たないようにするか、魔法対戦の際に有利なまま生きるかのどちらかです。前者は努力すれば、簡単な魔法なら使えるようになります。」

「対戦なんてローウェンといる限りすることないよね⋯⋯。もし魔法対戦で勝ったとしても、物理的な暴力を受けたら負けるし。それなら、ちょっとでも魔法が使える方がいいのかも。」

「ならば、生命エネルギーを摂取する方を選ぶということですね？」

「うん。でも、どうやって摂取するの？今までみたいに食事で？」

「もっと手っ取り早い方法があります。それは口付けです。」