230 / 276
梅雨【6月長編】
16
しおりを挟む
「みえぇぇぇりょーたぁ……ごめんなさいぃぃ……」
地上に戻ってきたご主人は、とても立派な龍の姿でした。でも、聞こえてきたのはいつもと同じ声です。うーん、やっぱりこの方はご主人なのですね。
泣き声も同じです。
「お、おみ……おみ、なのか? 本当に?」
「おみだょぉぉ」
「……おみ、だなぁ」
ぴえぴえ泣く龍神様は、確かによく見るとつぶらなおめ目だったり、ふにゃふにゃしたお口だったり、ご主人そっくりです。どんなに姿が変わってもご主人はご主人なんですね。
ずっと泣いているご主人を、りょうたさんは優しく撫でてあげました。
「よしよし。ありがとう、おみ」
「みええぇぇぇええ」
しばらくの間、おふたりはずっとそうやって抱きしめあっていました。ぼくとちびちゃん、それからおじいちゃまは、そんなおふたりを見て笑いあっていました。
「それはそれとして、だ」
「ぐしゅっ、りょーた……ごめんなしゃい……」
その後、ぽん! と音を立てて元のお姿に戻ったご主人は、今りょーたさんの前で正座をしております。相も変わらずぐじゅぐじゅ泣いておりますが、先程よりは落ち着いたようです。
よかったよかった!
「勝手に家を出ていくな、あんな書き置きを見て俺がどんな気持ちになったか……!」
「うう……おみ、ぱぱとままに、あいたくて……」
「それを説明するって昨日の夜に言っただろ!」
「ふにゅうぅごめんなしゃい……」
おああ、こんなにも怒っているりょーたさん、初めて見ました……! それほどまでにご主人のことが心配だったのですね。ご主人のしっぽもぺたんとなってしまいました。
りょうたさんは、いつもご主人の味方です。どんなに泣いていても必ず抱きしめて、頭を撫でてあげています。だからこそ今も、ご主人のことが大切でしょうがないからこんなにも怒っているのでしょう。
「あの子はずっと、そうやって愛されてきたんだろうね。だから同じようにおみを愛することができる。うーん、我が子孫ながら良い両親を持ったねぇ」
おじいちゃまもなんだか嬉しそうですね。
「そりゃあそうだよ。自分の孫、のようなものが、こんなにも立派におみを育ててくれているんだから」
ふむふむ。おじいちゃま冥利に尽きる、というわけですね!
「はあ……怒ったら疲れた……」
「おみも、ないたらつかれた……」
ぼくも心配してつかれました!
「少し休んだら、お前の両親について話をしようか」
「うぃ!」
そうして、りょうたさんに抱っこされたご主人がぼくの方へとやってきます。ちびちゃんと一緒にぎゅーっとされて、ようやくぼくも安心しました。
いつの間にか雨もやんでいます。
空には綺麗な虹がかかっていました。
地上に戻ってきたご主人は、とても立派な龍の姿でした。でも、聞こえてきたのはいつもと同じ声です。うーん、やっぱりこの方はご主人なのですね。
泣き声も同じです。
「お、おみ……おみ、なのか? 本当に?」
「おみだょぉぉ」
「……おみ、だなぁ」
ぴえぴえ泣く龍神様は、確かによく見るとつぶらなおめ目だったり、ふにゃふにゃしたお口だったり、ご主人そっくりです。どんなに姿が変わってもご主人はご主人なんですね。
ずっと泣いているご主人を、りょうたさんは優しく撫でてあげました。
「よしよし。ありがとう、おみ」
「みええぇぇぇええ」
しばらくの間、おふたりはずっとそうやって抱きしめあっていました。ぼくとちびちゃん、それからおじいちゃまは、そんなおふたりを見て笑いあっていました。
「それはそれとして、だ」
「ぐしゅっ、りょーた……ごめんなしゃい……」
その後、ぽん! と音を立てて元のお姿に戻ったご主人は、今りょーたさんの前で正座をしております。相も変わらずぐじゅぐじゅ泣いておりますが、先程よりは落ち着いたようです。
よかったよかった!
「勝手に家を出ていくな、あんな書き置きを見て俺がどんな気持ちになったか……!」
「うう……おみ、ぱぱとままに、あいたくて……」
「それを説明するって昨日の夜に言っただろ!」
「ふにゅうぅごめんなしゃい……」
おああ、こんなにも怒っているりょーたさん、初めて見ました……! それほどまでにご主人のことが心配だったのですね。ご主人のしっぽもぺたんとなってしまいました。
りょうたさんは、いつもご主人の味方です。どんなに泣いていても必ず抱きしめて、頭を撫でてあげています。だからこそ今も、ご主人のことが大切でしょうがないからこんなにも怒っているのでしょう。
「あの子はずっと、そうやって愛されてきたんだろうね。だから同じようにおみを愛することができる。うーん、我が子孫ながら良い両親を持ったねぇ」
おじいちゃまもなんだか嬉しそうですね。
「そりゃあそうだよ。自分の孫、のようなものが、こんなにも立派におみを育ててくれているんだから」
ふむふむ。おじいちゃま冥利に尽きる、というわけですね!
「はあ……怒ったら疲れた……」
「おみも、ないたらつかれた……」
ぼくも心配してつかれました!
「少し休んだら、お前の両親について話をしようか」
「うぃ!」
そうして、りょうたさんに抱っこされたご主人がぼくの方へとやってきます。ちびちゃんと一緒にぎゅーっとされて、ようやくぼくも安心しました。
いつの間にか雨もやんでいます。
空には綺麗な虹がかかっていました。
14
お気に入りに追加
570
あなたにおすすめの小説
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【泣き虫龍神様】干天の慈雨
一花みえる
キャラ文芸
雨乞いのため生贄にされた柚希は、龍神様のいるという山奥へと向かう。そこで出会ったのは、「おみ」と名乗る不思議な子供だった。
泣き虫龍神様の番外編です!
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。