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美味しい絵日記
チーズと枝豆の揚げ春巻き
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我が家の畑では、毎年夏になるとたくさんの枝豆が採れる。その量は驚くもので、毎日大きなかごがいっぱいになる。おみが水をやると通常よりも成長が良い気がするのは、やっぱり毎朝「おっきくなれー」と声をかけているからなのかもしれない。
枝豆は茹でるだけで十分美味しいおかずになる。ビールにも合うし、ほどよく塩気が効いていて熱中症対策にもなる。冷凍すれば保存も効くからたくさん収穫できても困らないと思っていたけれど。
「さすがに増えすぎたな……」
「あらー」
冷凍庫を圧迫している枝豆たちを見て、深くため息をついた。ファミリータイプの冷蔵庫は、そこまで冷凍室が大きくない。本家から送られてくる食材は冷凍しないといけないものはないが、野菜や魚、肉など冷凍保存することは多くある。
滅多に食べられない肉や魚は、大切に食べないと。
「とりあえず一袋は蒸し焼きにするとして、それでもパンパンだなぁ」
「ぱんぱかぱん?」
「そう。食べすぎたおみのお腹みたい」
「おお……たいへん」
よかった、今の危機的状況が正しく伝わってくれて。枝豆を使った料理は何かあっただろうか。ずんだ餅を作るには少し手間がかかるな。
それは明日のおやつにしよう。
今は夕飯のおかずにできそうなものがいい。
うーん。
「あ、そうだ」
「み?」
冷蔵庫に入っていた餃子の皮とチーズが目に入って、昔居酒屋で食べたことのあるメニューを思い出した。作り方は、多分、そこまで難しくないはず。
まあ、失敗は成功のもと、とも言うし。とりあえず作ってみよう。
「おみ、お手伝いしてくれる?」
「する! おみ、おてつだいする!」
「よし。じゃあ手を洗おうか」
「うぃ」
さっそく冷凍の枝豆を解凍すべく、電子レンジに放り込んだ。
「枝豆を中身をボウルに入れて欲しいんだ」
「おみにおまかせ」
「頼りになるなぁ」
黄色い踏み台に乗って、得意げに胸を張られた。解凍した枝豆はまだ熱いから、火傷しないように念を押す。
どうせつまみ食いするだろうから、少し多めに解凍しておいた。おみと暮らし始めて一年以上経つ。俺も、それなりにおみのことがわかってきたような気がする。
「むん、むん」
おみは不思議な掛け声と共に、枝豆の中身をボウルに出してくれている。よしよし、いい感じ。その間に俺は次の用意をしておこう。
プロセスチーズを四等分して、枝豆と同じくらいの大きさにする。枝豆とチーズが交互になるよう餃子の皮に乗せていき、最後の仕上げはおみに任せることにする。
「りょーたぁ……つかれた……」
「おお、もう半分以上終わったのか」
「そだよ、おみ、えだまめしょくにん」
どんな職人だ、それは。
半分とはいえ、ボウルの中は枝豆の中身でいっぱいになっている。これだけあれば十分だろう。
「じゃあ次の仕事を任せていいか? 職人さん」
「うぃ!」
口の端に枝豆の欠片をくっつけた職人ことおみは、楽しそうに手を挙げた。
「こうやって、くるくるって巻く」
「ほほー」
「で、端っこを折りたたむようにして……水でくっつける」
「おあー……むずかしそ」
「難しかったらクルクルするだけでいいよ」
不安そうにはしているが、おみは意外にも手先が器用だ。ウカさんの結婚祝いに香袋を縫ったこともある。コツを掴めば時分で出来るようになるだろう。
まずは、させてみる。
助けを求めてきたら手伝ってやる。
時間はかかるけど、その方がおみのためにもなるだろう。
「くるくるー」
「うん、上手」
「おりおり」
「そうそう」
「……つぎ、なにするんだっけ」
それに、こっちの方がおみとたくさん話が出来る。二人で料理をすることが増えたのも、会話の機会を増やすためだ。
危ないことはさせられないが、楽しそうに料理をするおみは見ていてこちらも楽しくなる。
「水をつけてくっつけるんだよ」
「むん」
小さな手でスティックを作るおみを見ていると、疲れも吹き飛んでいきそうだった。
「ごっはん、ごっはん!」
「はい、お待たせ。揚げたてだから火傷しないように」
「ふーふーするからへーき」
そう言って今まで何度口の中を火傷してきたと思っている。その度に大泣きしたのはどこの誰だ。
念の為、冷たい麦茶を用意しておいてやろう。
「おいしそー!」
「おみが作ってくれたからな」
「えへえへ」
大きなお皿に乗っているのは、餃子の皮で枝豆とチーズを巻いて揚げたもの。サクサクの食感はきっとおみも気に入るだろう。
味付けはシンプルに塩と胡椒だけ。ケチャップをつけても美味しそうだから、後で持ってこよう。
「りょーた、たべよー」
「うん」
それじゃあ、手を合わせて。
「いただきます!」
たくさんたくさん、召し上がれ。
枝豆は茹でるだけで十分美味しいおかずになる。ビールにも合うし、ほどよく塩気が効いていて熱中症対策にもなる。冷凍すれば保存も効くからたくさん収穫できても困らないと思っていたけれど。
「さすがに増えすぎたな……」
「あらー」
冷凍庫を圧迫している枝豆たちを見て、深くため息をついた。ファミリータイプの冷蔵庫は、そこまで冷凍室が大きくない。本家から送られてくる食材は冷凍しないといけないものはないが、野菜や魚、肉など冷凍保存することは多くある。
滅多に食べられない肉や魚は、大切に食べないと。
「とりあえず一袋は蒸し焼きにするとして、それでもパンパンだなぁ」
「ぱんぱかぱん?」
「そう。食べすぎたおみのお腹みたい」
「おお……たいへん」
よかった、今の危機的状況が正しく伝わってくれて。枝豆を使った料理は何かあっただろうか。ずんだ餅を作るには少し手間がかかるな。
それは明日のおやつにしよう。
今は夕飯のおかずにできそうなものがいい。
うーん。
「あ、そうだ」
「み?」
冷蔵庫に入っていた餃子の皮とチーズが目に入って、昔居酒屋で食べたことのあるメニューを思い出した。作り方は、多分、そこまで難しくないはず。
まあ、失敗は成功のもと、とも言うし。とりあえず作ってみよう。
「おみ、お手伝いしてくれる?」
「する! おみ、おてつだいする!」
「よし。じゃあ手を洗おうか」
「うぃ」
さっそく冷凍の枝豆を解凍すべく、電子レンジに放り込んだ。
「枝豆を中身をボウルに入れて欲しいんだ」
「おみにおまかせ」
「頼りになるなぁ」
黄色い踏み台に乗って、得意げに胸を張られた。解凍した枝豆はまだ熱いから、火傷しないように念を押す。
どうせつまみ食いするだろうから、少し多めに解凍しておいた。おみと暮らし始めて一年以上経つ。俺も、それなりにおみのことがわかってきたような気がする。
「むん、むん」
おみは不思議な掛け声と共に、枝豆の中身をボウルに出してくれている。よしよし、いい感じ。その間に俺は次の用意をしておこう。
プロセスチーズを四等分して、枝豆と同じくらいの大きさにする。枝豆とチーズが交互になるよう餃子の皮に乗せていき、最後の仕上げはおみに任せることにする。
「りょーたぁ……つかれた……」
「おお、もう半分以上終わったのか」
「そだよ、おみ、えだまめしょくにん」
どんな職人だ、それは。
半分とはいえ、ボウルの中は枝豆の中身でいっぱいになっている。これだけあれば十分だろう。
「じゃあ次の仕事を任せていいか? 職人さん」
「うぃ!」
口の端に枝豆の欠片をくっつけた職人ことおみは、楽しそうに手を挙げた。
「こうやって、くるくるって巻く」
「ほほー」
「で、端っこを折りたたむようにして……水でくっつける」
「おあー……むずかしそ」
「難しかったらクルクルするだけでいいよ」
不安そうにはしているが、おみは意外にも手先が器用だ。ウカさんの結婚祝いに香袋を縫ったこともある。コツを掴めば時分で出来るようになるだろう。
まずは、させてみる。
助けを求めてきたら手伝ってやる。
時間はかかるけど、その方がおみのためにもなるだろう。
「くるくるー」
「うん、上手」
「おりおり」
「そうそう」
「……つぎ、なにするんだっけ」
それに、こっちの方がおみとたくさん話が出来る。二人で料理をすることが増えたのも、会話の機会を増やすためだ。
危ないことはさせられないが、楽しそうに料理をするおみは見ていてこちらも楽しくなる。
「水をつけてくっつけるんだよ」
「むん」
小さな手でスティックを作るおみを見ていると、疲れも吹き飛んでいきそうだった。
「ごっはん、ごっはん!」
「はい、お待たせ。揚げたてだから火傷しないように」
「ふーふーするからへーき」
そう言って今まで何度口の中を火傷してきたと思っている。その度に大泣きしたのはどこの誰だ。
念の為、冷たい麦茶を用意しておいてやろう。
「おいしそー!」
「おみが作ってくれたからな」
「えへえへ」
大きなお皿に乗っているのは、餃子の皮で枝豆とチーズを巻いて揚げたもの。サクサクの食感はきっとおみも気に入るだろう。
味付けはシンプルに塩と胡椒だけ。ケチャップをつけても美味しそうだから、後で持ってこよう。
「りょーた、たべよー」
「うん」
それじゃあ、手を合わせて。
「いただきます!」
たくさんたくさん、召し上がれ。
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