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梅雨【6月長編】
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「みぇっ……みえぇ……おだしゃ……」
「少しは落ち着いたかしら?」
「みえぇぇえ……」
おださんに出してもらった「ばうむくうへん」とミルクを食べながら、ご主人はぶんぶんと首を縦に振りました。頭からびっしょり濡れてしまったので、大きなバスタオルで包まれています。
ちなみにぼくは、ご主人と一緒に濡れてしまったのでただいま窓辺で干されています。ぷらーん。
「ビックリしたわぁ、あんなところに居たから」
「まいごになったの……」
「少し遠いから仕方ないわ。ほら、ゆっくり食べて」
「もぐ」
ちびちゃんは猫さん用のミルクを、ご主人はハチミツが入ったミルクを飲んでいます。いいなぁ、いいなぁ! ぼくものみたいです!
しかし、悲しいかなぼくはぬいぐるみ。ミルクを飲むことはできません。仕方ないので、窓辺でぷらぷら揺れながら、ご主人とおださんのお話を聞くことにします。
「おみちゃん一人でアタシの家まで来るのは大変でしょう? りょうちゃんは?」
「……おみ、たびにでてるの」
「旅?」
「うぃ」
そうなんです、ご主人はただいま自分探しの旅に出ているのです。朝からずっと歩いていて、気づいたらもうお昼です!
しかも道は分からなくなるし、お腹も空いてきたし、それでちょっと泣いてしまったのです。よしよしです。
「おだしゃ、ぱぱとまま、どんなひと?」
「あらやだ、なぁに? 急にどうしたの?」
「おみ、ぱぱとままにあいたいの」
「そうねぇ……」
ふう、とおださんはため息をついて、近くの本棚へと向かいます。そこにはたくさんの本が並べられていて、まるでりょうたさんのお店みたいです。
そこから一冊の本を取り出し、ご主人に見せてあげました。
「坂口からも聞いたと思うけど、アタシたち神様って呼ばれる存在は人間とは違う生まれ方をするの」
「む?」
「少し説明するわ。でもその前に、まずはしっかり食べてからね」
そう言って、ぱちんと片目を瞑ったおださんにご主人はふにゃりと笑っておりました。
「少しは落ち着いたかしら?」
「みえぇぇえ……」
おださんに出してもらった「ばうむくうへん」とミルクを食べながら、ご主人はぶんぶんと首を縦に振りました。頭からびっしょり濡れてしまったので、大きなバスタオルで包まれています。
ちなみにぼくは、ご主人と一緒に濡れてしまったのでただいま窓辺で干されています。ぷらーん。
「ビックリしたわぁ、あんなところに居たから」
「まいごになったの……」
「少し遠いから仕方ないわ。ほら、ゆっくり食べて」
「もぐ」
ちびちゃんは猫さん用のミルクを、ご主人はハチミツが入ったミルクを飲んでいます。いいなぁ、いいなぁ! ぼくものみたいです!
しかし、悲しいかなぼくはぬいぐるみ。ミルクを飲むことはできません。仕方ないので、窓辺でぷらぷら揺れながら、ご主人とおださんのお話を聞くことにします。
「おみちゃん一人でアタシの家まで来るのは大変でしょう? りょうちゃんは?」
「……おみ、たびにでてるの」
「旅?」
「うぃ」
そうなんです、ご主人はただいま自分探しの旅に出ているのです。朝からずっと歩いていて、気づいたらもうお昼です!
しかも道は分からなくなるし、お腹も空いてきたし、それでちょっと泣いてしまったのです。よしよしです。
「おだしゃ、ぱぱとまま、どんなひと?」
「あらやだ、なぁに? 急にどうしたの?」
「おみ、ぱぱとままにあいたいの」
「そうねぇ……」
ふう、とおださんはため息をついて、近くの本棚へと向かいます。そこにはたくさんの本が並べられていて、まるでりょうたさんのお店みたいです。
そこから一冊の本を取り出し、ご主人に見せてあげました。
「坂口からも聞いたと思うけど、アタシたち神様って呼ばれる存在は人間とは違う生まれ方をするの」
「む?」
「少し説明するわ。でもその前に、まずはしっかり食べてからね」
そう言って、ぱちんと片目を瞑ったおださんにご主人はふにゃりと笑っておりました。
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