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梅雨【6月長編】

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「みえぇぇぇりょーたぁ……ごめんなさいぃぃ……」
    地上に戻ってきたご主人は、とても立派な龍の姿でした。でも、聞こえてきたのはいつもと同じ声です。うーん、やっぱりこの方はご主人なのですね。
    泣き声も同じです。
「お、おみ……おみ、なのか?    本当に?」
「おみだょぉぉ」
「……おみ、だなぁ」
    ぴえぴえ泣く龍神様は、確かによく見るとつぶらなおめ目だったり、ふにゃふにゃしたお口だったり、ご主人そっくりです。どんなに姿が変わってもご主人はご主人なんですね。
    ずっと泣いているご主人を、りょうたさんは優しく撫でてあげました。
「よしよし。ありがとう、おみ」
「みええぇぇぇええ」
    しばらくの間、おふたりはずっとそうやって抱きしめあっていました。ぼくとちびちゃん、それからおじいちゃまは、そんなおふたりを見て笑いあっていました。

「それはそれとして、だ」
「ぐしゅっ、りょーた……ごめんなしゃい……」
    その後、ぽん!    と音を立てて元のお姿に戻ったご主人は、今りょーたさんの前で正座をしております。相も変わらずぐじゅぐじゅ泣いておりますが、先程よりは落ち着いたようです。
    よかったよかった!
「勝手に家を出ていくな、あんな書き置きを見て俺がどんな気持ちになったか……!」
「うう……おみ、ぱぱとままに、あいたくて……」
「それを説明するって昨日の夜に言っただろ!」
「ふにゅうぅごめんなしゃい……」
    おああ、こんなにも怒っているりょーたさん、初めて見ました……!    それほどまでにご主人のことが心配だったのですね。ご主人のしっぽもぺたんとなってしまいました。
    りょうたさんは、いつもご主人の味方です。どんなに泣いていても必ず抱きしめて、頭を撫でてあげています。だからこそ今も、ご主人のことが大切でしょうがないからこんなにも怒っているのでしょう。
「あの子はずっと、そうやって愛されてきたんだろうね。だから同じようにおみを愛することができる。うーん、我が子孫ながら良い両親を持ったねぇ」
    おじいちゃまもなんだか嬉しそうですね。
「そりゃあそうだよ。自分の孫、のようなものが、こんなにも立派におみを育ててくれているんだから」
    ふむふむ。おじいちゃま冥利に尽きる、というわけですね!
「はあ……怒ったら疲れた……」
「おみも、ないたらつかれた……」
    ぼくも心配してつかれました!
「少し休んだら、お前の両親について話をしようか」
「うぃ!」
    そうして、りょうたさんに抱っこされたご主人がぼくの方へとやってきます。ちびちゃんと一緒にぎゅーっとされて、ようやくぼくも安心しました。
    いつの間にか雨もやんでいます。
    空には綺麗な虹がかかっていました。
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