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梅雨【6月長編】

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    ぼくは、きっと、夢を見ているのでしょう。
    目の前には大きな銀色の龍が居ました。
    ぼくなんかよりもずっと大きな、そして立派な龍です。銀色のうろこにたてがみ、そして大きな角。ぼくがいた、おおいたの龍よりもはるかに大きな龍です。
     その龍がしゅるりと、りょうたさんを抱き上げました。このお山を包み込めるくらい大きい、ような気がするその銀色の龍はりょうたさんを抱きとめたままお空へと一気に登っていきます。
    ふと、龍のお目目がご主人と同じ色だということに気づき、もしかしたらあれはご主人なのかもしれないと思いました。でも、ぼくの知っているご主人はりょうたさんの腰くらいまでの大きさです。
    じゃあ、あれはいったい誰なんでしょう。
「いやぁ、私もおみと二十年近く一緒に居たけど。まさかこんな形で悲願が達成されるとはね」
    にじゅうねん?
    ひがん?
    もしかして、やっぱり、あの龍はご主人なのですか?
「そうだよ。あれこそまさに、おみの完全体だ。我々室生の人間が長い間待ち望んでいた姿」
    そうだったのですね!    わー!    ご主人、やりましたね!
「母なる大地、父なる天空。そして、強い願い。それらが全て揃った時におみは完全体になる。室生の人間だけでは出来なかったことだ」
    はは、ちち……それはつまり、ままとぱぱのことですか?    それじゃあご主人はもうずっとご両親の近くにいたということに。
    あ、そうか!    さかぐちさんが言っていたのは、つまりそういうことだったのですね!
「坂口も、もっと分かりやすく言ってやればいいものの……悪いねぇ、あいつは昔からこうなんだ。悪いやつじゃないんだけど」
    知ってますとも。お腹を空かせたご主人にいつもご飯をくださいます!    とても、いいかたです!
    あ、でもでも、たまに意地悪ですけど……。
「ふふ、それは今度ゆっくり聞かせてもらおうかな。ほら、おみたちが戻ってくるよ」
    なんと!    ご主人!    ぼくはここですよ!    ちびちゃんも待ってますよ!    おかえりなさいです!
    そう思ったことが聞こえたのか、銀色の龍はゆっくりとこちらに向かってきました。腕の中にはもちろんりょうたさんがいます。雨雲が静かに切り裂かれ、そこから細い光の帯が垂れてきました。
    不意に、龍神様、ご主人と目が合います。
    それはいつもぼくに向けられる、優しくて柔らかなものと同じでした。
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