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梅雨【6月長編】
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しおりを挟む「みえぇぇぇ……ぱぱぁ……ままぁ……りょーたぁ……」
ご主人の泣き声にあわせて、空からも大きな雨粒が落ちてきます。ぼくたちは木の下に居るので濡れませんが、きっとりょうたさんたちは突然の雨に驚いていることでしょう。
しかし、今のぼくにはそれよりも遥かに驚くことが起きていました。
「私が生きていた頃はこんな立派なものが無かったからねぇ。おみには寂しい思いをさせてしまったのかな」
目の前で、ぼくに話しかけるこのお方。
果たして何者なのでしょう。
悪い方、には思えませんが。
「ああ、心配しないで。私は涼太の祖父、に近い者だ。おみと暮らしていたこともある」
なんと! りょうたさんのおじいちゃまでしたか! だから雰囲気が似ているのですね!
しかし、ご主人は気づいておりません。ぼくにしか見えていないのでしょうか。
「君は本当に、おみのことを大切に思ってくれているんだね」
もちろんですとも! ご主人はぼくを見つけてくれて、名前もつけてくれました。おかげで、ぼくは毎日楽しくすごせています。
だから、お礼をしたいのです。
ご主人の笑顔がいつまでも続くように、と。
「おみは、本当に愛されているんだね。それに、君や涼太もおみを愛している。私はそれが知られて嬉しいよ」
でもでも、おじいちゃま。
ご主人のパパとママは、どこにいるのですか? ご主人はずっと探しているのです。ここに来たら、何か分かるかも! と言われて、頑張ってここまで来たのです。
何か知りませんか?
「知ってると言えば、知っているよ。涼太にも教えたからね」
ま! そうだったんですね! あれ? でも、りょうたさんは「いない」って言っていましたよ。
「居ない、は間違いかなぁ。実際、今も近くにいるんだ。おみの両親」
ええええ!? そうなんですか!?
いったいどこに!?
このしらたき、ご主人のぱぱとままにご挨拶しなければ!
「ふふ。目の前にいるよ。正確には下と、上」
した? うえ?
それって、どういうことですか?
「よく考えてごらん、小さな白龍さん」
うむむー? しかし、考えている間もご主人はみぇみぇ泣いております。早く笑顔になってもらいたいです! そのためならこのしらたき、ふわふわの頭を捻りに捻って答えを出しましょう!
ぼくたちの下には、地面しかありません。
上にはお空があるだけです。
うーん、どこにも誰も居ませんが……。
「おや。お迎えが来たようだよ、白龍さん」
え?
お迎え?
それはまさか。
「おみー! どこだ! おみー!」
「みえぇ……りょーた……?」
遠くから、土砂降りの雨の中、りょうたさんの声が聞こえてきました。
それは、いつかご主人が読んでいた絵本に出てくる優しい魔法使いさんみたいでした。
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