このたび、小さな龍神様のお世話係になりました

梅雨【6月長編】

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    こんにちは、しらたきです。
    今日はご主人とおださんのお家に来ています。なんだか見慣れないちいさな子がいます。ふにゃふにゃしていて、かわいいですねぇ。
    あ、もちろんご主人もかわいいですよ！
「あぶ、ぶぶ」
「みぃー！    うみちゃ、しらたきたべちゃだめ！」
「あぶー」
    うわわわ、ちいさい子がぼくの足を食べています！    歯がないので口に入れているだけなので助かりました。
    でもよだれでベトベトです……。みぇ……。
「あ！    りょーたかえってきた！」
    遠くで扉の開く音がしてきました。ご主人のしっぽがピン！    と飛び上がります。ぼくも一緒にピン！    としたいです。
    さっきまで描いていた絵を持って、ご主人と一緒にりょうたさんをお出迎えしましょう。りょうたさん、ご主人の絵すっごくすてきですよ！    たくさんほめてあげてくださいね！
「りょーたー！」
「ふぐっ……た、ただいま」
    ご主人と一緒に、おもいきりりょうたさんに飛びつきます。どーん！
「みてみてー！    おみ、おえかきしたの！」
「へえ。何描いたんだ？」
「じゃじゃーん！」
    んっふふ。今回はすごいんですよ！
    なんたってご主人、文字を書いたのです！    おださんやうかさんに手伝ってもらいながら、全部自分で書いたんですよ！
    すごいです、ご主人！
「これ、もしかして」
「おみのままとぱぱ！」
「……っ」
    得意げに絵を見せたご主人でしたが、なぜかりょーたさんの表情は暗いままです。あれれ？    いつもならすぐに「おみはすごいな！」って抱き上げてくれるのに。
    今日はなんだか様子が変です。
「おみ、あのな」
「み？」
    りょうたさん？    どうしたんですか？    なんだかかお色がよくないです。それに声もふるえています。
    まるで、泣き出す前のご主人みたいに。
「おみ、お前の両親はな……いないんだ」
「みぇ……？」
    ぽとん、とご主人は持っていたがよーしを落としてしまいました。そこにはさっきまで楽しそうに描いていた色鮮やかな絵が描かれています。
    ままと、ぱぱだと言っていました。
    ご主人はいつかおふたりに会いたいと言っていました。でも、いないのですか？
「おみ……ままとぱぱ、あえないの？」
「帰ったらちゃんと話す」
「んにゅ……」
    それまで真っ青に晴れ渡っていたお空に真っ黒な雲が広がってきました。ぽつぽつ落ち始めた雨の音が、ぼくたちのあいだに響いていました。